米Zoom Video Communicationsは米国時間11月8日と9日、ハイブリッド形式で年次イベント「Zoomtopia」を開催する。それに先立ち、会期中発表する新製品やサービスをプレス向けに説明した。
後発のWeb会議市場で一気に普及 今はポートフォリオを拡大
コロナ禍で広く知れ渡ったZoomだが、創業は2011年と11年前にさかのぼる。Cisco WebExのエンジニアだったエリック・ユアン(Eric Yuan)氏が、もっとWeb会議を高品質に・簡単にと立ち上げたのが始まりだ。WebEx、Skypeとすでにソリューションがある市場に打って出たところ見事に成功。誰かがコミュニケーションに使うとその相手がそれを使って広がっていくというネットワークサービスの特徴が活かされたようだ。すでに米国企業にはかなり普及していたが、コロナ禍となりリモートワークはもちろん、学校、営業、診察など対面が難しくなったことで一気に世界的に広がった。
Zoomはその後、クラウドPBXサービス「Zoom Phone」、コンタクトセンターサービス「Zoom Contact Center」など、コミュニケーションを軸にサービスを拡充、6月には「Zoom One」として、チャット、電話、ミーティング、ホワイトボードなどの機能をまとめたサービスを発表した。
ZoomのHead of Product, Solutions, and Industry Marketingのジョセフ・チョン(Joseph Chong)氏は、2021単年で1500以上の機能を追加したという。「Zoomは単にミーティングの会社ではない。包括的なコミュニケーションプラットフォームを提供することで、コミュニケーションの将来を変える」と述べる。
「Zoomはコネクションを構築し、人々を結びつけることをやってきた。このミッションがさらに重要になっている」とチョン氏。「コネクテッドなコミュニケーション体験を単一のプラットフォームにする」と今後のフォーカスを示した。
メールとカレンダーの統合、バーチャルオフィスを発表
では、ZoomtopiaでZoomが発表する新製品とはどのようなものか?
まずは、「Zoom Mail and Calendar Clients」だ。名前の通り、電子メールとカレンダーサービスをZoomアプリに直接統合するもので、ツールバーよりメールやカレンダー機能にアクセスできる。Microsoft 365、Googleなどよく使われている電子メールサービスを利用できるほか、カスタムドメイン(Zoom Oneの顧客)もサポートする。
Zoom Platformを担当するProduct Marketing Manager, Zoom Platformのキャリー・ディック(Cari Dick)氏は、「アプリを行き来するのに週4時間を無駄にしているというデータもある」とし、直接統合することで、Zoom Meeting、Zoom Phone、Team Chatなどの機能を使いながらスケジュールを登録したりメールのやり取りができると述べた。「Microsoft 365の顧客からも、Zoomでメールを使いたいというニーズをもらっている」とディック氏。
あわせて、IT担当者がいないような小規模組織(50人以下)が、プライバシーに配慮した形でメールのやり取りやカレンダー機能を使えるようにするホスティングサービス「Zoom Mail and Calendar Services」も発表した。Zoom Mail Serviceユーザー間のエンドツーエンドでの暗号化、空いている時間を選択するアポイントブッキングなどの特徴を備える。
両製品ともに11月8日よりプライベートベータとして提供し、Zoomのツールバーに表示されるようになるとのことだ。当面は、言語は英語のみの予定。
次の機能が「Zoom Spots」だ。リモート/ハイブリッドの働き方が主流となる中で、社員やチームの偶然のコミュニケーションを可能にする「バーチャルなコワーキングスペース」という。スケジュールされているZoom Meetingに対し、Zoom Spotsではその空間にいる人同士がアドホックに会話をスタートできる。将来的には、Zoom Roomsとの統合も計画しているという。
オンラインと対面を比較した時、スケジュールや意図されていない偶発的なやり取りはオンラインが苦手とするところで、ビジネスチャットの「Slack」(米Salesforce)なども機能を強化している分野だ。
Zoom Spotsはベータとしての発表となり、2023年前半に一般提供(GA)を予定している。