「Dreamforce 2022」で発表、Genie+Flow+Einsteinで「リアルタイムのCustomer 360」を実現
Salesforce、データプラットフォーム「Genie」や「Net Zero Marketplace」を発表
2022年09月22日 07時00分更新
米Salesforceは2022年9月20日(米国時間)、同社初のCDP(Customer Data Platform)である「Salesforce Genie」、カーボンクレジット(温室効果ガス排出権)のマーケットプレイス「Net Zero Marketplace」を発表した。Genieは「HyperForce」をベースとするリアルタイムデータプラットフォームで、「リアルタイムのCustomer 360が実現する」とそのインパクトを強調する。
Salesforceは9月20日から3日間、本拠地のある米サンフランシスコで年次イベント「Dreamforce 2022」を開催中であり、Salesforce Genie、Net Zero Marketplaceはそれに合わせての発表となる。なお、Dreamforceといえばテック業界最大級のイベントとして知られている。コロナ前は17万人を超える来場者を誇ったが、3年ぶりのリアル開催となる今年は世界各国より4万人の来場を見込むという。
「Flow」や「Einstein」と共に“マジック”を起こす「Salesforce Genie」
Dreamforceでの1つ目の発表となるのが、最新の製品カテゴリとなる「Salesforce Genie」だ。Genie(アラジンのランプの精のような「魔人」を意味する)という製品名が示すとおり、リアルタイムのCRMを実現することで「魔法のような体験」を提供できると、同社のプレジデントで最高プロダクト責任者(CPO)を務めるデビッド・シュマイヤー氏は説明する。
GenieはSalesforceのプラットフォームである「Salesforce Hyperforce」上に構築されたリアルタイムのデータレイクで、Salesforceが提供する「Sales Cloud」などの各種SaaS、MuleSoft、Slack、Tableauといったシステムからデータを取り込める。またファーストパーティの広告プラットフォーム、米Snowflakeのデータクラウドなどとも連携でき、データの複製は必要ない。こうしたデータから各顧客のプロフィール(ペルソナ)を分析して、それに合わせたパーソナライズを可能にする。
さらに、Salesforceの自動化技術である「Flow」、AI技術の「Einstein」と組み合わせることで、リアルタイムに顧客のニーズに対応した対策やサービスを提供できるという。ちなみに現在、Flowは毎月1000億時間分の作業を自動化しており、Einsteinは毎日1750億回の予測を行なっている。
「Genieにより、リアルタイムのデータレイクとデータ活用のインフラが得られ、これを利用して顧客体験を自動化したり、インテリジェントにできる」(シュマイヤー氏)
Genieはオープンなデータプラットフォームであり、顧客はAmazon Web Servicesの「Amazon SageMaker」など外部のAIエンジンを持ち込むこともできる。またGenieのエコシステムとして、@Salesforce AppExchange」を通じて18社のパートナー企業がGenie統合アプリケーションを開発することも明らかにされた。
Genieの開発背景としてシュマイヤー氏は、「企業は平均すると976のアプリケーションを動かしており、これが顧客データやデジタル体験の分断を招いている」と説明。さらに「顧客の71%が企業とのやり取りでパーソナライズを求めている」という調査結果も引用し、「分断された顧客データではこれが実現できない」と強調した。
またGenieは、「Sales Cloud Genie」のようなかたちで、業界別ソリューションも含むSalesfoceのポートフォリオに統合される。「1990年代後半からCRM業界に関わってきたが、Genieにより業界で初めてリアルタイムCRMが実現する。これはブレークスルーだ」とシュマイヤー氏は胸を張った。
すでに米Fordが、自動車の購入/アクセサリの購入/オンボーディング/メンテナンスといった顧客のジャーニー管理にGenieを活用しているという。そのほかFormula 1、L'Orealなども、Genieを使ってリアルタイムのパーソナライズを進めていると紹介した。
非顧客も利用できるカーボンクレジットのマーケットプレイス
2つ目の発表となる「Net Zero Marketplace」は、カーボンクレジットを売買できるマーケットプレイスとなる。Salesforceは2022年に入り「サステナビリティ」をコアバリューと位置付けており、自社における取り組みと、顧客や産業界全体の取り組みの支援という両輪で戦略を進めている。
Net Zero Marketplaceは「信頼性と透明性」が特徴だという。Salesforceの「Commerce Cloud」を土台とし、環境に特化したスタートアップ(“ecopreneur”エコプレナー)より外部評価を受けたカーボンクレジットを購入できる。外部評価ではSylvera、Calyx Globalの2団体と提携しており、透明性のあるカーボンプライシングを実現するという。
Net Zero MarketplaceはSalesforceや「Net Zero Cloud」(Salesforceのサステナビリティクラウド)の顧客でなくても利用できる。まずは10月に米国で取引できるようになり、その段階で11カ国から90近くのプロジェクトを揃える。2023年以降、米国以外の国でも利用できるようにする計画だ。
Salesforceの最高インパクト責任者でコーポレートリレーションズ担当EVPのスザンヌ・ディビアンカ氏は、「気候変動は10人中7人の関心事で、関連した知識を得たいと思っている」と述べ、Trailbrazerにコンテンツを増やしていくとも述べた。
DreamforceはSalesforceの1-1-1モデルに基づき社会貢献の要素も持つが、今年は米国の5つの学区を支援する2500万ドルの教育手当などの取り組みも発表している。これまでイベントで配布していた“Swag”(お土産)は、環境への配慮から廃止したという。
なお今回のDreamforceイベントでは、Genie、Net Zero Marketplaceに加え、3つ目の発表としてSlackから「Slack Canvas」も発表している。詳細は別記事を参照されたい。