SORACOM Tech Days 2021キーノートは「壁の越え方」
ミクシィ村瀬氏とクレディセゾン小野氏が語る、これからのエンジニアと組織
2021年11月16日、ソラコムは技術カンファレンス「SORAOM Tech Days 2021」をオンラインで開催した。「Build The Future~エンジニアが創る未来~」を掲げたイベントの基調講演には、ミクシィ 取締役CTOの村瀬 龍馬氏、クレディセゾン 取締役 専務執行役員 CTO兼CIOの小野 和俊氏が登壇。新しい技術の付き合い方と開発組織の作り方について披露した。
新しいプロダクトにエンジニアはどう向き合うべきか?
基調講演でモデレーターとして登壇したソラコム 執行役員 プリンシパルソフトウェアエンジニア 片山暁雄氏は、2015年創業以来IoTのものづくりに寄与してきたソラコムについて簡単に紹介。事例として、既存の資産を含めた自動化や遠隔化を実現したAGCや日本瓦斯、デジタルデータを新たな価値に変えたフジテックやBeeHero、新しい顧客体験を生み出すクックパッドマートやソースネクスト「POCKETALK」などを紹介した。
こうした新しいプロダクトが生まれる背景としては、やはりデバイスや通信、クラウドが進化し、エンジニアと意思決定者でプロトタイプができるようになったことで、素早くトライ&エラーが試せるようになったことが挙げられる。一方で、ハードウェアやソフトウェア、ビジネスなど広範な理解が必要になるほか、新しいビジネスが軌道に載るまでに作り込みも重要。片山氏は「エンジニアに求められる資質も変化している」と指摘した。
では、新しいプロダクトに対して、エンジニアはどのように接していけばよいのか? こうした観点で登壇したのが、ミクシィ 取締役CTOの村瀬 龍馬氏になる。ミクシィは子供用のみまもりGPS「みてね」においてSORACOMを採用。高精度な位置情報とAIによる学習で、自動で出発と到着をお知らせするほか、子供の1日の歩数や移動履歴を追うことも可能になっている。
今回登壇したミクシィの村瀬氏は、SNSのはしりである「mixi」やモンスターストライクなどの開発を率いてきた。ミクシィは、各事業部ごとの開発チームと全社を統合する開発本部で構成されているが、2019年からは取締役CTOという立場で「経営に関する開発活動すべて」を統括しているという。
大切にしているのは「ユーザーサプライズファースト」
ミクシィはプロスポーツの運営や公営競技ビジネスなどを手がける「スポーツ」、生活に密着したサービスを提供する「ライフスタイル」、スマホゲームを中心とした「エンターテインメント」という大きな3つの事業を手がけている。事業の種類は多様だが、ミクシィの本懐は「コミュニケーション屋」という役割だという。
そんなミクシィが大切しているのは「ユーザーサプライズファースト」だ。「この世の中にはいいものであふれている。どんなに自分たちで素敵なアプリを作っても、ユーザーさんは話題にしてくれない状況」と村瀬氏は語る。そんな中、ミクシィは機能や信頼性はもちろんのこと、ユーザーの想像を裏切る驚きを意識している。「驚かせることで、人々は初めて製品やサービスに向き合ってくれる。しかも極力頻繁にアップデートして、大胆な変化をし続けなければならない」と村瀬氏は語る。
もちろん、エンジニアも変化し続けることが絶対条件。ただし、品質とスピードは両立すべきで、どちらかを犠牲にしてはいけないという。「品質を高めることで、むしろスピードは上がるもの」と村瀬氏は指摘。社内から絶大な信頼を得ているエンジニアは、中長期的な視野を持ち、品質か、スピードかの議論ではなく、技術力を高めて、粘って両者を担保していくのが大切だという。
もともとインターネットサービスやアプリを開発してきたミクシィだが、最近では前述したみまもりGPSやRomiといったロボットの開発を手がけている。いわばバーチャルとリアルの融合だ。同社が設計したコミュニケーションデザインでは、アプリやソフトウェア、場所、ハードウェアにそれぞれ役割が当てはめられており、ハードウェアは人の環境や状況を知るという役割を持つという。デザインがあるからこそ、ハードウェアをなぜ作るのか?という明確な理由が存在しているわけだ。