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Apple Design Awards史上初、日本のディベロッパーがファイナリストに選出

「らくがきを動かしたい」という情熱、「らくがきAR」なぜおもしろい

2021年06月26日 11時00分更新

文● 貝塚/ASCII

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コロナ禍がリリースのチャンスになった
らくがきARに込められた願いとは

 らくがきARは2020年の8月にiOS版がリリースされているが、このタイミングでのリリースとなったのには、コロナ禍も大きく影響しているそうだ。また、らくがきARの開発に不可欠だった、とある人物についての話も聞かせてもらえた。

Whatever inc. Producerの関 賢一氏

 「去年は新型コロナウイルス感染症によって、お子さんがおうちで過ごす時間が増えたと思います。『家にこもっているお子さんたちに楽しんでもらえるのではないか』という話が、今回のリリースを決めた、そもそものきっかけになっています。

 実は、ほかにも開発に大きくかかわっている人物がいます。合併前、宗さん(宗 佳広氏)と岡田さん(岡田 隆志氏)はココノヱという会社に勤めていて、ココノヱという会社の中で、らくがきコンテンツの開発に携わっていました。

 当時はもうひとり、山田さんというメンバーがいて、彼がメインの開発者としてらくがきコンテンツを作っていました。でも、彼は亡くなってしまったんです。らくがきARで使われている技術は、山田さんの遺産的なプログラムでもあります。一部、彼にしかわからないロジック構造になっている部分もありました。まるで『秘伝のレシピ』のように」

Whatever inc. Programmerの岡田 隆志氏

 「山田さんは、『らくがきを動かす』ことに、強い情熱を持っている人でした。お子さんが描いたらくがきを動かして見せたときの、お子さんの笑顔ですとか、そこに大事にしていた人物だと思います。山田さんが持っていた情熱を、そのままチームとして引き継いで、らくがきARのリリースが実現しました」(岡田氏)

シンプルなUIで、直感的に操作できる。小学校低学年ほどの歳の子どもでも、操作に迷うことなく使えそうだ

 らくがきARは、シンプルなUIも特徴的。使い方も非常に簡単で、操作部分もほとんどなく、らくがきにカメラを向けて、スキャンボタンを押すだけで、らくがきが命を吹き込んだように動き出す。スキャンの速度は素早く、らくがきにカメラを向けてから、わずか数秒後には、らくがきが動き始めている。

 宗氏はらくがきARの独自性について、「らくがきARは、手書きのらくがきを認識すると、イラストに骨格を自動的に組み込んでくれます。その骨格を入れるプログラムが核になっていて、どんならくがきでも、どこか生き物のような動き方をするのが、ユニークな部分です」と話す。

Whatever inc. Creative Detectorの宗 佳広氏

 「『誰でも遊べる』ことが、僕たちの基本のコンセプトでした。これだけデジタルが浸透していても、鉛筆で紙に書くときの摩擦の感触だったりは、大事なものだと思っていますし、ARというデジタルの世界で、アナログのらくがきを動かせるという、『アナログとデジタルの融合』は、ずっと意識している点です。

 山田さんは、アップル製品が発売されると、必ず調べて、毎回買っているほどのアップルフリークでした。なので、彼が中心になって開発したプログラムを基にしたアプリが、Apple Design Awardsのファイナリストにノミネートしてもらえたことを知ったら、どれほど喜んだだろうといつも思っているんです。本当に彼にも伝えたかったですね」(宗氏)

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