ESET/マルウェア情報局
いじめの温床になりやすい「学校裏サイト」の変遷とその対処とは
本記事はキヤノンマーケティングジャパンが提供する「マルウェア情報局」に掲載された「学校裏サイトとは? 進化する姿とその発見方法」を再編集したものです。
学校裏サイトとは?
2020年度は新型コロナウイルスの影響で入学について大きな混乱が生じたものの、子どもに学校生活をより楽しく過ごしてもらうためにも、情報収集に余念がない親も少なくないだろう。そのなかで、「学校裏サイト」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。10年以上前、某テレビドラマで題材にされたこともあったが、学校裏サイトとは特定の学校や学級に関する非公式のウェブサイトや匿名掲示板のことだ。そして、令和になった今でも無数に残存している。その多くが在校生や卒業生らによって作成、運営されている。参加メンバーは匿名で投稿ができるという仕組みだ。
学校裏サイトは一般のネット検索では表示されないように対策がとられ、なおかつパスワード認証で部外者が閲覧できないように工夫されたものもある。その中では学校やクラスに関する一般的な話題、たとえば授業の難易度やテスト勉強、行事のことなどについてやり取りがなされる。一方で、クラスメイトの悪口や誹謗中傷、悪質な場合は住所や実名、写真といった個人情報の「晒し」が行なわれることもある。
東京都が公表している調査資料によると、平成30年度には調査対象である2145校のうち、494校で学校裏サイトが発見された。ただし、この調査はインターネットのウェブサイトに限定されておりLINEなどのSNSは含まれていない。最近はSNSのグループ機能を使ってコミュニティーを作成することも増えており、これらを含めると実際には相当数の学校裏サイトがあると推測される。
東京都教育委員会 学校非公式サイト等の監視
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/ict/underground_website.html
学校裏サイトの問題点
普段の授業や趣味の話などを友達同士で楽しく語らう分には、特に心配はない。しかし、学校裏サイトはその秘匿性ゆえに、誹謗中傷がエスカレートしやすい傾向がある。いじめはもちろん、中には取り返しのつかない事件に発展する危険性もある。実際、2007年に起こった私立高校生の自殺事件は、学校裏サイトによる悪質ないじめが引き金になったとされている。このケースでは学校裏サイト上で生徒の誹謗中傷だけでなく、写真や個人情報なども晒されていたという。
スマホなどのモバイル端末は子どもたちの間にも広く普及しているため、外出先や自室など親や教師の目の届かないところで容易に書き込みや閲覧ができてしまう。そうした時代背景も、学校裏サイトの問題を助長しているものと思われる。
学校裏サイトで標的になるのは子どもだけとは限らない。保護者や教師が書き込みのターゲットとされてしまうこともある。学校裏サイトで保護者に関する根も葉もないうわさを広められ、転校を余儀なくされるケースもあるとされる。
さらに、誹謗中傷が過熱することで、電話番号やメールアドレス、あるいは写真などの個人情報が学校裏サイトだけでなく外部のインターネット上に晒されてしまう危険性もある。不特定多数がアクセスできるインターネット上のサイトに個人情報が拡散してしまうと、新たな二次犯罪を引き起こす可能性も生じることも考慮に入れておきたい。
時代とともに姿を変える学校裏サイト
インターネットの登場と普及で学校裏サイトは生まれ、その姿は変遷し続けている。2000年代初頭のフィーチャーフォン(ガラケー)が普及し始めた頃にはすでにその存在が確認されていたという。2008年頃にはメディアでも取り上げられるようになり、文科省の当時の資料によると全国で3万8260件もの学校裏サイトが確認されるほどとなった。
そして、ネットいじめの温床として社会問題にもなり、各都道府県や市区町村でインターネットの巡回が進められるようになった。一定の抑止効果はあったと思われるが、その後のスマホやSNSの急速な普及と進化に伴い、学校裏サイトも大きく変化してきている。
LINEが普及した2014年頃には、いわゆる「LINEいじめ」をきっかけとした中高生の自殺も相次いだ。LINEいじめは主にそのグループ機能を使って行なわれる。特定の生徒を除外したグループを作成し、グループから退会させる「LINEはずし」と呼ばれるものだ。LINEなどのSNSアプリはウェブサイトよりもさらに秘匿性が高く、親や教師の目に触れにくい。そのため、いじめがエスカレートしやすい傾向にある。
また、Twitterなどの鍵アカウント(フォロワーにしか投稿内容が見えないアカウント)を、学校裏サイトとして悪用しているケースもある。SNSは簡単にアカウントを作成することができるため、たとえアカウント凍結に追い込まれたとしても、別アカウントの作成が後をたたない。
子どもは流行に敏感だ。新しいSNSやそれに代わるツールが公開されれば、次々と乗り換えていく。そのため、学校裏サイトと同様の仕組みが今後もその場所や形態を変え続けていくことは容易に想像できる。親としては、子どもがどのようなアプリやツールを利用しているのか、その実態を把握しておくことが重要だ。
学校裏サイトの発見方法
学校裏サイトはGoogleなどの一般的なインターネット検索では引っかからないように細工されている。しかし、調べる方法は存在する。
・学校裏サイト リンク集
全国ウェブカウンセリング協議会が運営する学校裏サイトのリンク集。閲覧者を教育関係者、保護者・PTA関係者に限定しており、インターネット上から申請することで学校裏サイトの情報を閲覧することができる。
・学校裏サイトチェッカー
株式会社サイブリッジが運営する学校裏サイトの情報ポータル。有志による情報提供によって学校裏サイトの情報を提供している。情報掲載後に閉鎖する学校裏サイトも多いが、少なくとも通う学校における学校裏サイトの有無の判断材料にはなるだろう。
・TwitterなどのSNS検索
Twitterを学校裏サイトとして悪用、あるいは誘導の入り口としているケースも少なくない。ハッシュタグ検索などをすると該当の学校に関するアカウントの発見につながることもある。検索時には正式名称だけでなく、略称などでも検索すること。
親が学校裏サイトの存在を知っておくことは重要だ。普段の暮らしの中で、子どもの僅かな異変から学校裏サイトとの関係性を類推することもできる。
学校裏サイトを発見した場合の対応
学校裏サイトの存在自体を悪質と決めつけるのは早計だ。授業や勉強に関する情報交換など、健全な活用がされている限りは害をもたらすわけではないからだ。しかし、ひとたび誹謗中傷が書き込まれるとその性質が一変する危険性もある。万が一、子どもの通学先の学校裏サイトで不適切な書き込みを発見した場合、親はどのように対処すべきだろうか。
掲示板の運用者に対して削除申請を行なうことも可能だが、運営者のほとんどが子どもであることを考えるとおすすめはできない。削除申請をしたとしても無視されるか、申請したことで逆上し、ターゲットにされてしまうリスクもあるからだ。そのようなときは、学校をはじめとした公的な相談窓口が用意されているので参考にしてほしい。
・警察庁インターネット安全・安心相談
警視庁が運営するポータルサイト。インターネットに関する各種トラブルについて、対処法などを掲載している。ページ下部にある「相談窓口」からカテゴリごとの対処法が解説されている。
・法務省インターネット人権相談受付窓口
法務局のインターネットに関連する人権相談窓口。電話相談やメールでの相談を受け付けている。子どもに関することは「子どもの事件110番」という窓口があるので、参考にしてほしい。
学校裏サイトにどう向き合うべきか
学校裏サイトはその匿名性や秘匿性のために、いじめの温床になりやすい。放置しておくと大きな事件に発展する恐れがある。また、忘れてはならないのが自分の子どもが被害者でなく、加害者になってしまう可能性もあるということだ。では、学校裏サイトの問題について親はどのように向き合えばよいだろうか。
・子どもに学校裏サイトについての正しい知識を伝える
まずは、子どもに学校裏サイトに関する正しい知識を伝えよう。学校裏サイトの存在、そしてその中で誹謗中傷などがエスカレートすることで、犯罪や刑事事件に発展するリスクがあるということを理解させよう。インターネット上で個人情報を公開、拡散することのリスクも話しておくべきだろう。被害者になるだけでなく、自分が加害者になる可能性も忘れずに伝えておきたい。
そして、学校裏サイトの存在を知ったときには、隠さずに教えてほしいと伝えよう。親が学校裏サイトの存在を知っているのといないのとでは、対処のスピードに大きな差が生まれるからだ。
・スマホ利用時のルールを設ける
スマホやSNSの利用はますます広がっている。利用そのものを全面的に禁止するのは難しいだろう。正しく使いこなせば、友達同士や親子のコミュニケーションにも有益だ。ただし、利用にあたっては家庭内で一定のルールを設けよう。利用時間帯や、利用するアプリケーションなどを話し合い、自由勝手に利用することができないようにしておこう。常に親の目があるということ認識させるだけでも抑止効果は期待できる。
・ペアレンタルコントロールを活用する
ペアレンタルコントロールとは、スマホやタブレットなど子どもの情報機器の利用を親が適切に管理する取り組みやツールを指す。親と子ども、それぞれのスマホに導入しておくことで、不適切なウェブサイトのブロックや利用時間の制限、利用状況の管理などが可能だ。子どものITリテラシーは年々高まっているが、正しい知識をバランスよく兼ね備えているとは限らない。学校教育や家庭を通してその使い方を学ばせる必要がある。
学校裏サイトと向き合うにあたって大切なことは、正しい知識を持つこと、ルールを設けること、そして状況を把握し見守ることだ。ESETの「ESET Parental Control for Android」は簡単な設定で子どものスマホ利用を管理できる。このようなツールの利用も検討し、子どものITツール利用を温かく見守ってほしい。