内田洋行は11月13日から15日まで、オフィス新製品の展示会「UCHIDA FAIR 2020」を都内の本社ショールームで開催した。展示会に先立ち、大久保昇社長が記者会見を実施、新しい働き方についての考え方を説明し、同社のオフィス製品のデザイン性や、オフィス向けITソリューションの方向性を示した。
働く場所を自由に選び、仕事の効率を上げる
大久保社長は、内田洋行が1989年に『知的生産性研究所』を設立して以来、オフィスの生産性向上に一貫して取り組んできた歴史を説明した。2010年からオフィスコンサルティング事業を本格化させ、2012年には「アクティブ・コモンズ」というコンセプトをいち早く提唱した。これはいまで言う働き方改革に近い考え方で、「働く場所を各個人が自由に選ぶ」という意味だという。
実際、今回の展示会では、オフィス内での自由な働き方をスムーズに行なえるよう工夫が施されたオフィス用品が多数ディスプレイされていた。
たとえば、いま流行のオフィス内のカフェ風共有スペース。そこにはソファやローテーブルが設置されているが、その中でも時には集中して作業したい場合もある。そうしたソロワークのニーズに応えるため、周囲を内装と同素材の高い「ついたて」で囲んだ個人用ブースを提案。着座センサーが付いていて、ブース上端に赤と緑に変化するランプを設置し、遠目にも使用中かどうかが一目でわかるようになっている。
また、1人でなく2人で込み入ったことを話し合うための「籠るスペース」の展示も注目を集めていた。このブースでは、ただ囲いで覆うだけでなく、賑やかな共有スペースでも集中して対面者と会話ができるように、音を整えるという意味の「整音技術」が施され、密談に適した環境を作ることができる。
会議の準備にかかる無駄な時間をITで解消
一方、同社が力を入れるのがITによるオフィスの生産性向上だ。とくに今回の展示では、プレゼン機器との接続を改善したり、会議中のメンバーのコラボレーションを支援するシステムと、会議室の運用支援に力を入れていた。
同社では、学校などの教育現場や会議室でのプレゼンでもっとも重要なのは「すぐに投影できること」という認識から、自社製品のワイヤレスプレゼンテーション機器「wivia5」の機能強化を進めている。これは据え置きの大型ディスプレイに接続するコントローラーで、簡単につながることを重視した。また、BARCO社のClickShareシリーズのラインナップ強化も図られている。
さらに、タブレット端末を使ってより直感的に会議機器の操作を行えるクラウドサービスの「MeeTap」も開発した。これは、会議室に常設したタブレットが室内のディスプレイの設定や無線、有線の接続状況をつねに監視しており、タブレットの画面に大きく表示されたいくつかのボタンを押すだけで、プレゼンやテレビ会議の準備が完了するサービスだ。
会議室に備え付けの機器を使う際、前の会議で誰かがモニターの裏のケーブルを抜いてしまい、接続できなくなる場合があるが、このサービスを入れていれば、タブレットに表示されるアイコンが「ケーブル抜け」を知らせてくれるので、原因がすぐにわかる。また「大阪支社とテレビ会議する」といった使用目的のアイコンを登録することができ、それをタップするだけで必要な準備が整う簡単さを実現した。
ただし、こうした機能を実現するためには、ディスプレイや電話会議システムなど会議室の機器は、すべて個別に社内のネットワークに接続されている必要がある。既存の機器でネットワークにつながらない場合は対応できない。いまやオフィス機器もIoTの時代に突入しているのだと実感した。
会議室予約システムも進化している。会議室が足りない理由の1つに「とりあえず予約した人が、会議がなくなっても部屋を押さえたまま忘れている」ことだという。すでに380社1万室以上の導入実績があるという同社の会議室予約運用システム「SMART ROOMS」では、予約時刻に誰も入室しなければ予約解除する「自動キャンセル機能」を備えている。会議終了前にアラームが鳴るなど、ITによって問答無用で運用することでダラダラした会議をなくすことを目指す。新機能では、会議室の広さと利用人数の状況などを分析し、働き方に合ったオフィス設計にも役立てようとしている。
内田洋行では、グループ全体の売り上げの6割をIT関連が占めるほどになっている。だが「オフィス設計は、素材、形状、空間デザインに知恵を絞り、そこにITを溶け込むように設計するのがポリシーだ」(大久保社長)としている。今回の展示でも、見た目だけでなく、テクノロジーをできるだけシンプルに扱える工夫が各所に感じられた。