2019年10月3日、4日(現地時間)の2日間、クラウドコンテンツマネジメントプラットフォームベンダーの米Boxは、米サンフランシスコのMoscone Center Westにおいて、年次イベント「BoxWorks 2019」を開催した。テーマは、「SIMPLIFY HOW YOU WORK」。全世界から約5000人が参加し、日本からはパートナー企業やユーザー企業など、約120人が参加した。
BoxとIBMのパートナーシップで働き方改革に寄与できる
会期中には、基調講演のほか、「デジタルトランスフォーメーション」、「デジタルビジネス」、「インダストリー」、「セキュリティ&データプロテクション」など、7つのテーマでセッションが行なわれ、最新製品を紹介するとともに、Boxのクラウドコンテンツ管理ソリューションが、どうやって企業の競争力を高めることができるのか、ビジネスプロセスの変革を支援するために、Boxがどんな役割を果たすのかといったことが示された。
開催初日の午前9時から行なわれた米Boxのアーロン・レヴィ(Aaron Levie)会長兼CEOの基調講演では、米IBMのジニー・ロメッティ(Ginni Rometty)会長、社長兼CEOを迎え、両者による対談からスタートした。
レヴィ氏は、「5年前から(ロメッティ氏を)招待していたが、やっと参加してもらえた。私は45分前に起きたばかりだが、東海岸で仕事をしているジニーはもっと早くから起きているようで元気いっぱいだ。IBMはビジネスモデルの変革を実現し、カスタマーとテクノロジーに対する投資を行いながら、業績を改善してきた」などと紹介した。
ロメッティ氏はまず「スケジュールが合わず(これまで招待に応じられず)申し訳なかった」と前置き。そのうえで、あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)が進む現状を次のように語った。
「いまはデータこそが競争優位性につながる。2年前までは新興企業が市場参入してきて“破壊”が起こることが恐れられていたが、現在では同じ業界の競合他社がデータを活用することが脅威になってきている。ここではまず、顧客を中心に捉えた『外から中に向けた』変革が生じている。これがデジタル変革の第1章である。その次には、データをさまざまな形で活用することで、会社を内側から変え、社内文化も変えなくてはならない時期に入ってくる。これがデジタル変革の第2章だ」(ロメッティ氏)
またIBM自身のビジネスモデル変革については「ポートフォリオ変革が鍵だった」と述べた。ミッションクリティカル領域にフォーカスし、過去(レガシー)と未来をハイブリッドクラウドの仕組みで橋渡ししつつ、データドリブンおよびAIドリブンな戦略で「コグニティブエンタープライズ」の実現を支援しているという。
Boxについてロメッティ氏は、会社を変えるためには「働き方の変革」が必要であり、そのためにBoxが大きな役割を果たしているとコメント。一方でレヴィ氏はIBMとのパートナーシップについて、「モダンなオフィス環境におけるセキュリティ、データガバナンス、コンプライアンスを実現するために、BoxとIBMとのパートナーシップは重要だ」と強調した。
「この2社のパートナーシップによって、共同開発や製品イノベーションが起こっている。このパートナーシップはエキサイティングであり、多くの人たちの働き方改革を支援できる」(レヴィ氏)
またロメッティ氏は、IBMがレッドハットの買収を待つことなく20年前に、Linuxに対して10億ドル規模の投資をしたことに触れ、IBMは「オープンソースを活用した大規模プロジェクトにおいては、1、2位を争うコントリビュータである」と述べた。プロダクトやテクノロジーに関する信頼性と透明性も重視しており、たとえばIBMがAIなどに活用するデータはもともとの所有者に帰属すること、常に判断理由を説明可能なAI技術を提供していることなどを紹介した。
コラボレーション、コンテンツ管理、セキュリティが変わる
レヴィ氏は、Boxのミッションについて次のように説明した。
「Boxのミッションは、多くの人が共同で仕事をしていくための環境を提供することにある。どんなデバイスを利用しても、どこででも利用でき、セキュリティが担保された環境で、データが漏洩しない状況を提供することにある。コンテンツをどのように保護、管理、コラボレーションするかが、仕事の未来を形成することになる」(レヴィ氏)
またレヴィ氏は、Boxのユーザー企業数が全世界で9万5000社以上に達しており、特にFortune 500においては69%の企業が利用している、とその成長ぶりをアピールする。
「Boxでは『クラウドコンテントマネジメント』というコンセプトを打ち出しており、さまざまな業界にまたがる形で、働き方改革やビジネス変革、クラウド化の促進といった潮流を加速させている。働き方をシンプルに、合理的にし、ビジネスのスピードを上げたい、生産性を高めたいといったニーズにも対応できる。大手企業からスタートアップまで、また公共、金融、小売、製造などあらゆる業界で利用されている」(レヴィ氏)
Boxが実現する新しいコラボレーションのかたちについては、次のように説明した。
「(業務プロセスにおいては)多数のアプリケーションが利用されており、社員にとってはアプリケーションの選択肢があること、シームレスな連携利用ができることが必要である。また、社内外の関係者がコラボレーションしながら利用することを前提として、それでもセキュリティがしっかり担保されたものでなければビジネスが成り立たない。Boxは他社製品とはまったく異なるエクスペリエンスを実現することができ、他の業務システムやビジネスプロセスとも連携し、社外の関係者ともコラボレーションが可能になる。その結果、ビジネスのレベルを高め、ビジネスの課題を解決できる」(レヴィ氏)