7月28日、経費精算や出張管理をクラウドサービスで提供するコンカーは領収書の電子化普及に向けた戦略の発表会を開催した。登壇したコンカー代表取締役社長の三村真宗氏は、経費精算における領収書の電子化を「働き方改革で真っ先に着手すべきテーマ」と位置づけ、普及に向けたコンカーの戦略を披露した。
メリットだらけの領収書の電子化はなぜ普及しなかったのか?
壇上に立った三村氏が最初に切り出したのは、紙ベースの経費精算の負荷だ。現在、多くの企業は紙のレシートをのり付けして経費精算書類に添付し、それを回覧ルートに載せ、上長や経理の承認を経た後、振り込み処理が行なわれる。領収書も7年間の保存義務があり、支払いも現金で非効率きわまりない。多くのビジネスマンが「もっとも面倒くさい業務」と感じるこの経費精算を電子化することは、「働き方改革でまず最初に着手すべきテーマ」と三村氏は語る。
領収書の電子化は、一般社員の負担を軽減するだけではなく、ワークフローに関わる上司や経理をはじめとしたバックオフィス業務の負担も減らすことができる。電子化により、保管や輸送のコストも軽減され、税務当局による監査の際に原本を探す手間もなくなる。もちろん、紙の節約にもつながるので、エコロジーという観点でもメリットは大きい。
もともと領収書の電子化は10年前から推進されていたが、電子帳簿保存法での規制が厳しかったこともあり、普及にはほど遠い状態だった。実際、国税庁の税務統計によると、2005年から10年での累計申請件数は140件に過ぎなかったという。しかし、2015年に3万円という上限が撤廃され、昨年にはスマートフォンでの撮影も一部OKとなった。加速度的に規制緩和が進んだことで、増加件数も1年で322件と大幅に増えたという。
制度面での課題が解消されつつある一方、システム面では自社開発からクラウドへの移行が必要になる。前述した日本CFO協会の調査でも、領収書電子化を実現するシステムとしては、74%でクラウドサービスを利用する予定で、オンプレミスのパッケージや自社開発は陰を潜めるようになったという。電子化に当たっては、スキャナや複合機などのほか、スマートフォンとの連携が必要になるほか、水増し請求などを防ぐための画像管理やタイムスタンプの機能も追加しなければならず、自社開発は非現実的といえる。
経費精算システムの自社開発はもはや古い
これに対してコンカーのクラウド型経費精算サービス「Concur Expense」では、領収書電子化で必要な申請から運用までをワンストップで実現するという。具体的には、税務署の申請や業務設計、経費精算、電子化デバイスの対応、運用のアウトソーシングまで幅広くカバーする。
まず税務署への申請や業務設計に関しては、Concur Expense向けの電子帳簿保存申請パッケージサービスやコンサルティングをサードパーティから提供。グローウィンパートナーズとSKJ総合税理士事務所の2社と提携し、導入や運用までをサポートする。
また、Concur Expenseでは今回新たにタイムスタンプ機能が追加されたことで、経費精算の基本機能やワークフローはもちろん、電子化に必要な機能も包括的に提供する。Concur Expenseではさまざまなデバイスからの領収書画像をAPI経由で受け入れ、タイムスタンプを刻印して格納できるという。
電子化デバイスも多彩。富士ゼロックスやリコーの複合機、PFUのスキャナーもConcur対応を済ませており、複合機やスキャナーでスキャンするだけでCoucurへ明細を自動登録できるため、経費入力を自動化できる。スマホからの登録に関しては、スマホアプリのConcur Mobileを使った手入力での画像登録のほか、BPOサービス「Klavis」を使えば、登録作業をアウトソーシングできる。さらにエムティアイの「FEEEDER」ではAIによる自動分析、OCR機能により、登録作業を自動化することが可能だ。
登録された領収書を監査するサービスも拡充。今回新たに領収書の画像と入力内容の整合性を確認する「領収書監査サービス」と入力内容、領収書画像と経費ポリシーとの整合性を確認する「規定監査サービス」の2種類を日本市場でも投入。経理部門の作業負荷を大きく軽減できるという。
1ヶ月で約1000枚近い領収書が飛び交うコンカージャパンで、120名の全従業員にiPhoneを貸与し、領収書の電子化を実施したところ、申請者はConcur Mobileで写真を撮るだけで申請は完了。電子画像が原本になったことで、上司が外出先で承認処理を行なえるようになり、経理担当もPC画像だけで経理処理が可能になった。もちろん、紙の領収書はスキャン保存され、定期検査を経た後は廃棄という流れになる。
領収書の自署や3日以内の電子化はまだまだ阻害要因
ここまで聞くと、メリットだらけの領収書の電子化。実際、日本CFO協会が実施した調査では、半数以上の企業に導入意向があり、大企業になればなるほどその意向は高くなると言う。そして、電子化に利用できるデバイスも従来のようなスキャナーやコピー機・複合機のみならず、スマートフォンが台頭してくることになる。そのため、ワークスタイルにあわせたさまざまなデバイスを利用できることが重要になるという。
一方で、87%の企業が制度要件を厳しいと感じており、特に領収書の自署や3日以内の電子化が導入の阻害要因になっている現状もあきらかになっている。また、利用実態の把握や改ざん防止に役立つ法人カードも、利用明細が領収書の代用として認められば、経費入力の省力化にも大きく寄与するとみられている。
今後は、領収書と同じく電子化したい書類として要望が高いのは、やはり請求書。日本CFO協会での要望でも9割に上っており、他と比べて圧倒的に高いという。これに対しては2018年5月にConcur Invoiceの電帳法対応バージョンをリリースする予定となっている。