頑張ろうとするのはクールじゃない
―― UKにオタクシーンはないんですか?
イアン ありませんね。むしろ「シブヤ系」のように、古い音楽からのカット・アンド・ペーストで、インスタントなエレクトロニカを作りだす方が好まれました。「ベッドルームエレクトロニカ」というものです。日本でも同じじゃないですか。気が遠くなるほどの時間を、Photoshopの前で使っちゃう人たちがいますよね。ただジョークを作り出すためだけに。
―― じゃあ、ネットカルチャーに関してはどうですか?
イアン 日本では「ニコニコ動画」が中核になっていますが、やはり「YouTube、Twitter、Facebook」の3つが重要です。曲をリリースする、リリースを告知する、コミュニティを作るということで。イギリスのミュージシャンはMySpaceやLast.fmに加えて、「Spotify」もよく使っています。
―― 無料のストリーミングサービスですね。日本からは使えないので羨ましいんですが。
イアン 欲しいものだけ買えますよね。メジャーレーベルもすでに使いはじめ、今や700万人のユーザーが使っています。SpotifyはiTunesとも連携ができますし。
―― 日本から出てきているネット動画はどう?
イアン そうですね……ちょっと前だと「ウッーウッーウマウマ」が衝撃でした。もうとにかく面白くて友だちにメールで送りまくっていたときがあったんですが、「もうそのふざけたビデオを送ってくるな!」と友だちから怒られました。「らき☆すた」のキャラクターがスイミングコスチューム(スクール水着)を着てダンスをしているのを見ていたときは、「おいよせ、それはチャイルドポルノだ!」と止められました。
―― わはははは。
イアン 最近では相対性理論といったアーティストも出てきていますが、オタクにはやはり「好きだけど、好きでいるべきではない」という感情を持ちます。音楽的バックグラウンドはやっぱりアートパンクスなんです。
―― そこは共感します。
イアン これはドイツ人の友人が言っていたことなんですが、日本ではミュージシャンもリスナーも「頑張って!」と言われることを望んでいます。ブリティッシュロックでそんなことは絶対にやりません。頑張ろうとするのはクールではないからです。ブリティッシュロックは「お前たちのことなど知ったことか。オレがロックだ」。それは、とても日本ではできませんよね。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
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