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業界人の《ことば》から第253回

今後14年以内にエネルギーと食料は無料になる

2017年07月11日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「今後14年以内にエネルギーは無償になり、食料も無料になる。デジタルの活用で医療も教育も無料になる」(カーネギーメロン大学のヴィヴェック・ワファ教授)

 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)の研究センターであるコグニティブ・イノベーションセンターが、「未来の働き方」をテーマに、ラウンドテーブルを開催した。

 ラウンドテーブルでは、シンギュラリティー研究の第一人者であるカーネギーメロン大学工学系学科ディスティングィッシュフェローのヴィヴェック・ワファ教授と、経済産業省経済産業政策局参事官の伊藤禎則氏を中心に、NIIの喜連川優所長、ヤマトホールディングスの木川眞会長、三井住友フィナンシャルグループの谷崎勝教取締役専務執行役員など20人が参加した。

 カーネギーメロン大学のヴィヴェック・ワファ教授は、ワシントンポストのシンジケーションコラムニストの1人であり、技術の進化と、それにともなって起こりうるリスクを警告した「The Driver in the Driverless Car」の著者としても知られる。

 また、TIME誌の「Tech 40」の1人にも選出されており、現在はシリコンバレーを拠点として、ロボティクスや人工知能、コンピューティングなどの分野において活動。米国政府への助言もしている。

ワファ教授の著書であるThe Driver in the Driverless Car

技術の進化はマッドマックスの道を歩んでいる

 「The Driver in the Driverless Car」のなかでワファ教授は、技術の進化は、スタートレックか、マッドマックスかの道を選択することになると比喩。今回の来日でも、「いまは、マッドマックスの道を歩んでいる」とした。

 今回のラウンドテーブルはテーマを「未来の働き方」としたように、AIが企業にどんな影響を及ぼすのかが焦点となった。

 ワファ教授は「AIの進化によってロボットが秘書になったり、友人になったり、コーチになったり、医者にもなってくれる」とし、「IBMはWatsonを使うことで、これから5年後にはすべての疾病の診断を、人間よりもうまくできるようになるといっている。人間の身体のなかにセンサーが入り、それによって計測されたデータをAIが収集し、分析して、診断や処方を下すことができるからだ。AIは人間よりもデータの解析がうまくでき、さらに、それをずっと覚えていてくれる。社員が2、3年で次の仕事に移ったり、定年で退職してしまうことで、企業に知識やノウハウが蓄積されずに失われていくという課題をAIはカバーでき、企業の生産性をあげることにつながる」と切り出す。

 経済産業省の伊藤禎則参事官も「ロボットの語源はチェコ語であり、『強制された労働』という意味がある。AIやロボットには強制された仕事をやってもらい、人は強制されていないクリエイティビティーな仕事に向かわなくてはならない」と語る。

 さらに伊藤参事官は「AIやロボットの領域における日本のアドバテージは、世界で言われているように、AIが人の仕事を取ってしまうというよりも、人手不足を解消できるメリットが先行する点である。また日本におけるロボット技術の原型はドラえもんであり、人間に寄り添い、人を手伝うものという基本的な考え方がある。さらに日本は、リアルテクノロジーでも強みがある。ロボットや製造技術に強さがある点もアドバンテージになる」と指摘する。

 ワファ教授もジョークを交えながら「日本の働き方改革には、日本固有の問題がある。海外では社員が会社に来ないことが問題になるが、日本では会社から家に帰ってもらうことや、プライベートを楽しんでもらうことが問題になっている」とし、ここにもAIやロボットが活用できることを示す。これも海外のように、AIが人の仕事をとってしまうという発想とは異なることが示されている。

すべての業界は5~10年で成長が止まり、経営陣はクビになる

 一方で、ワファ教授はこんな指摘もする。

 「日本のいいところは、テクノロジーを知っている政府高官がいること、AIとはなにかということをわかっている企業のトップも多いことである。日本政府は政策としてテクノロジーをインプリメントしていることからもそれが証明される。日本は、AIやロボットで一歩先に行くチャンスがある。そのためにはもっと学ぶ必要がある」。

 また「日本の多くの企業からAIという言葉をよく聞くが、AIを買えば問題が解決すると思っている企業も多いのが残念である。それは電気を買えば、問題が解決できると言っているようなものである。電気は照明器具がなければ、部屋を明るくできないのと同じで、AIもどう使うかが重要である」と語る。日本の企業が、バズワードに踊らされている様子を指摘してみせた。

 さらに、ワファ教授は驚くべき予想を披露してみせた。

 「1990年代に日本に来たときには来日期間中の国際電話だけで、数1000ドルもの費用がかかった。だが今回の来日では、無料で国際電話ができる」と前置きし、「これと同じように、14年以内に無制限のエネルギーが誕生し、エネルギーが無償で提供されるようになる。街には火力発電した電力はいらなくなる。また食料も無料になり、デジタルドクターが登場することで医療も無料になる。さらにデジタルを活用すれば、教育も無料になる」と予測する。

 続けて「こうした動きは、産業に破壊をもたらす。当然、日本にも影響を及ぼす。テクノロジーの進歩と融合を考えれば、すべての業界は5~10年で成長が止まり、株価が暴落し、経営陣がクビになり、様々な悲劇が起こる」とする。

テクノロジーは世界を破壊する

 今後、すぐに起こる変化のひとつとして、自動運転をあげる。

 「自動運転のクルマが、3年以内に登場するだろう。そして5年後には東京の街中を自動運転のクルマが走っている。さらに10年後には人がクルマを運転することはなくなる。そうすれば、トヨタや日産はいまの市場の9割を失うことになる」とする。

 続けて「これと同じように、デジタル通貨が出てくれば銀行マンが不要になり、ロボットがモノを製造すれば、中国の製造業はなくなり、中国経済が低迷する」と指摘。「日本における朗報は、高齢化が進んでおり、ロボットが台頭することで生産性が向上するという点である」とも語った。

 そして「日本の多くの企業はこうしたことが起こることを知らない。米国の企業の経営者のほとんどもそうである。SFやファンタジーのように感じている人たちばかりである」とし、「スタートアップの企業が大手を食いはじめていることからもわかるように、テクノロジーは産業を破壊し、世界を破壊することになる。この破壊的な波は、毎年違ったレベルへとあがっており、力が増している。いまあるAIはExcelのバージョン1.0のようなもので、まだまだ初期段階のものでしかない。今後、バージョンがあがることで世の中を変えていくことになる。だが、それに向けて準備を整えている企業は、日本企業の1%だけであり、残りの99%は気がついていない。米国でも気がついている企業は1~2%程度しかない」とする。

 「破壊の波」が訪れていることは多くの経営者にとっての共通認識だろう。だが、その波の大きさと、波が訪れる速度への予測は、人によって異なる。ワファ教授が指摘するような「波」の大きさを感じている経営者は少ないのではないだろうか。

 ワファ教授は「テクノロジーの進化は、メリットよりもリスクを考えてほしい。ただ、AIによってもたらされる問題をとらえると、失業は全体の5%でしかない。もっと大きな問題があることを知って欲しい」と提言する 。

 これからどんな「破壊の波」が訪れるのか。しっかりと見据えることが大切である。

「未来の働き方」をテーマに開催されたラウンドテーブルの様子

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