今回のことば
「今年は日本法人設立から25周年目の節目。隠していたわけではないが訴求してこなかった。12月からの新年度では、米本社の35周年とともに積極的に提案していく」(アドビシステムズの佐分利ユージン社長)
アドビシステムズ(以下アドビ)の日本法人が1992年3月に設立して以来、今年で25周年を迎えている。外資系IT企業としては日本で長い歴史を持つ企業の1社だ。
だが、これまでの期間、同社では「日本法人設立25周年」を積極的に訴求してこなかった。むしろ、なにも発信していなかったといった方がいい。
「隠していたわけでもなく、もちろん忘れていたわけでもない」と、アドビの佐分利ユージン社長は笑いながら「実は2017年12月には、アドビが1982年に創業してから35周年を迎える。2018年1月からは日本法人の25周年と、米本社の創業35周年とあわせて訴求しようと考えている。そこで、2つの節目にあわせた新たな提案をしていきたい」とする。
そして「まずはこれを社内のクリスマスパーティーのメインテーマにして、社内を熱くしてから、社外にも訴求しようと考えている」と語る。これからどんな提案が始まるのかに期待したいところだ。
いまは顧客体験の時代
振り返ってみると、この間、アドビは大きな転換を遂げてきた。
創業時はPostScriptやIllustratorといったDTP(デスクトップパブリッシング)の企業としてスタート。その後、PhotoshopやAcrobat、アルダスの買収によるPageMakerなどにより、この分野の製品を強化。リーダーとしての座を強固なものとし、クリエイティブおよびドキュメントの分野において、事業拡大していった。
その後、オムニチュアなどの買収など、数々の買収戦略を経てデジタルマーケティング分野へと参入。これが現在のAdobe Experience Cloudへと進化し、同社の新たな事業の柱になっている。
そして、いまではクラウド専業ベンダーとして展開。これもアドビの変化を象徴するものだ。
佐分利社長は「IT業界はERPなどの活用によって、企業全体の最適化を追求したバックオフィスの時代から、従業員の生産効率を高めることを主眼においてフロントオフィスの時代へと変わり、いまではカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の時代を迎えている」と前置きし、「顧客体験の新たな時代においては、バックオフィスとフロントオフィスの効率化の経験を生かしながら、最適な形で、いかに顧客の満足度を高めるかが重視される時代に入ってきている。そうした時代の変化にあわせて、アドビが提供するサービスも変化している。そして2017年は、顧客体験の時代に向けた製品や技術が揃い、大きな影響を与えられる企業になった」と語る。
さらに「顧客体験の時代では、コンテンツやデータが重視される。これはアドビが持つクリエイティブのDNAを生かすことができる時代に入ってきたともいえる」と続ける。
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