今回のことば
「教育をしなければ格差が生まれ、次世代のテクノロジーを使うことができない。次世代のテクノロジーは、人類の発展のために使ってもらいたい」(人権運動家のマララ・ユスフザイ氏)
VMwareが米ラスベガスで開催した「VMworld 2018」会期2日目の基調講演で、Malala Yousafzai(マララ・ユスフザイ)さんが登場した。
ユスフザイさんは、2014年にノーベル平和賞を受賞。人権運動家であると同時に、現在、オックスフォード大学の学生でもある。
中学生のときから、女性の権利や女性に対する教育の必要性を訴え続けてきたユスフザイさんは、武装勢力のパキスタン・タリバン運動(TTP)から銃撃を受けるという悲劇に見舞われたが、2ヵ月以上におよぶ集中治療で復活。その後、それまで以上に積極的な活動を開始し、活動の成果が評価され、17歳と最年少でのノーベル平和賞を受賞している。
当日の基調講演の聴講者は、金属探知機を用いて全員が厳重なセキュリティーチェックを受けて入場。開封していないペットボトルのミネラルウォーターもわざわざ開封させてチェックするなど、異常なほどの厳戒態勢のなかで開催された。
基調講演でホスト役を務めたVMware カスタマーオペレーション担当COOのサンジェイ・プーネン氏が、ユスフザイさんを迎え入れると、全員がスタンディングオベーションで歓迎。ステージの背景は、ユスフザイさんの故郷であるスワート渓谷の景色が映し出された。
講演ではリラックスした雰囲気のなか、ユスフザイさんの「マララ」という名前が、アフガニスタンの女性の英雄であるマラライにちなんでつけられたエピソードをはじめ、子供時代や両親の話などに触れながら、「教育者である父のもと、私は恵まれた環境で教育を受けていた。だが、私の人生がこんな風になるとは思っていなかった。タリバンは女性に対して、まずは音楽を禁止し、市場に行くことを禁止し、そして学校に行くことを禁止した。教育によって、女性の地位が高まることを恐れ、女性の自由や自立を奪おうとした」と非難した。
ユスフザイさんは2012年10月、15歳のときに中学校から帰宅する際のスクールバスのなかで、銃撃を受けた。そのときの様子を「試験について友人と冗談をいいながら笑っていたことは覚えている。だが、次に覚えているのは、英国バーミンガムの病院のベッドの上。首にはチューブがつながっていて、話すことができなかった。なにが起こったのかがわからなかった」と振り返った。
2ヵ月半に渡って入院していたため、外でなにが起こっているのかをまったく理解していなかったとユスフザイさんは語るが、ある日、病院のスタッフが持ってきたカードが入った箱を見て驚いたという。
「知人から届いたお見舞いのカードかと思って箱をあけたら、それは世界各国から送られてきた、たくさんのカードであった。日本や米国、インドからのカードもあった。しかも『ここには数100枚しかないが、本当は数1000枚も届いている』とも言われた。世界中の人たちが応援してくれていることがわかった。TTPは、私のことを黙らせたかったのに、結果として数100万人の人たちが立ち上がってくれた」と振り返った。
また、ユスフザイさんを銃撃したのが幼い少年であるとわかったときのユスフザイさんの対応についても、質問に答える形で触れた。
ユスフザイさんは「少年は上からの指示で動いていた。当時の彼の頭のなかでは、これが正しいことをしていると理解していた。彼には、しっかりとした教育を受けて、許し、平和、やさしさという、イスラムの本当の真実を学んでほしい」と発言。「ヘイトは、エネルギーの無駄である。私は、いいことにエネルギーを使いたい。私にとっては、女の子に教育を受けさせることが重要なことであり、そこにエネルギーを使いたい」とした。
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