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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第37回

超マニアックなCD屋「メカノ」はなぜ潰れないのか

2010年10月16日 12時00分更新

文● 四本淑三

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委託販売でベストセラーも

―― メカノの看板としてインディーズの委託販売があるんですが、持ち込みは多いですか?

中野 毎日とは言いませんけど、週に何度かはあります。もちろん全部聴かせてもらってますよ。

―― でも全部扱うわけではないですよね?

中野 それは音源を預かる時に言うんですけど、聴いて良いものは、連絡します。けど悪いものは連絡しません。全部に返事するとアドバイスしちゃうんですよ。その結果について責任持てないですから。それで余計売れなくなったバンドがありますからね。

最新のインディーズバンドも扱っている

―― わはははは。さもありなん。

中野 だから、うちで扱えるかどうかだけを判断しています。CD-Rで、ジャケットがプリントアウトでも、音が面白ければ置いてます。そういうバンドがだんだん人気が出てきて、メジャーから出たなんて話もありますよ。

―― たとえばどんな?

中野 オーラルヴァンパイアって御存知ですか? 5年前にメカノがオープンした頃に最初のアルバムを推薦盤にしていたらずっと売れて、次はエイベックスから出ました。エイベックスくらいだと買取出荷しかしないんですが、さすがにメンバーがメカノだけは特別にと言ってくれて、うちだけはポスターが付きます。

「オーラルヴァンパイア」のCD。メカノだけ特別にポスターがプレゼントされるという「ショップ限定特典」つき

―― へー。

中野 あとはSEXY SYNTHESIZER。インディー時代に持ち込みでしたね。これがすんごい売れたんですよ。そしたら次はポニーキャニオンから出て。

―― じゃあメカノ育ちみたいな人達がいるんですね。ライブハウスみたいに。逆にメジャーに行って駄目だった例もありますよね?

中野 ああ、とても気の毒な例もいっぱいありますよ。メジャーもインディーも売れる枚数は同じなのに、入ってくるお金は10分の1くらいだったり。デビューして500枚しか売れなかった。じゃあ次は1000枚売れるようにしましょうと、それがレーベルの仕事なんですけど、それだけの体力はもうメジャーにはないですから。

―― そういえば初音ミクオーケストラ(HMO)なんて置いてあるんですね。

中野 それは売れましたねー。それも、ひとえにここがブロードウェイだったからだと思うんです。もしメカノが高円寺にあったら売れてないと思いますね。

―― いまボーカロイド関係、すごく勢いがあるんですけど、どうですか?

中野 メジャーメーカーから、アレが出ます、コレが出ますと、いろんなインフォメーションが来るんですが、流行りものの音楽を初音ミクでやりましたっていうだけだと、僕としてはつまんないなあ。だって初音ミクって楽器でしょ?

―― そうですね。

中野 なんで人間の歌を歌わせるかなと。人間じゃないんだから、メロディーが5オクターブぶっ飛ぶようなこともできるわけでしょう。ノンブレスで5分とか。その上で面白いもの、ポップで楽しい物を作って欲しいんですよ。それやらない限り存在理由がないじゃないですか。人間の歌なら人間に歌わせればいいんだから。

そんな厳しい店長の選盤眼にかなったのが、テクノポップバンド・アーバンギャルドの「ソワカちゃんとアーバンギャルド」。ソワカちゃんはニコニコ動画生まれのカルト的な人気キャラクター

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