音楽のジャンルは「歌モノ、インスト、ボカロ」
―― えー、それでは始めましょうか。
NezMozz はい、よろしくおねがいしまーす。
―― ああ、なにかラジオに呼ばれたみたいな感じがします。
NezMozz あの、このお話をいただいたときに思ったんですけど、山本ニューさんの言った通りになってるじゃないですか。「自称クリエイターの泥沼にはまる」っていう。そもそも、私たちはクリエイターですらないし。
―― ははは。そうですね。
NezMozz 私たちの話より、もっとP※に話を聞いてよ! って思います。
kosyu そうですね。
B-SAKATU 僕ももっとPのインタビューが読みたいですね。
※ P : 「ボーカロイドプロデューサー」の略。ボーカロイドソフトを使ったDTMコンポーザーのこと。音楽業界の「サウンドプロデューサー」のような形で使われるようになった。
―― いや、やはりシーンは作り手と聴き手があってのものなので。その関係に僕は興味を持ってます。最初に皆さんのプロフィールから伺っていきたいんですが。
NezMozz 誰にも聞かれないのに言うのもアレなので、今まで黙ってきたんですが。実はTVKの音楽班※にいたんですよ。
―― ああ、やっぱり。ただものじゃないと思っていたんですよね。
NezMozz 90年代が黄金時代ですよね。アルバイトで入って、AD止まりでしたけど。洋楽にしても邦楽にしても、クリップの蓄積がものすごくあるんです。それでポップミュージックを長いレンジの歴史として見ることを叩き込まれた。そのときに学んだことが多いですね。でも身体を壊して、フェードアウトする感じで辞めました。
―― 身体を壊したのは仕事で、ですか?
NezMozz 激務でした。特にその時代は、音楽番組部で作っている番組が多かったし、人数が少ないので制作にがっつり関わらなければならなかったので。
※ テレビ神奈川 : 神奈川県及びその近隣を放送エリアとするUHF帯(アナログ放送)のテレビ局。 MTV以前から音楽番組を主力とし、1980年代から90年代は、音楽バラエティ「ファンキートマト」や「ミュージックトマト」、ビデオクリップを200分間ノンストップで流す「SONY MUSIC TV」などの人気番組を抱えていた
―― 個人的にはどんな音楽を聴いてきましたか?
NezMozz エアロスミスから連なる、ミクスチャーロックです。ラウドミュージック大好きで。
―― 洋楽のリスナーは大抵そうですけど、ボカロにアレルギーを感じませんでした?
NezMozz 今でも「萌えアンチ」なんですよ。でもボカロだけ慣れて大丈夫になった。キャラクターが大事なんだなということも気づけたので。最初はクラフトワークのカバーをミクが歌っているのを聴いてからですね。音楽とは別にSFも好きだったので、機械が歌っていることにハートを打ち抜かれて現在に至る感じです。
―― kosyuさんはどうでしょう?
kosyu 僕はまったくの素人です。ボカロファンは二種類に大別されると思うんですが、NezMozzさんのような人は少数派だと思っています。自分はボカロで初めて音楽を趣味として聴くようになり、いろいろなジャンルがあることを知りました。そういうタイプが多数派だと思うんですね。
NezMozz それがすごいことだと思うよ!
―― 確かにそうですね。音楽体験のベースがすでにボカロだということですよね。するとボカロは音楽全体の中でどういう位置付けになるんですか?
kosyu 大きなジャンルとして考えています。歌モノがあって、インストがあって、ボカロがあるという。
―― ボカロは歌モノではないんですね?
kosyu インストとの中間ですね。それに自分はボカロの聴き専というより「見る専」なんです。ニコニコ動画のほぼすべてのジャンルを見ています。いわゆる「御三家」と呼ばれるアイマス、東方系もそうですし、歌ってみた、演奏してみたなどですね。
NezMozz kosyuさんは「はてブ最速のクマー」と呼ばれてますから。いつも動画が上がると、真っ先にブクマしているのがkosyuさんなんですよ(はてなブックマークのページ)。すごく網羅的に見ている。
―― ニコニコ動画のアンテナなんですね。バーサク(B-SAKATU)さんはどうでしょう?
B-SAKATU 僕も中学の頃は、オリコンに載るような曲を聴いていたくらいですね。ただ高校に入って、ネットでインストがあることを知って……。
―― インストをネットで知った……んですか?!
B-SAKATU ええ、2ちゃんねるのフラッシュの作品だったんですが。muzieのPhantasmaさん※という人の曲にPVを付けたものがあって。ニコニコはゲーム動画からですね。本当は(ユーザー登録なしで見られる)YouTubeで見たかったんですけど、ニコニコにしかないので嫌々ユーザー登録したんです。
※ Phantasma : muzieの他、 現在はニコニコ動画でボーカロイド作品も発表している(投稿動画一覧)。Flash動画としては、yama_koさんの「Prism」などに曲が使用されている
Image from Amazon.co.jp |
Vocaloid Meiko |
―― それはいつ頃の話です?
B-SAKATU 「γ」(ニコニコ動画のバージョン名。2007年3月に開始)の頃です。MEIKO※の時代ですね、「アンインストール」とかの。こんな技術があるのかと感心していて、そのうち初音ミクが出て、いろいろ巡っているうちに、音楽を聴く習慣ができた感じです。
※ MEIKO : クリプトン・フューチャー・メディアの初期ボーカロイド製品。発売は2004年
NezMozz この二人のように、ボーカロイドをきっかけに、選択的に音楽を聞く人が増えているんですよ。すごく沢山いる。そういう人にとって何かしらの道標になるのが、こういうラジオなんかだろうと思うんですよね。
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