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「グーグル以後の世界」MySQL共同開発者と作る

2017年08月02日 09時30分更新

文● 盛田諒 ●編集 村野晃一

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 「世界を変えよう」と提言する男がいる。

 プラネットウェイはグローバルIoT事業を中心に利用できる個人情報プラットフォームを開発している米国、日本、エストニアに拠点を置くグローバルスタートアップだ。電子政府国家エストニアで15年間使われてきた行政インフラを世界で初めて民間転用した企業として、IoT業界や保険業界を中心に注目を集めている。

 同社代表 平尾憲映CEOのビジョンは大きく「世界を変えること」。平尾代表のもとにはビジョンに魅せられた有力者たちが次々に集まっている。平尾代表とトップの対談を通じ、プラネットウェイが何に挑戦しているのかを明らかにしたい。

 第1回目の対談相手は、同社最高技術責任者(CTO)であるトーニュ・サミュエル氏。トーニュCTOは世界中で使われているデータベース管理技術「MySQL」共同開発者としてIT業界で知られる存在でもある。平尾憲映CEOはトーニュCTOの技術力でどんな未来をつくろうとしているのか。キーワードは「最先端のセキュリティー」だった。

Speaker:
プラネットウェイ 代表取締役CEO
平尾憲映

Planetway #2
1983年生まれ。エンタメ、半導体、IoT分野で、3度の起業と1度の会社清算を経験する。学生時代、米国にて宇宙工学、有機化学、マーケティングと多岐にわたる領域を学び、学生ベンチャーとしてハリウッド映画および家庭用ゲーム機向けコンテンツ制作会社の創業に従事。また、在学時に共同執筆したマーケィングペーパーを国際学会で発表。会社員時代には、情報通信、ハードウェアなどの業界で数々の事業開発やデータ解析事業などに従事。

プラネットウェイ CTO
トーニュ・サミュエル

Planetway #2
MySQL開発のコアメンバー4名の1人として、MySQLのSSL接続などのSecurity全般を開発。NASA Centennial Challenge Robotプロジェクトのコアメンバーとして、火星や月などでサンプル取得するロボットの開発に従事し、後に、Skypeの共同創業者と共に創業時からStarShip Technologiesのベースのロボットを開発。サイバーセキュリティーのスペシャリストとして、FBIへアドバイスした経歴を持つ。

不可侵な個人認証技術が世界を変える

平尾 今日は「なぜわたしは世界トップクラスの技術者であるトーニュに声をかける必要があったのか?」という話をしたいと思いますが、そのためにはまず現在のプラネットウェイがめざしているものについて話す必要がありますね。世界観はきわめてシンプルで、「許諾ベースの情報開示プラットフォーム」です。

 言うなれば、個人が自分の個人情報をどこに共有できるか許諾するボタンを作るような発想です。たとえば利用者がもっているコンピューターに「あなたの医療情報を保険会社に提供してもいいですか?」とポップアップが出てくる。そこで「OK」を選べば、保険会社が健康状態に適したプランを提案してくれるというわけです。

 そこでキーになると考えているのが、個人情報の認証技術「Planet ID」です。

 個人情報を開示する上で大事なのは、一度ID(個人情報)を登録してしまえば、絶対にフェイク(なりすまし)ができないという安全性です。FacebookやLINEのようなSNSはアカウントが乗っ取られることもありますが、わたしたちのサービスはそもそも確実に安全性が担保されていなければ成立しない仕組みですから、個人情報の本人確認には最先端のセキュリティー技術を使う必要がありました。

 ぼく自身もエンジニアなので、個人が特定できて自分の意志でIDを出せる仕組みの技術的アイデアはありました。しかし具体的には決めあぐねていた。そのときトーニュが「こんなものがありますよ」と、想像を超えた技術を出してきてくれたんですよ。

トーニュ ボクが提案したのは、暗号鍵を分散させる「スプレッドキー(秘密分散法)」技術の一種なんだよね。鍵をシェアするような考え方で、たとえばスマートフォンとパソコンとサーバーに鍵があって、どれか1つでもそろわないとシャットダウンしてしまうような仕組み。日本の会社でいったら、取締役2人が判子を捺さないと効力を発揮しないような構造と言ったら想像しやすいかな?

平尾 スプレッドキーは数学界でも注目を集めているよね。数学の世界的な権威が社内にいることもあって、プラネットウェイでは新しいソリューションとして技術を採用できた。この技術を使えるのもトーニュが協力してくれたおかげだね。

トーニュ 今後は人自体がサイバー化していって、デバイス自体はどんどん見えなくなっていって、それ自体はもう止めることができないことなんだよね。電話機がスマホになり、今後は眼鏡型やウェアラブルなデバイスに変わっていくように。その中で個人を特定する技術が非常に重要になってくる。

 たとえば、今FacebookのIDを使ってアサインできるサービスが多いけど、FBのアカウントはフェイクIDが簡単につくれてしまうよね。確実に本人だと特定できないものをキーIDとしてログインできてしまうことが問題なんだよ。確実に本人が特定できることを前提としたIDが必要で、それを元にセントライズしていかなければ、そのうち情報漏えいどころの騒ぎじゃなくなっちゃうよね。

 テクノロジーの進歩で色々なことが可能になったけれど、最終的には本人さえいればそれが証明される形になっていくのが理想だよね。たとえば、スマホをかざす必要すらなく、本人が通りさえすれば駅の改札を抜けられるとか。家に帰っても、鍵を出す必要もなくドアを開けられたりね。IDはソリューションというよりも、その人そのものになっていかないとね。

仕事をするからには世界を変えなければいけない

トーニュ 平尾さんと初めに会ったのは1年以上前だったかな?エストニア大使館が主催する集まりだったと思うけど。そのときは挨拶をするだけで終わったんじゃなかったかな?

平尾 もともとは別の事業にアドバイスをもらおうという意図で打ち合わせをするつもりでいたんだよ。でも、いざプラネットウェイの事業プランとビジョンを見せたら「あなたの会社にはCTOポジションが足りていないですよね?」って。われわれの事業と、トーニュがMySQL時代に培ってきたきたデータベース技術、サイバーセキュリティ技術の間には、非常に親和性があったんだよね。トーニュとしても、エストニアではなく日本でそうした仕事をするというのを面白そうだと言ってくれて。

トーニュ 日本は伝統的な部分を大事にする国ですよね。一方、エストニアは新しいものをとりいれるために法律も変えてやっていこうという文化で。エストニアで生まれた技術を日本にもってくるのは面白いし、タイミングとしても良かったと感じてね。

平尾 ぼくも過去に色んなエンジニアと仕事をしたことがあるんだけど、同年代のエンジニアとはケンカばかりだったんだよね。みんな、ファーストステップ、何を最初にするかという目の前の話を重視する人たちばかりで。

 でも、初めてビジョンを話したとき、トーニュが言ってくれたのは「よければ一緒にやってみませんか?」という言葉だった。否定なしにそう言ってくれたのは本当にうれしかったな。ぼくが「将来、資本主義の仕組みはなくなるから、その先どうするかが大事」「人間の脳がつながっていく」なんて相当ぶっとんだ話もしたけれど、そのあと、「あなたのミッシングピースはぼくじゃないの?」と言ってくれたのはとてもうれしかった。

トーニュ ボクは仕事をするからには世界を変えなければいけないと思ってるからね。

 ITの世界では、たとえ一時的には流行して収益を上げられたとしても、3年後にはなくなってしまっている技術も多いよね。逆もまた同じ。ボクがMySQLの開発を始めたときは誰からも技術的に理解をされなかったけど、いまやMySQLはFacebookやYouTubeで使われる、世界的なデータベース技術になったしね。常に未来を見据えて仕事をしてきたんだ。

 平尾さんがプラネットウェイの技術を普及させることで、日本だけじゃなく世界を変える可能性があると思ったし、それによってGoogleが作りだした検索の世界観を変える、と言うビジョンにはとても共感したからね。

平尾 大手の囲い込み戦略がイヤなんだよね。「このソリューションを使うにはこのセットを使わないといけない」といったやり方が。利用者にとって半強制的な仕組みというのは、資本主義の中で起こりうる1つの限界値だと思うんだよ。ぼくたちは自分たちのプラットフォームを、囲い込まないソリューションとして作っていきたい。それが資本主義の次に来る世界であるべきだ、と思っているからね。

平尾 そのとき中心になるのがID、個人情報だと思うんだよ。IDはどんな人にも平等に与えられているものだし、そのIDをベースとして行政や民間業者がサービスを設計することで、資本がなくても個人が生きていける世界が作れるんじゃないかと思ったんだ。

 よくプラネットウェイの仕組みはマイナンバーと比較されることがあるんだけど、マイナンバーは個人情報ドリブンの話。われわれは個人情報が決してフェイクされない技術を前提として、サービスドリブンで作っている。行政にしても企業にしても、実際に現場で使う人がメリットを感じられるように作ることが前提なんだよね。「個人情報管理の仕組みを作ったから使いなさい」と上から言われるのとは、真逆の発想だよね。ただ、世の中にある様々なIDとも共存していけると思っているよ。囲い込まない戦略だからこそね。

 仮想通貨でも、物々交換でもない、新しい世界を作りたい。だから社名を「Planetway」、新しい惑星への道にしたんだよね。Planet IDは新たな世界を実現するための基幹技術。トーニュが開発してくれたテクノロジーを、わたしがマーケティングの力で普及することで、個人間にある様々な不平等を解決していけたらいいよね。



 現在、IoT業界を中心に多様な業界で《個人》ベースの新たなサービスが広がりを見せている。たとえば自動車の運転行動によって料金が変わる自動車保険「テレマティクス保険」などだ。プラネットウェイはこのように各種IoT機器が検出した個人情報を「誰にどう使ってもらうか」を利用者に選んでもらうベースとなるプラットフォームを作っている。その核となる本人確認技術「Planet ID」の技術的素地を作った人物こそがMySQL共同開発者であるトーニュCTOだ。平尾代表が挑戦している新しい社会システムの仕組みづくりは、最先端のセキュリティー技術を普及させることへの挑戦でもある。

 「世界を変える」。

 何を突拍子もないことをと、ピンとこない人もまだ多いだろう。だが、世界の変革は決してドラスティックではなく、そのきざはしを捉えるのは容易なことではない。徐々に我々の生活に浸透し、やがて、あって当たり前のもののように溶け込んでいく技術-。今から十数年後、平尾代表のこの挑戦がその転換点であったことに気づくときがやってくるのは、そう遠くないのかもしれない。

(提供:プラネットウェイ)

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