このページの本文へ

「avenue jam」特別対談第6回

対談・Planetway平尾憲映CEO×エストニア政府元CIOターヴィ・コトカ 第1回

日本がエストニアから学ぶこと

2017年10月17日 09時00分更新

文● 盛田諒 ●編集 村野晃一

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 電子政府への取り組みで最先端を歩む国家の1つとして世界中の注目を集めるエストニア。このエストニアで最高情報責任者(CIO)としてその取り組みを先導したのがターヴィ・コトカ氏だ。バルト海に面した人口130万人程度の小規模な国であるエストニアは、その地理的要因から複雑な歴史的経緯を経て、1991年に当時ソビエト連邦からの独立を果たした。

 そのエストニアが、なぜここまで注目を集めることになったのか。どのような取り組みをもって、世界最先端の電子政府の仕組みを取り入れることができたのか。そして、この成功事例を日本に展開するうえで必要なものは何なのか。対談シリーズの今回は、プラネットウェイCEO平尾憲映とコトカ氏との、エストニア現地と東京と結んだSkypeでのディスカッションの模様を全3回に渡って紹介する。来日したコトカ氏と初めて渋谷のパーティで話したという平尾氏は、その内容に非常にショックを受けたという。プラネットウェイの現在の取り組みの原点のきっかけを与えたコトカ氏は、どのようなメッセージを日本にくれるのだろうか。

Speaker:
プラネットウェイ 代表取締役CEO
平尾憲映

1983年生まれ。エンタメ、半導体、IoT分野で3度の起業と1度の会社清算を経験する。学生時代、米国にて宇宙工学、有機化学、マーケティングと多岐にわたる領域を学び、学生ベンチャーとしてハリウッド映画および家庭用ゲーム機向けコンテンツ制作会社の創業に従事。在学時に共同執筆したマーケィングペーパーを国際学会で発表。会社員時代には情報通信、ハードウェアなどの業界で数々の事業開発やデータ解析事業などに従事。

プラネットウェイ アドバイザリーボードメンバー
ターヴィ・コトカ

電子政府・デジタルヘルスケア・通信ソリューション分野のリーディングカンパニー、Nortal社の共同創業者 /最高経営責任者(CEO)として事業を統括・指揮し、同社のバルト地方でNo.1ソフトウェア開発会社への成長に貢献した経歴を持つ。上記の実績により2011年エストニアのErnst & Youngから、起業家オブ・ザ・イヤーを受賞。 2013年より、エストニア政府経済通信省へ入省し、エストニア政府CIO(最高情報責任者および経済通信省 局次長を務める。経済政策の一つである、e-Residencyの生みの親であり、エストニア以外の外国籍者に対して、ヴァーチャル住民としての登録と会社を登記できる仕組みを創出した。

日本のe-Residency実現に必要なもの

平尾  まずe-Residencyについてお話させてください。私の認識ではあなたがe-Residencyの父であり、エストニア政府の中で非常にユニークなソリューションを開発したと思っています。これを導入する際のプロセスと、そのときのチャレンジについて教えてもらえますか。われわれは日本での展開にあたり、このエストニアでの経験を基に、可能であれば同じことを実現したいと考えています。

コトカ  e-Residencyはより多くの外部の人々とエストニア経済を接続するものです。地理を問わず、例えば日本にいてもエストニアにいるかのように会社の経営が行えます。このフレキシビリティが重要なもので、外部の人々に開放することが鍵となっています。一方で日本にはすでに確立されたインフラがあり、こうした要素を付加する必要がなかったといえます。私の記憶では、横浜で同じような試みがあったほか、東京五輪に向けた取り組みがあることも聞いています。ここで重要になるのが、こうした仕組みをすべて外部の人々に“デジタル的”に提供するという部分です。日本政府が進めているマイナンバープロジェクトも、こうした仕組みの実現に向けた正しいステップの1つだといえるかもしれません。

 もちろん、この仕組みの実現には何年も必要になります。日本とエストニアの違いを挙げれば、デジタル社会(Digital Society)が15-17年にわたって(エストニアに)存在していることでしょう。日本政府はこれに向けて投資を進めていますが、まだ初期段階であり、マイナンバーがその一歩といえます。民間組織と政府の異なる組織をオープンに接続し、相互にデータをやりとりできる仕組みを使っていかなければいけません。

平尾  その指摘は非常に正しいと思います。ただプラネットウェイとしては、日本政府のやっていることにすべて賛同しているわけではないんです。何かを進めるのに時間が5年か10年、あるいはそれ以上かかることもあります。政府側の認識では、現在一部の大手企業が地方自治体との連携でデータを交換する場所としてのインフラの構築を始めていますが、エストニアに比べれば不十分ですし、まだまだだと思います。ご指摘のように、日本は大きく、すでにさまざまなシステムが稼働しています。スタートアップ企業の1社として、この動きを加速させていきたいと考えています。

日本とエストニアの違い・ローカライズの必要性

平尾  エストニアで培われた仕組みを紹介・導入するのがプラネットウェイの使命の1つですが、日本への導入に際してはテクノロジー及びユースケースのローカライズというか、日本市場に合う形でのカスタマイズが必要だと考えています。現在進んでいるプロジェクトの1つは、損害保険大手の東京海上日動火災保険と福岡エリア、そして周辺の病院をつないで医療データを保険会社と結ぶ仕組みです。このプロジェクトを始めた理由の1つが、医療データという非常にセンシティブなものを取り扱っているという点で、誰もが盗まれたり流出することを欲していないものです。この取り組みはいまのところうまくいっており、次のステップとしてこの取り組みを拡大していこうと考えています。参加する病院をさらに増やしたり、あるいは別のエリアやコミュニティへと展開していく形です。こうした広域展開が現在直面している問題で、この取り組みに向けたアドバイスはあるのでしょうか?

コトカ  保護されたデータ転送プラットフォームの素晴らしい点は、病院と保険会社の間でのやりとりだけでなく、同時に次の付加価値あるビジネス機会につながる点です。例えば銀行や登記所、税務署など、現在は紙ベースで行われている拠点間でのやりとりが、こうしたシステム上で構築されることになります。この際、市議会と一緒に行動を起こすことも重要で、そうすればこの仕組みが標準化されることになります。

平尾  地方自治体の人々と話すとき、中の人はITについては少し詳しいけど、あなたのようなCIOとは違いITのプロフェッショナルでもありません。インフラの利用にあたってはカスタマイズが必要ですが、彼らは方法がわからないため、誰かのアドバイスを必要としています。日本ではエストニアほどITリテラシーが高くないからだと考えていますが、ここで重要になるのは誰か外部の人がコンサルティングやアドバイザリの形で助けることでしょう。プラネットウェイやあなた自身が手を差し伸べるべきかと思っていますが、興味はありますか?

コトカ  われわれはいつでもコンサルティングを提供しますが、もしこうしたデジタル社会を目指したいのであれば、まず動き始めることでしょう。とにかく動き出して、市民や企業により良いサービスを提供しようとするのです。それが(デジタル社会への)後押しになるでしょう。そして、可能な限り人々を導いていくのです。マイナンバープロジェクトについても同様で、そのメリットを訴えていくことで、やがては現実のものとなっていくと思います。

つづく

(提供:プラネットウェイ)

■関連サイト

カテゴリートップへ

この特集の記事

新生avenu jam開設に寄せて

「avenue jam」特別対談