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「avenue jam」特別対談 第33回

対談・Planetway CEO 平尾憲映×SELTECH元代表 江川将偉 第3回

ベンチャーに「飛信隊」が集まった

2018年12月18日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)編集●ASCII

提供: プラネットウェイ

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 SELTECH代表取締役の江川将偉社長が年内に会社を畳み、プラネットウェイに入社する──報せはセキュリティ業界のあいだでちょっとした騒ぎになった。江川社長はAI・IoT領域におけるセキュリティの若き俊英だ。2017年にはG7イノベーター会議(I7)に日本代表として出席している。業界での信頼は篤く、「セキュリティ業界の守護神」と呼ばれたこともある。

 一方、プラネットウェイはエストニア生まれの情報インフラを扱うスタートアップ。保険会社と医療機関のような企業同士が機密情報や個人情報を安全にやりとりするためのセキュリティ対策を得意とする。なぜ江川社長は会社の看板をおろしてまでプラネットウェイへの入社決めたのか。理由はプラネットウェイ平尾憲映代表が「同じ山」に登っていることに気づいたからだという。(全3回)

Speaker:
プラネットウェイ 代表取締役CEO
平尾憲映

1983年生まれ。エンタメ、半導体、IoT分野で3度の起業と1度の会社清算を経験する。学生時代、米国にて宇宙工学、有機化学、マーケティングと多岐にわたる領域を学び、学生ベンチャーとしてハリウッド映画および家庭用ゲーム機向けコンテンツ制作会社の創業に従事。在学時に共同執筆したマーケィングペーパーを国際学会で発表。会社員時代には情報通信、ハードウェアなどの業界で数々の事業開発やデータ解析事業などに従事。

SELTECH 元代表取締役社長
江川将偉

1977年生まれ、カリフォルニア州立大学にて、航空宇宙工学専攻。半導体商社のエンジニア、セールス及びマーケティング職を経て、2009年株式会社SELTECH創業し代表取締役に就任。

ベンチャーの社長がほしいのは自分の分身

平尾 江川さんとは違いますけど、プラネットウェイに入っちゃったほうがより早くインパクトが出せるよねという企業が最近増えているんです。「うちの会社を買ってくれませんか」とお願いされるんですよね。いや、お願いされてもうちは出資されてる立場のベンチャーだけど……と言ってはいるんですけど、彼らはお金じゃなくて、夢でプラネットウェイに来てもらえているんですよね。

 実際、その中に買収しようという企業があったときも、江川さんがいてくれてよかったなとなると思うんです。技術もビジネスもわかった上でコミュニケーションをとれる人がいなかったら、ブリッジができずに空中分解していてもおかしくないから。ぼくがやってもいいんですけど、それをやると今度は社長がいなくなってしまう。その意味でも、江川さんに来てもらえて本当によかったなと最近よく思うんですよね。なんですかね、コミックの『キングダム』の飛信隊みたいな感じで。

※【飛信隊】:漫画『キングダム』に登場する、 主人公・信が率いる秦国軍の精鋭部隊。

江川 そう言ってもらえるとありがたいです。

平尾 ぼくに近い環境で会社をやっていた江川さんみたいな人を入れるようなことって、ふつうのベンチャー経営者はやらないと思うんです。でも、うちはグーグルやフェイスブックやアマゾンを倒そうというくらいの会社だから、学びながら走りきれる環境を一緒につくってもらいたいと思ったんですよね。

江川 ベンチャーの社長って自分のような自分がほしいと思うんですよね。

平尾 そうなんです、分身がほしいんですよ。

江川 社長ってあれもこれもやりたいことがあるから、そのうち収集がつかなくなってきて、自分の体がひきちぎれてしまうんですよ。自分もそうだったから。これからプラネットウェイで何ができるかって話でいえば、平尾さんがわたしの二の轍を踏まないためのサポートができるだろうと。わたし自身が会社をやってきた中で、できなかったことを経験してますから。平尾さんが進みたいほうに進んでもらうため、整地をやろうというのがぼくの思いです。だから、平尾さんには、「がんがんヤンチャやってくれたらいいな」と思ってますよ。性格は似ているので、苦しそうだなと思えばフォローするし、行きすぎたら呼び戻しますが、基本的には好きなように走ってもらえるようにしたいですね。

平尾 やっと全力で走れるようになるなと思ってますよ。いままでCEO、CTO、CFO、COO……Cがつくものはすべてやっていたので、いつまで経っても自分のフルケイパビリティを出しきれていなかった。江川さんが入ってくれたことで、プラネットウェイの成長速度は今まで以上になると思います。

江川 社長としてやらなくていいことは片っ端からはずしていきますからね。それはこっちでやるからと。社長はビジョナリーであってくれればいいんですよ。社員と会社を経営するのが社長の仕事なので、それだけ徹底的にやってもらう。それ以外のところは大体できるので、こっちにまかせてくれればいいと。

平尾 本当にヤバいときは現場に降りていきますが、あとは夢を考えて語って走って……どんどん幼児化していきますよね。子どもに戻るといったら変ですが、純粋になるというか。そういう時期かなと。そのうちやせていくと思います。

江川 平尾さんはダイエットが必要ですからね。

あきらめないかぎり徹底的にやりつづける、それを一緒にやっていければ

平尾 江川さんに期待していることは2つあるんですよ。1つは先輩経営者としての知見。彼が失敗してきたことを含めて、不要な失敗をしないような道をつくってもらえること。もう1つは人脈。前職で生かしきれなかった部分をぼくに渡してくれることで、さらに大きな炎ができるんじゃないかと。

 実際すでに何人か紹介してもらいましたけど、本当に世の中を変えるような人脈を持たれているなと実感してますよ。最近は「この人脈が使えるなら世界一とれるな」とも本気で思っています。まだ赤字の企業が言うのも変ですけど。

 なので、テクノロジー的な着眼点が合っていること、先輩経営者としてアドバイスをしてもらえること、豊富な人脈を使わせてもらえること。その3点が合わさって、ネットワーク効果のように成果が二乗されていくというのが、江川さんに来てもらえて本当によかったなというところです。

江川 まずは平尾さんをきっちり世の中に飛ばしていくのがわたしの役割ですね。プラネットウェイの「ウェイ」、道ができるまでしっかりサポートしていこうと。一方、わたし自身もいくつかの夢があります。その1つは趣味として、プラネットウェイのラボとしてやっていこうかなと。趣味は趣味として楽しもうと思ってます。

 くりかえしになりますが、わたしはSELTECHの夢をあきらめたわけではなく、平尾さんというまた1つの一緒に走れる先ができた、登っていくところができたということなんです。夢はあきらめないかぎり徹底的にずーっとやりつづけるので、それを一緒にやっていければと。平尾さんがなにかで夢をあきらめちゃったということがあったらやめますけど、当分はそんなことなさそうですからね。

平尾 死なない限りはないですね。

江川 それなら死なないためにもダイエットですよ。

[了]

(提供:プラネットウェイ)

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