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対談・PlanetWay平尾憲映CEO×ジャパン・リンク松本徹三社長 第4回

個人情報「保護」より「利用前提」に考えて

2017年09月26日 09時00分更新

文● 盛田諒 ●編集 村野晃一

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 プラネットウェイはグローバルIoT事業を中心に利用できる個人情報プラットフォームを開発している米国、日本、エストニアに拠点を置くグローバルスタートアップだ。電子政府国家エストニアで15年間使われてきた行政インフラを世界で初めて民間転用した企業として、IoT業界や保険業界を中心に注目を集めている。

 同社代表 平尾憲映CEOのビジョンは大きく「世界を変えること」。平尾代表のもとには、壮大なビジョンに魅せられた有力者たちが次々に集まっている。元ソフトバンク副社長で、プラネットウェイの顧問役に就任している松本徹三氏もその1人だ。

 4回にわたってお届けしてきた平尾CEOと松本氏の対談も今回が最終回だ。

 松本氏は、個人情報を利用者自身の意思でコントロールできるプラットフォーム「PlanetID」をビジネスの中核に置こうとするプラネットウェイの方針に賛同している。松本氏は個人情報が“保護すべき対象”であるとともに、的確に利用されるべきものだとも考えている。どういうことか。平尾CEOとともに「次に来る世界観」を語る。

Speaker:
プラネットウェイ 代表取締役CEO
平尾憲映

1983年生まれ。エンタメ、半導体、IoT分野で3度の起業と1度の会社清算を経験する。学生時代、米国にて宇宙工学、有機化学、マーケティングと多岐にわたる領域を学び、学生ベンチャーとしてハリウッド映画および家庭用ゲーム機向けコンテンツ制作会社の創業に従事。在学時に共同執筆したマーケィングペーパーを国際学会で発表。会社員時代には情報通信、ハードウェアなどの業界で数々の事業開発やデータ解析事業などに従事。

プラネットウェイ アドバイザリーボードメンバー
松本徹三

1940年生まれ。京都大学法学部を卒業後、伊藤忠商事 大阪本社に入社。アメリカ会社エレクトロニクス部長、東京本社の通信事業部長、マルチメディア事業部長、宇宙情報部門長代行などを歴任後、1996年に伊藤忠を退社して独立。コンサルタント業のジャパン・リンクを設立後、米クアルコム社の要請を受けてクアルコムジャパンを1998年に設立し、社長に就任。2005年には、同社会長 兼 米国本社Senior Vice Presidentに就任し、発展途上国向け新サービスの開拓などに取り組む。2006年9月にクアルコムを退社し、同年10月にソフトバンクモバイルの取締役副社長に就任、主として技術戦略、国際戦略などを担当。2011年6月からは取締役特別顧問になり、1年後に退社する。2013年11月に、休眠していたジャパン・リンクを復活させて、現在はソフトバンクを含む国内外の通信関連企業数社とのアドバイザリー契約がある。2013年から2年間、明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科の特別招聘教授も務めた。最近の著書に『AIが神になる日』(SBクリエイティブ、2017年7月)がある。

秘匿性ばかりに重視される個人情報 有効利用の鍵はAIにある

平尾 最後に松本さんには、「来るべき世界」について、伺いたいと思っています。日本の個人情報サービスはどう変わっていくべきだと考えていますか。

松本 日本には個人情報についてのバランス感覚がありませんね。何かというと「プライバシーの保護」という話にしかなりませんが、これでは順序が逆ですよ。個人情報はまずはそれをフルに利用することにこそ価値があるのですから。

 エストニアのシステムは「インテグリティ」「アベイラビリティ」「セキュリティ」の三つのファクターがバランス良く整えられていることを主眼として作られています。「つじつまがあった正しい情報」が、「誰にも使いやすい形で」整備されており、その情報のベースとなった「個人情報の秘匿性」は確実に保障されている。この三位一体こそが重要なのだという認識が、常に設計のベースになっているのです。はじめから「個人情報の秘匿性」のことばかりを考えていると、いびつな、使い勝手の悪いシステムしか作れません。

 利用者がコンピューターに自分の個人情報を入力しておくことで、回りまわって自分自身も良いサービスが受けられるようになるし、それによってコストの安い住みやすい社会が作れる。しかし、それが一定の権力者に悪用されるようなことには絶対にならないように、細心の注意を払ったシステム設計がなされている。これが理想ではないでしょうか?

 こういうシステムが日本でもどんどん作られていかねばならないと思うのですが、どうも日本では、「プライバシーの保護」ということが神経質に語られすぎているように思えます。

 たとえば、いま世界中の街中にはたくさんの防犯カメラがあって、どんな人でも必ずどこかで自分の姿が写されているわけですが、「プライバシーの侵害だ」といってそのことを批判する人はいないでしょう? これらの防犯カメラが犯罪の大きな抑止力になっているというプラス面を、もはや誰も否定できないからです。他のシステムでも、まずはプラス思考から入っていくべきです。

平尾 自動車の運転状況を記録するドライブレコーダーなんかもそうですよね。

松本 そうですね。それが安全運転につながり、多くの人命を救っています。

 ところで、ぼくは最近「AIが神になる日」という本を出版し、そのこともあって、「AI(人工知能)を使えば何ができるだろうか」を、いつも考えるようになっています。その一例として、いま色々な議論のある「共謀罪」の関係でも、AIを使えば、みんなが安心できる運用ができるのではないかと考えています。

松本徹三氏の著書「AIが神になる日-シンギュラリティーが人類を救う-」(SBクリエイティブ刊)

 たとえば、テロを事前に防ごうとしたら、怪しい人間を見つけて監視するしかありませんね。しかし、「少し怪しいところはあるけど、実は全く無実」だという人は世の中にごろごろいます。そういう人は、誰かに色眼鏡で見られたら、とても不愉快でしょう。でも監視するのが人間じゃなく、AIだったらどうでしょうか? AIは個人情報を丹念に収集し、徹底的に分析しますが、いますぐにでも犯罪を引き起こす懸念が生じない限りは、それを人の目にはさらす様なことは決してしません。ぼくなら、そのことが完全に保証されている限りは、自分のパソコンやスマホの交信内容まで全て国の運営するAIに把握されていても、何の痛痒も感じません。

 AIをめぐってのいまの議論の流れを見ていると、その能力やスピードについての議論がほとんどですが、ぼくは「AIは、人間のエゴとか利害関係、権力者の思惑などといったことから、完全に遮断されうる」ということの方が、もっと重要だと思っています。いまのエストニアのシステムには、そういう考えが先取りされている様なところがあるので、プラネットウェイはいいところに位置している様に思いますよ。

平尾 まさにそのとおりだと思います。でも、まだそういう考えをもてない人は多いですよね。広告にしても、すでに個人の購買履歴がどんどん使われているのに。

松本 いや、ぼくは現在のネット広告に反発する人たちの気持ちはわりと理解できます。情報の「使われ方」がイヤなんですよ。商業主義が行きすぎていて、うんざりなんです。めったにないけどたまに変なサイトを一回でも見ちゃうと、「これも見たいでしょう?」と似た様な商品ばかりプッシュしてくる。「やめてくれよ、そんなもの見たくねーよ」って思っても、押し付けがましいんです。「もう放っといてくれよ」と思ってしまいますね。

平尾 プラネットウェイは、それぞれの人が自分の意思で提供した個人情報を、「その人の意思に反しない限り」誰もが活用できる世界を作りたいと思っているんです。ですから、AIとはまさによい相関関係があると思っているんですが、やっぱりそういう考えを頭ごなしに否定する人もいて……。

松本 どこにいっても、抵抗勢力は多いですからね。海外の人に会うと「日本人はいい人たちなのに、ビジネスの話になるとなぜかいつも不機嫌で、怒ったような顔をしているね」と言われることが時々あります。特に大企業の幹部や、その配下にいる人たちがそうなのですが、失敗をしないことばかり考えているのか、こまかいアラ探しが多いですね。日本の会社って、一つでも問題を起こすと袋叩きにされることが多いでしょう? そうなると、その人がそれまで延々続けてきた努力が水の泡になる。だから決して問題をおこさないように、慎重には慎重を期す傾向があります。

平尾 お客さんがアラを探してくれるということは、我々にとってはむしろ有難いことだと思うのですが、慎重には慎重を期すというのは、ぼくとしてはどちらかというと苦手なことだなあ……。

松本 そうだよね。ソフトを作る人は、できたものはどんどん売って、どんどん先に行きたいから、「絶対に問題を起こさない」様にするというのは、誰にとっても辛い仕事ですよ。でも、あなたはどちらかというとチョンボ気味の人だから(笑)、毎朝起きたら「今日は絶対にチョンボはしないぞ」と自分に誓うのを習慣にするぐらいで、ちょうどいいんじゃあない? どんな商品でも、世界一品質に厳しい日本で受け入れられれば、世界最強のものができるわけでしょう? あなたは「世界を変えるぞ」と意気込んでいるのだから、まずは「日本を変える」というところから頑張ってくださいよ。

(提供:プラネットウェイ)

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