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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第35回

「スク水PV」出現のなぜ 日本のネット音楽が向かう先

2010年09月11日 12時00分更新

文● 四本淑三

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溶けこんでいないうちから努力をするのが面白い

―― 僕はニコニコ動画を見て、最初にこのシーンの存在を知ったときは、いずれ皆がこういうことを始めるんだろうと思ってました。

キャプミラ 僕もそう思っていたんですが、すっかり忘れていましたね。

―― なんで今まで忘れてたんですか。

キャプミラ 最初はDAWを覚えるリハビリのつもりでやっていたんですが、ボーカロイドのムーブメント自体が楽しくて。そうこうしているうちに2年。あっと言う間に。

―― 竜宮城ですね。

キャプミラ 本当に竜宮城ですよ。初音ミクは乙姫様ですよ。

―― それで玉手箱を開けると、煙と共に300年の時間が……。ってヤマハから玉手箱ももらってないですよね?

キャプミラ ははははは。

―― ボーカロイドの世界はなんだかんだ言って安定しているし、敷居は低いし、入れば気持ちがいい。言い方を変えると、ボーカロイドやニコニコ動画にスポイルされているところもあるんじゃないですか?

キャプミラ そこが難しいところで、聴いている層は拡大している。市場も大きくなっているわけですよね? だからずっと中にいたとしても、世の中を飲み込んで逆転することも有り得るんじゃないか。そういう気もしています。

―― そうなるには、まだ一般市場との差がありすぎますよね。例えば、この3年間でボーカロイドは技術的に進歩しなかったけど、使う側と聴く側は進歩したんですよ。いろんな制約の中でニュアンスを伝えようと努力したり、そうやって抽象化された情報を聴き取る感覚が育てられてきた。

リスナーによるラジオメディアも生まれた

キャプミラ ああ、確かにそうですよね。

―― それを「ボカロ耳」って言うけど、そういう特殊スキルで成り立っている市場で、そのままでは溶け込むのは難しい。このギャップを埋めるには、分かりやすく人が出ていくしかないと思っているんですけど。

キャプミラ 僕も最終的には溶け込まないと意味はないと思うんです。市場が拡大していくうちに勝手に溶けこむとは思うんですけど、それにはまだ何年もかかかるかも知れないし。まだ溶けこんでいないうちから、溶けこむ努力をするのは面白いじゃないですか。そうやって、もがきたいんですね。

―― 涸れ井戸でバタ足ですな。そういえば今度「nau」っていう、ごく当たり前のインディーロックを売っている配信サイトで、ボーカロイドのアルバムを売るんですよね?(関連記事

キャプミラ アルバム「目隠しのステップ」を配信する予定です。すでにイベントなんかではCDとして売っているアルバムですけど、配信版には僕の全曲解説が付いてます。ボーカロイドの曲を自分で歌ったり、インディーロックのサイトにボーカロイドを乗せたり、とにかくかき混ぜていきたいんですよ。

nau

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