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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第35回

ガラパゴス化が進む日本のウェブ

2008年09月23日 10時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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欧米の新聞サイトは「グーグル化」する


ウォールストリート・ジャーナル
15日のウォールストリート・ジャーナル。オンラインの有料購読者数は100万人を超えていたが、一部無料化に踏み切った

 先週の月曜の朝(日本時間の夜)、リーマン・ブラザーズ破産のニュースが世界を揺るがした。この日ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のウェブサイトにアクセスした世界のビジネスマンは、もう一つの事件に気付いただろう。それまで有料だったWSJのサイトが、一部無料になっていたのだ。

 主なニュースはほとんど無料で読めるが、金融業界のテクニカルな情報などに限って有料購読者のみが読めることを示す、鍵のマークがついている。これは昨年、WSJの親会社ダウ・ジョーンズを買収したニューズ・コーポレーションのCEO(最高経営責任者)ルパート・マードックの、アクセスを増やしてニューヨーク・タイムズ(NYT)に追いつくための戦略だ。有料サイトでは、検索エンジンからリンクされないからだ。

 そのNYTも昨年、一部有料だった過去の記事やコラムを全面無料化し、ブログを設けるなど刷新した。最近できたTimes Topics は、アルファベット順に関連記事をリストアップした、一種のオンライン百科事典だ。

 たとえば「Lehman Brothers」をGoogle(英語版)で検索すると、Wikipediaの次にNYT Topicsが出てくる。Wikipediaのような匿名の記事ではなくNYTの記事なので、信頼性が高い。新聞サイトも、購読料モデルから検索に最適化してアクセスを稼ぐ方向に転換し、グーグル化しているのだ。



パーマリンクさえない日本のニュースサイト


 日本でも新聞社は、本紙の広告収入の落ち込みをウェブで補おうと苦闘している。産経はMSNと組み、他方MSNのサイトに入っていた毎日は「毎日.jp」になった。コメント欄を作ったりしてウェブに適応しようとしているが、いまだに新聞記事の全文が読めず、早ければ数日で記事が消えてしまう。一つのファイルにパーマリンクを張ることは、ウェブの基本である。これがないと、ブログも検索エンジンも十分機能しない。

 asahi.comの編集委員に「ウェブに対応するにはどうすればいいか」と質問されたので、「まず全文をウェブに出してパーマリンクを張ってください」といったら「それは私も問題だと思っているのだが、有料データベースの営業の要請で……」という。しかしasahi.comのリンクが切れたら、読者は月額3150円+記事1本に84円も払って有料データベースを読むより、検索エンジンでほかのメディアの同じニュースを探すだろう。

 しかも奇妙なのは、ほかの国のニュースサイトにはみられない「全文を出さずパーマリンクなし」という仕様が、日本のすべての新聞・テレビ・通信社のサイトで例外なく採用されていることだ。その編集委員は「新聞協会で申し合わせたわけではないが、暗黙の談合みたいなものだ」という。競争をきらう風土によって、日本のウェブはいびつなガラパゴス化した進化を遂げているのである。

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