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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第139回

電力産業は「第二のブロードバンド」になるか

2011年04月21日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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原発事故で注目される「発送電分離」

 福島第一原発の事故をきっかけに、電力網の見直しが始まっている。当面の問題は、最大数兆円ともいわれる損害賠償に東電が耐えられるかという問題で、これについては廃炉と賠償を行なう「清算会社」を分離する案が有力だ。それと一緒に出てきたのが発電と送電の分離である。これは電力会社の送電網を別会社にして、電力会社も他の企業も同じ条件で使わせて競争を促進しようというものだ。

 これは1980年代に始まった通信の規制改革とよく似ている。日本でも中曽根内閣のとき、第二次臨時行政調査会が日本電信電話公社の分割・民営化を提言したが、労使の強力な政治力で臨調答申の実施を阻止し、民営化は受け入れたが分割は拒否した。その後もNTTの経営形態問題は何度も蒸し返され、1997年には持株会社方式で再編されたが、資本関係は一体のままだった。

 NTTは電話網をデジタル化するISDN(統合デジタル通信網)を進め、インターネットを拒否したため、日本のインターネットの普及は遅れた。しかし1997年の電気通信事業法の改正でアクセス系の開放が義務づけられ、ここにソフトバンクなどの新しい通信事業者が参入したため、日本はブロードバンドで一挙に世界の最先進国になった。

 これに対して電力の場合は、1990年代から経産省が電力を自由化し、IPP(独立系発電事業者)と呼ばれる電力卸し売り業者が生まれ、電力を売買する「日本卸電力取引所」も設立されたが、電力会社の抵抗で発送電の分離は実現しなかった。このため規模が圧倒的に違う電力会社とIPPとの競争が起こらず、こうした売電の送電全体に占めるシェアは1%程度しかない。

 今回の事故はこうした卸し売り機能を生かすチャンスだったが、震災のあと日本卸電力取引所の取引は停止している。送電網を握る東電の電力網が混乱して、卸し売り電力の受付に対応できないためだ。電力会社が送電も管理する一元的なネットワークの弱点が露呈したともいえよう。

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