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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第142回

アナログ放送終了はテレビの終わりの始まり

2011年07月21日 18時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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テレビは死なないが……

 7月24日、アナログ放送が(東北3県を除いて)止まる。これだけ大規模な公共的サービスが止まるのは、日本で初めてだ。総務省の発表では、まだ地上デジタル放送に対応していない家庭は29万世帯だというが、実態はとてもそんなものではすまない。テレビがデジタルに対応していても、アンテナが対応していない家庭が多いからだ。特に集合住宅の対応が遅れており、未対応の家庭は100万世帯を超えるだろう。

 全国の家庭にあるテレビは1億3000万台程度と推定されるが、デジタル放送推進協会の調べでは、デジタル対応テレビは8000万台未満だ。これにデジタルチューナー内蔵録画機などを合算して1億2200万台という数字を出しているが、録画機の大部分はデジタルテレビとともに使われているので、両方を足すのはおかしい。つまり5000万台近いテレビがデジタル対応していないと推定される。

 デジタル対応していないテレビの多くは、個室にある小型のテレビで、若者が見ていることが多い。これはアナログ放送が終わると「地デジ化」するのではなく、粗大ゴミになるだろう。つまりアナログ+デジタルを合計したテレビの台数は24日が史上最大で、そのあとは大きく減ることになる。NHKは「受信料の1割減」を想定している。

 しかしテレビは簡単には死なない。これから高齢化が進むと、高齢者のテレビを見る時間は長くなるだろう。日本人の平均テレビ視聴時間は3時間30分で、ここ10年ほどほとんど変わっていないが、視聴者の高齢化が進んでおり、中央値は50歳を超えている。若者はテレビを見なくなり、携帯端末で短いビデオクリップやゲームを楽しんでいる。

 他方で、民放の番組は瞬間的な視聴率を極大化してコストを削減することに特化している。ドラマのように長時間見る番組が減り、途中でチャンネルを合わせても見られるクイズやバラエティが増えた。デジタル化投資のおかげで制作費が半減されたことも、こうした傾向の原因だ。かつては制作プロダクションの番組予算を削減していたが、最近は日本テレビのように正社員の給与を下げる局も出てきた。

 これは経営としては当然である。テレビの台数が大幅に減るということは、広告単価も減る。高齢化のおかげで激減することはないが、テレビはゆっくり衰退してゆくだろう。必要なのは成長を求めることではなく、コストを削減し、今までのもうけを食いつぶす前に撤退することだ。

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