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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第136回

拝啓 NHK会長様

2011年03月02日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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地デジはNHKにとっては無意味だった

拝啓 松本正之様

 私は1993年までNHKの報道局に勤務していた者です。あなたがテレビ番組のインターネット同時配信を検討するとの報道を見て、お手紙を書こうと思い立ちました。あなたはおそらくテレビ業界の内情はほとんどご存じないと思いますので、地デジがなぜ今のようにインターネットに取り残されたのか、簡単にご説明したいと思います。

 NHKがお手本とするイギリスのBBCは、2007年からすべての番組をネット同時配信するサービス「iPlayer」をスタートし、月間1億5000万回も再生される欧州一の人気サイトです。最初からNHKもこういうサービスを実施していれば、そもそも地デジは必要なかったはずです。まるで7年がかりで建設した鉄道が完成すると同時に、終点まで飛ぶジェット機の空港ができるようなものです。なぜNHKは今ごろまで、ネット同時配信をしなかったのでしょうか?

 私は地デジの実施が決まった1998年に、日本経済新聞で「地デジは電波の浪費だ。インターネットでやるべきだ」と提案しました。これを読んだNHKの放送技術研究所の次長から職員研修の講師として招かれ、私が「日本はIPベースでやるべきだ」というと、所長(のちの技師長)以下すべての技術職員が賛成してくれました。その後、企画総務室にも何度も呼ばれて提案を説明しました。そのころNHKは、まだ私の提案を聞く耳をもっていたのです。

 しかし計画が実施段階に入ると私の話を聞かなくなり、私の出るシンポジウムにはNHK職員も出席を拒否するようになりました。元同僚が個人的にコンタクトしてきて「地デジは経営の重荷だ。何とか避けられないか」という相談も受けましたが、結局2003年に予定通り実施されました。

 衛星やインターネットを使えば200億円以下でできたデジタル化に1兆円以上の経費を投じたのは、衛星放送やインターネットによって中抜きされ、「炭焼き小屋」になることを恐れる地方民放が反対したからです。彼らの私的な既得権を守るために3000億円以上の税金が投入され、1万局以上の中継局をすべて建て直す壮大な回り道が行なわれたのです。NHKにとっては、地デジは5000億円の浪費でした。

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