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池田信夫の「サイバーリバタリアン」第138回

原発事故で迷走する政府の情報管理

2011年03月30日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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総指揮官が前線に乗り込んでどうするのか

 東日本大震災は史上空前の大災害になったが、いまだに進行中なのが福島第一原発の事故だ。これは大津波を想定していなかった設計の甘さもさることながら、事故が起こってからの東京電力や政府の対応があまりにもちぐはぐなことが批判を浴びている。

 政府の資料によれば、1号機から3号機までの「電源喪失」という緊急事態を東京電力が通報したのは、3月11日の15時42分である。緊急冷却装置(ECCS)が動かず、バックアップ電源も津波をかぶってすべて止まったため、原子炉内の温度と圧力は上昇し始めた。炉内の圧力を逃がすベント(排気)を行なわないと危険だった。

 ところが1号機のベントを開始したのは12日の14時30分と、事故発生から23時間後である。その直後の15時36分には1号機で水素爆発が起き、建屋が吹っ飛んだ。これによって排気された水蒸気が外気にさらされ、汚染が広がった。さらに炉内を冷却するために海水を入れたのは、12日の20時20分である。この意思決定が早ければ炉内が冷却され、安定したかもしれない。

 こうした作業の遅れの一つの原因は、12日の朝6時に菅首相がヘリコプターで福島第一原発を視察したことだ。枝野官房長官の説明によれば、12日未明の1時30分には政府は「ベントすべきだ」と伝えていたが、2時30分に首相が視察に行くと連絡した。その後3時に東電から「ベントする」と連絡があったが、実際に開始したのは首相が帰ったあとの9時4分だったという。これは首相の視察中に不慮の事故が起こることを恐れてベントを延期したと考えるのが自然だろう。

 そもそも首相が事故現場に乗り込むというのは、常軌を逸した行動である。首相は災害対応の総指揮官なのだから、万が一の事故があったら総崩れになる。彼は国会で「第一発電所長に面会したのは有益だった」と答弁しているが、首相が末端の発電所長に命令する立場にあると思っていたのだろうか。非常時の指揮命令系統を理解しないで、総指揮官が前線で騒ぎ回ったら混乱するだけだ。

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