ネット放送の妙はマネタイズではなく「モノタイズ」
―― 今はNKHという放送団体を作っています。それはもう個人でやっていくことには満足したということなんですか?
伊予柑 いや、オレ個人でやりたいことはまだ沢山あるんですけど。
―― 「個人は満足したから次のステップ」というわけではないんですね。個人で出来る可能性はまだ感じますか?
伊予柑 まだありますね、いずれ行き詰まるとは思いますけど。行き詰まったからNKHをやっているという感じではないかな。
―― ひとりでやることに限界を感じたのかと思ってました。
伊予柑 うーん。設立は「泊めてください」とか「ドイツ配信」などの個人企画を積極的に始めるより前なんです。複数人じゃないとできない面白さを作るためにNKHってグループを作った感じです。
―― NKHには目標はあるんですか?
伊予柑 短期の目標は、テレビと同じくらいの番組制作をできるようになることとか、ネット放送での「機材」のスタンダードを見つけること。それと、ネットで作った面白いコンテンツをテキスト化して、他社さんに配信できる執筆体制を整えるとか……。
―― では逆に、まだ足りないものって何でしょう。
伊予柑 ちょっと機材が足りなくなってきたかなー。
―― 見た感じ、すでに十分揃ってそうですけど……まだ足りませんか。
伊予柑 最近ニコ動の運営の方とからんだ放送もあったり、視聴者から私たちの放送に対して求められる品質が予想以上に高くなったんですね。努力や練習で解決する部分も大きいんですが、機材がないと解決出来ない問題も多かったり。
―― でも、お高いんでしょ?
伊予柑 安い機材は買いそろえたんで、高い機材が……(笑)。ということで、マネタイズではなく「モノタイズ」っていうことをやりたいと思ってます。私たちが何か提供する見返りとして、機材をいただけませんか? という。
―― 提供出来るものというのは?
伊予柑 人、モノ、イベントの魅力をネット(ユーザー)向けにアレンジして届けられることです。画像と写真だけでは伝えられない部分は案外大きいです。ネットの人たちが本当に見たいのはこういう部分で、こんな魅せ方をすればユーザーに届きますよ、という。ネットユーザーに対してのプロモーションのお手伝いが出来ます。
―― なるほど。その見返りとしてお金じゃなくて機材が欲しいと。
伊予柑 「私たちが何をしたいか」っていうと、面白いことをしたい。だから、「あなたたちの面白いものや、もしくは私たちがすることを面白くするために必要な機材をくれませんか」というものです。
―― これまでに、その「モノタイズ」が成功した事例ってあるんですか?
伊予柑 ライブコンテンツの祖である、ピアキャスの永井先生※が視聴者にPS3をもらってたりしましたよね。
※ ピアキャスの永井先生 : ピアキャスは「PeerCast」の略。視聴者のパソコンをハブとして、樹状に配信関係がつながっていくツリー構造を採用した、P2P形式のライブ動画配信サービス。永井先生はその使い方を分かりやすく説明したことでネットで有名になった永井浩二氏のこと。
―― ありましたね。「PS3もらったからゲーム実況放送をするとよー」って。
伊予柑 そうそう! 永井先生ってすごくいい例だと思ってて、実際にモノをあげたくなるんですよね。もっと楽しい放送を見たいから。「4万円」は渡したくないけど、PS3ならあげたいって気持ちは僕も感じてたんです。それを組織でシステム化するとどうなるんだろう、って実験をしようと思ってます。