1つ1つの行動に敬意が払われたケータイ
チップチェイス氏が日本を拠点に人間行動に着目した研究をしている点もまた、海外から洗練されたケータイカルチャーを持つ国だと認識されていることがうかがえる。NM706iは、キーワードは「都市への理解」と「女性」がキーワードとなった。
「日本では極限までの個人化が進んだ都市生活を形成しています。朝の通勤風景を見ていても、ベトナム・ホーチミンシティの通勤と、日本の発達した都市交通を利用した過密な通勤風景では全く違い、またそのシーンでの情報端末の使われ方も違います」(チップチェイス氏)
日本の通勤風景を見ると、電車では座れない人がほとんどで、立っている人はつり革や手すりにつかまりながら、片手で新聞や本を読んだりケータイを触ったりしている人が多い。その場合、両手でしか使えない端末は、いくら画面が大きくて入力がしやすいとしても、なかなかうまく使うことができない。
また端末をしまう場所にしても、鞄の中なのか、ポケットがいいのか。女性の多くは鞄の中にケータイをしまっているが、電車の中ではジャケットのポケットに入るコンパクトなサイズならば、片手しか使えない状態でも取り出しやすい。
このように1つの生活シーンを考えてみても、端末のデザインに対するアイデアが出てくる。チップチェイス氏は、シャドウイングという、特定の人物の1日中の行動追跡を行なう手法を使って、これらの都市生活におけるケータイの使われ方を観察している。
「朝起きてから夜寝るまでのあらゆる状況を対象として観察します。あらゆる行動に敬意を払い、人が行なうすべてのことに興味を持って取り組む必要があります。どこで観察をやめればいいのか、という問題もありますが……」(チップチェイス氏)
この連載の記事
-
第100回
スマホ
ケータイの“ミクロな魅力”とは、なんだったのか? -
第99回
スマホ
フォロワー計32万人の2人が語る2009年のiPhoneとメディア -
第98回
スマホ
写真で振り返るケータイ10のミクロなシーン -
第97回
スマホ
ケータイが支える、マイクロ化と遍在化するメディア -
第96回
スマホ
ノマドワークのインフラをどう整えるか? -
第95回
スマホ
冬春モデル発表会で見えた、本当に欲しいケータイ -
第94回
スマホ
デザインから考える、ケータイのこれから -
第93回
スマホ
次の自動車社会とケータイとの関係 -
第92回
スマホ
モバイルアプリを実際に作るにあたっての考察 -
第91回
スマホ
楽しい使い方は現在模索中の「セカイカメラ」 -
第90回
スマホ
iPhoneと過ごしたNYとメキシコの旅でわかったこと - この連載の一覧へ