「廃道歩きは、トレッキングをするくらいの準備で楽しめる」
── 過去の記事を読むと“田代隧道”など、かなり危険なところにも行っていますよね。そういう体験をすると、過激な方向へチャレンジ精神が向きませんか?
平沼 そんなことはないですよ。廃道歩きは、そもそも誰もが気軽にできるものです。登山や釣りなら、技術や道具が必要になりますが、廃道なら普段着のままでテクテク入っていけるし、危なくなったらそこで引き返せばいい。トレッキングをするくらいの準備で、十分楽しめます。照明のない廃隧道に入るにときに、ライトが必要なくらいですか。
難しいレポートを見ると、“突破する”という意識が強いように見えますけど、廃道歩きは“探す”のがメインなんですよ。消えかけているモノを探して歩くという、静かな探求なんですよね。
── それでも、読者が過激さを求めるというのはありますか?
平沼 それはありますね。また、誰もネットに上げていない景色を自分が先に見たいという思いもあります。誰かがレポした場所よりは、崖があるから行けない、崩れているから行けない、というような険しい道に自然と目は行きますね。
廃道を歩くなら、グレーゾーンだと自覚するべき
── なお、たまに地図がぼかされている記事がありますが、クレームは結構多いのでしょうか?
平沼 やっていくうちに分かったんですけど、人が住んでいる場所の近くの廃道を取り上げるのは、やはり近隣の人がナーバスになります。暴走族のたまり場になったり、心霊スポットと言われるのは誰でも嫌ですからね。ただ、そこに道があったのは事実なので、僕はできるかぎり実名で紹介したい。不快だという声を頂いたら、地図を削除したりボカしたりします。
廃墟や廃線もそうですが、廃道も突き詰めていけば法律的にグレーゾーンの趣味といえます。だから、周囲に迷惑をかけないように、普段以上に心がけないといけません。とにかく事故に遭わない、ゴミを捨てない。その道路の管理者に迷惑を掛けないことです。
── 最後に。少し前に廃墟ブームが到来しましたが、その延長として廃道ブームが来たという感触はありますか?
平沼 ゆっくりと人気が集まっている感じはしますが、ブームというほど沸騰していないですね。昔は「廃墟と廃線は知っているけど、廃道って何それ」という感じでしたが、いくらか認知された感触です。“廃”関連共通の良さというのはあって、斜陽化したものに引かれる人は多いと思います。廃線にしろ廃道にしろ、同じような趣味は、今後もニッチな状態で残り続けると思います。
筆者紹介──古田雄介
建設現場と葬儀業を経てデジタル&サブカルライターに転身。デジタルと言いつつ、“古田雄介の週末アキバPick UP!”(ITmedia)など、足で稼ぐ記事が多い。当連載では、大好きなサイトの管理人さんに直接会える喜びを堪能しています。自ブログは“古田雄介のブログ”。
*次回は7月23日掲載予定
この連載の記事
-
最終回
トピックス
アンサイクロペディア“中の人”が語る、ユーモアの難しさ -
第99回
トピックス
マスコミが報じない“カルト”を記事に 「やや日刊カルト新聞」 -
第98回
トピックス
「もし森ガールが森へ入ったら」アサイさんの超地道な努力 -
第97回
トピックス
死刑は必要? 冷静に考えるためのWeb資料室「刑部」 -
第96回
トピックス
NTT研究者が“錯覚”サイトにかける純粋な感情 -
第95回
トピックス
ネットの「熱さ」、現代アートに――藤城嘘とカオス*ラウンジ -
第94回
トピックス
諸君!革命的美人ブロガー安全ちゃんに刮目せよ! -
第93回
トピックス
探検コムの「広く浅く」が深すぎる! -
第92回
トピックス
金髪ギャル語でニュートリノ、Shoさまが熱い! -
第91回
トピックス
「計画断水」知ってる? ネットで日本の昭和を振り返る -
第90回
トピックス
電子書籍を紙で売る! 「コトリコ」挑戦への道 - この連載の一覧へ