デバイスとデータにフォーカスした国産IoTプラットフォームの真打ち
モノのタイムラインを共有できる「さくらのIoT Platform」始動
2016年02月09日 06時00分更新
2月8日、さくらインターネットは「さくらのIoT Platform」を2016年度中に開始することを正式発表した。潔いほど自社サービスのアピールを排除し、数多くのパートナーとの共創を謳ったサービスには、ソラコムとは別の角度からIoTの課題を排除する姿勢が伺えた。
モノのタイムラインをシェアし、新しい価値につなげる
さくらのIoT Platformは文字通り通信環境とデータの保存、処理システムなどをオールインワンで提供するIoTプラットフォーム。さくら自身が通信モジュールを提供し、データを閉域網内のさくらのデータセンターに送信し、データの利用・保存を行なえるほか、インターネット上の外部サービスからAPI経由でデータ利用することも可能になっている。昨年末の自社イベントやソラコムのイベントでサービス概要が小出しにされてきたが、いよいよ正式発表に至った。
DMM.make AKIBAで行なわれた発表会の冒頭、さくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏はサービスの概要について説明した。
さくらのIoT Platformの発想の原点は、「ものがつぶやけばいいのに……」という会話。多くの人のつぶやきを解析し、API経由で新しい価値を生み出すTwitterと同じことをモノの世界でできないかというのがきっかけだ。「人間よりモノの方がインターネットに参加するようになってきた。その1つ1つのモノがタイムラインを持つ時代が到来し、それがシェアされることで新たなサービスが生まれてくるのではないか?」と田中氏は語る。
田中氏は、インダストリアル4.0の文脈で語られる工業分野の「狭義のIoT」にとどまらず、幅広い商業のシーンで利用されるであろう「広義のIoT」において、特にこの流れは加速すると指摘。コンシューマーに強いさくらとしては、オープン、シェア、ジョインをキーワードに生活者に新しい価値を提供できる広義のIoTに注力するという。「これまで気づかなかった『モノ・コト』の相関性や関係性を見出し、それを世界でシェアできるプラットフォームを目指す」。これがさくらのIoT Platformの目指す方向性だ。
具体的には「どこでも誰でも手軽にすぐに」をコンセプトに、まずは“脱スマホ”を掲げる。現在の広義のIoTはスマホがあることを前提としているため、スマホを持つ人間がいなければ、デバイスがつながらない。「逆説的に言えば、スマホや人間がいないところでもモノがつながらなければ、これからのIoTは拡がらない。ソラコムの登場でだいぶ敷居が低くなったが、通信モジュール自体がまだまだ高い」と田中氏は指摘する。これに対して、さくらのIoT PlatformではCerevoと共同で通信モジュールを開発し、安価にIoTを試せる環境を提供するという。
対応のモバイルキャリアに関しては先日提携を発表したソラコムのほか、ソフトバンクのMVNO事前協議に参加していることが明らかにされた。今後は利用用途にあわせて両者を選択できる予定となっている。
サービスのコンセプトとして大きいのは、通信やデータ保存、データの利用などIoTに必要な機能を垂直統合で提供するという点。現状、IoTの世界ではデバイス、ネットワーク、クラウドなどが別れて提供され、異なるバックグラウンドのエンジニアがチームを作って、サービスを開発しなければならない。これに対して、通信モジュールからデータルーター、APIゲートウェイまでを一気通貫で提供し、必要最低限な知識があれば使えるというのがさくらのIoT Platformの大きな価値になる。