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さくらの熱量チャレンジ ― 第5回

ディープラーニングの旗手が語る第4次産業革命

ABEJAが描くIoTとビッグデータ、AIが結びついた世界

2016年10月06日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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ディープラーニングの旗手として注目スタートアップであるABEJA(アベジャ)が、さくらのIoT Platformとの連携が2016年冬をめどにスタートする。インタビューの前半では、IoT、ビッグデータ、AIが結びついた世界についてABEJA代表取締役社長CEO兼CTOの岡田陽介さんに聞いた。(インタビュアー:TECH.ASCII.jp 大谷イビサ 以下、敬称略)

ABEJA代表取締役社長CEOの岡田陽介さん

億単位のABEJAへの投資は第4次産業革命への期待

大谷:ABEJAさんのビジネスに関しては、ASCII STARTUPでも記事を掲出させていただいていますので、今回は最近のアップデートと技術的な特徴に関して、お聞かせいただこうと思います。

ABEJA岡田:まずは資金調達が最近のアップデートですね。7月に産業革新機構とアーキタイプベンチャーズから5.3億円、インスパイアPNBパートナーズから2億円を調達させていただきました。

大谷:どういった期待があっての投資なんでしょうか?

ABEJA岡田:それぞれ出資の目的は違うと思うのですが、たとえば、産業革新機構は第4次産業革命に対する期待ですね。センサーデバイスがネットワークにつながり、クラウドにデータを上がり始めると、容易にビッグデータ化します。でも、このビッグデータ、今ですらマネジメントができていないのに、誰がどのようにこれを活用するんだっけ?という課題に行き着くんです。

大谷:確かに5年前にビッグデータという言葉を聞きかじった私からすると、確かにそれって誰がやるの?というのは、すごく納得できますね。

ABEJA岡田:われわれはそれを解決するのがディープラーニングだと思っていて、ディープラーニングによる解析を元に、アクチュエーターやロボットなどがリアル世界で動作するなどさまざまなモノが自動化されます。この現象があらゆる産業で起こるのが、第4次産業革命だと思っているんです。産業革新機構は日本の産業を革新するのが役割なので、そこらへんをわれわれといっしょにやっていくというのが、出資の目的だと理解しています。

もう1つインスパイアPNBパートナーズは、マレーシア最大手の政府系投資機関であるPermodalan Nasional Berhad (PNB)の100%子会社であるPNBアセット・マネジメント・ジャパンとインスパイアが合弁で設立したファンドです。そのため、いわゆるマレーシアを始めとしたASEAN市場への進出サポートも受けられますし、ASEANへの展開を期待し出資されたのだと考えます。実際に、ASEANではいま小売流通業が伸びていて、ショッピングセンターの建設が進んでいます。この伸びている市場に対して、ABEJAの短中期的な経営戦略でも、国内で推進するIoT、ビックデータ、AIを活用した小売流通業向けのサービス「ABEJA Platform for Retail」を、早期に展開することを掲げています。

大谷:なるほど。IoTとビッグデータ、AIをつないで、国内外で産業革新する役割が期待されているわけですね。

ABEJA岡田:経済産業省が新産業構造ビジョンとして描いている第4次産業革命も、まさにIoT、ビッグデータ、AIというフレームで引き起こすというシナリオです。今は、小売流通業を中心に展開していますが、製造業や運輸業、ホームIoTへの活用など、多分に横展開できる技術およびサービスだと思っています。

小売流通業からスタートした背景とグローバルでの戦い

大谷:ABEJAの評価されているところって、コア技術を持っているだけではなく、小売・流通向けのソリューションという目に見えるものがあるのではないかと思っているのですが、そもそもリテールから始めたのはなぜか?という話を改めて整理させてください。

ABEJA岡田:ABEJAは2012年9月に創業しているのですが、創業前に私がシリコンバレーに渡ってディープラーニングと出会ったことが起業の契機です。起業後、約2年間は、ディープラーニングでできること、できないことなどを、その分野の大学の教授陣と共に徹底的に研究・開発していました。

次にPoC(Proof of Concept)として、いろんな産業での適用を考えたのですが、当時はディープラーニングも、機械学習もわからない人がほとんどだったので、特定の産業に特化したソリューションを持ち込むしかなかったんです。その中で、小売の店舗内解析は、オンライン上ではすでにあったものの、リアル店舗ではまだなかった。かつ、小売はGDPの中で高い比率を占める大きな産業なので、ある程度の導入企業数も見込めるのではないかという仮説があり、PoCを回した結果として、小売・流通で勝負できるよねという結論になりました。

大谷:潜在的なデマンドありきたったんですね。

ABEJA岡田:本当はディープラーニングを活用しやすいのは、データの宝庫であるWebの世界なんですよ。とはいえ、ここはやりたくなかった。なぜなら技術をもってしても、GoogleやFacebookが潤沢な資金とともに後から参入してきた場合、すぐにキャッチアップされると思っていたので。だから、彼らが攻め込みにくいところ、持っていないリアルなデータに対して、どうアプローチするのか重視しましたね。

大谷:今の話のからみだと、岡田さんのインタビュー記事を読んでいて面白かったのは、機械学習の技術がOSSなどで出回っている中、「もはやアルゴリズムで勝負するのは難しい」という話があったこと。ここらへんは実感としてあるのですか?

ABEJA岡田:そうですね。「一部は終わった」という言い方が正しいんでしょうね。一部と言ったのは、高速化のアルゴリズムはまだまだ重要だから。ディープラーニングは学習と実行という2つのプロセスがあるのですが、学習だけでなく実行もGPUでしか動かないと、お金がかかりすぎるんです。そうすると、原価率が悪すぎて、ビジネスにならない。そこをアルゴリズム的に工夫していくというのは、すごく重要なポイントです。ポテンシャルはとても大きいと思います。

大谷:それは省リソースで速く動くアルゴリズムということですよね。

ABEJA岡田:それとある程度精度が担保されるということですね。たとえば、1%精度を上げるために、リソースを10倍増やせますか?という話。そこのビジネス上妥当なラインを見つけていくのが重要ということです。お客様は、ディープラーニングの解析結果の精度が98%と99%でサービス価格に100万円の違いあったら、安い方を選ぶので。そういったビジネス的な妥当性でアルゴリズムを選ぶのは、われわれが得意としているところですね。

「ビジネス的な妥当性でアルゴリズムを選ぶのは、われわれが得意としているところですね」(岡田さん)

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