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開発者の山本一成・下山晃の両氏に聞く

プロ棋士に連勝!将棋ソフト「Ponanza」はなぜここまで強いのか

2016年06月21日 17時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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 プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトのガチンコ対決――。

 かつては指し手が複雑なことから、コンピュータが勝つのは難しいと思われていたが、2016年4月・5月に行なわれた第1期 電王戦で、将棋ソフト「Ponanza」が山崎隆之叡王(八段)を打ち破った。

 一時期は準優勝が続いたことから「シルバーコレクター」とも揶揄されたPonanzaだが、ここ最近の強さは圧倒的だ。だが、その強さの裏に、さくらインターネットの計算資源による「機械学習」があったのはあまり知られていない。

 Ponanzaはなぜここまで強いのか。開発者の山本一成氏と下山晃氏、ならびにさくらインターネット クラウド開発室の須藤武文氏に聞いた。

開発者の山本一成氏と下山晃氏

Ponanzaはなぜ強い?

 プロ棋士とコンピュータの対局は以前より「電王戦」として行なわれてきた。2016年春に開催された「第1期 電王戦」はその装いを新たにしたものだ。コンピュータ同士で対決する大会は、春の「世界コンピュータ将棋選手権」と秋の「将棋電王トーナメント」の2種類があるが、そのうち秋の大会を制した将棋ソフトと、2015年6月に新設された「叡王戦」を制したプロ棋士が、コンピュータと人間を代表して覇を競う。

 山崎叡王とPonanzaの対局となった第1期 電王戦。4月9日・10日、関山中尊寺で開催された第1局は85手、5月21日・22日、比叡山延暦寺で開催された第2局は118手で山崎叡王が投了。Ponanzaの連勝で幕を閉じた。

 Ponanzaは、2013年に初めてプロ棋士に“平手”で勝って以降、なんとプロ棋士相手に負けなしの5連勝中だ。2015年には初めて春秋両方のコンピュータ将棋大会を制覇し、2016年の春も勝って破竹の3連覇。さまざまな記録を打ち立てており、その強さは折り紙つきだ。

 とはいえ、Ponanzaも最初から強かったわけではない。

 東大将棋部に在籍していた山本氏が「苦手なコンピュータを得意な将棋で克服しよう」と在学中に開発を始めたPonanzaだが、当初は山本氏が6枚落ちで指しても勝てるほど弱かったという。2009年に初出場した世界コンピュータ将棋選手権では、一次予選で敗退している。

山本氏

 どうすれば強くなれる――?

 山本氏が目をつけたのが、コンピュータ将棋に革命を起こした将棋プログラム「Bonanza」だった。「一般的に将棋プログラムは、探索(先の指し手を読む)と評価(その手が良いか悪いか判断する)で成り立っています。これまでは、自然な流れを重視して最適な指し手を選ぶ“選択探索”が主流だったのが、Bonanzaはある局面で考え得るすべての指し手を評価する“全幅探索”を採用していました。元々はチェスで生まれた方法なんですけど、それをより複雑な将棋に適用したんですね。インターネットで入手した約6万局の棋譜を読み込み、開発者が決めたパラメータに従うのではなく、自ら学習してパラメータを生成していました」(山本氏)

 画期的だった。山本氏はその考え方を自身が開発中のプログラムに採り入れ、「Bonanza」にあやかって「Ponanza」と名付けた。

 そのおかげもあって、Ponanzaは次第に力をつけていった。目に見える成果となったのが、2013年秋の第1回 将棋電王トーナメント。並み居る将棋ソフトを押しのけて、電脳将棋で初めて頂点に立った。この大会を機に、下山氏もPonanza開発に加わるようになる。

 ところが、翌2014年春の世界コンピュータ将棋選手権は2位。「ひどい逆転負け」(山本氏)で、かつ、優勝のあとの2位ということで悔しさもひとしおだったという。さくらインターネットと出会ったのは、まさにそんな時だった。きっかけは、山本氏がつぶやいた1通のツイートだった。

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