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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第15回

本当はいらない「個人情報保護法」

2008年05月06日 16時30分更新

文● 池田信夫(経済学者)

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緊急連絡名簿から電話番号が消えた


 2004年に個人情報保護法が成立したとき、強い批判を受けて国会では「全面施行後3年をめどに必要な措置を講じる」という付帯決議がついた。しかし2005年の全面施行から3年たった今年4月、政府は「過剰反応」を防ぐ対策を新たに盛り込んだ「個人情報の保護に関する基本方針」の変更を閣議決定したが、法改正は見送った。

 これは個人情報保護法が社会に及ぼしている悪影響を軽視していると言わざるをえない。学校や町内会の災害時の緊急連絡名簿から電話番号が削除されて役に立たなくなったとか、病院の病室から名札がなくなって、どこに入院しているかわからなくなった(誤認による殺人事件まで起きた)といった身近な問題は、多くの人が経験しているだろう。



すべての企業が「違法状態」


 さらに企業では、個人情報保護のために厳重な情報管理が敷かれ、すべての端末からHDDを取り外し、USBメモリーなどの外部記憶装置も禁止するなどの措置がとられるようになった。それでも個人情報のコピーを完全に防ぐことは不可能だ。ある弁護士によれば「私の顧客になっている企業は、すべて違法状態だ。生命保険のように突然、運用がきびしくなったら全企業がやられる」と心配していた。

 この原因は、個人情報保護法の第23条に「あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならない」という条項(第三者提供)があるため、情報(個人データを含まない情報というのはまずない)を外部に提供することがすべて違法になるからだ。法律を厳密に適用すれば、検索エンジンもインターネットのキャッシングサービスも違法である。

 逆に言うと、すべての企業が個人情報保護法違反なので、特定の企業を摘発することができない。これは日本よりきびしいプライバシー保護指令を実施している欧州でも起こっていることだ。つまり情報社会の実態に合わない過剰規制を実施したことで、法律が空文化するという皮肉な結果になっているのである。

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