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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第10回

その1:「人類の敵らしいもの」との対話

機動戦士ガンダム00と、2つの「対話」 【前編】

2010年12月04日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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「分からない」ことへの恐怖が敵になる

水島 現実世界でも、大抵の争いや暴動というのは、相手が分からない、理解できないそんな不安が恐怖につながり、起っていますよね。

 たとえばオイルショックのとき、トイレットペーパーがなくなるかもしれないという噂が流れ、スーパーに人が殺到してパニックが起きた。石油が高騰しているということが、紙がなくなるという話に繋がったんです。あれって、なくなるかもしれないという不安から、噂が広がったんですよね。

 知らない、分からない、そんな不安による恐怖から始まる対立って、本当によく起こるものなんだと思います。各地で起こっている紛争も、その争いによって利益を得る誰かが情報操作して、「相手が敵である」という情報を与えていたりしますよね。

―― 恐怖と噂というのはリンクしやすい?

水島 そう思います。根本に不安があるからこそ、誰かが言っていることを、そのときの心理状態で、「そうなのか!」と、鵜呑みにしてしまう。自分の頭の中で生まれた不安の種が、情報によってどんどん大きくなって、ちょっとでも不安を感じている人間に情報を伝えたら、あっという間に伝播する。

 巨大な敵とかでなくても、すぐ隣にいる相手だとしても、コミュニケーションができないことってありますよね。アイツはよく分からない。俺のことを悪く思っているんじゃないか?

 そう思い始めたら、相手に関するどんな情報が入っても、脳内で不安をふくらませて、「やはりアイツは敵だ」となってしまう。

 結局、壁というのは自分が恐怖で勝手に作っていたりする。本当は、相手と直接、話をすれば誤解だって分かるかもしれないのに。そういう思いもあって、相手が分からないために起こる対立というのを、作品の中に置いておきたいと思ったんですね。

―― 作品の中で、どのように「分かり合うための対話」を描きましたか。

水島 分かり合えない象徴としてエルスを出したわけですが、実はエルスも人類に対してコミュニケーションをしようとしていた、というふうに描いています。

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