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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」第47回

【後編】オレンジ代表 井野元英二氏インタビュー

『宝石の国』のヒットは幸運だが、それは技術と訓練と人の出会いの積み重ね

2018年06月03日 12時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●村山剛史/アスキー編集部

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© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

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花形だったゲームからアニメに井野元氏が鞍替えした納得の理由

© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

 フルCGアニメ『宝石の国』を手がけたCG制作会社 オレンジ。代表の井野元英二氏の目標は、“不気味の谷”を越えた先、宝石や草原や海といった自然物が持つ美しさを、CGの利点を活かして存分に表現することにあった。

 井野元氏は、日本のCG黎明期に個人でCGアニメーション制作を始めた希有なクリエイターでもある。

 CG表現に魅了され、数百万円の機材を「崖から飛び降りる思いで」購入した氏の、オレンジを設立するまでの道のりと、日本のアニメーション制作現場が持つ魅力について伺った。

井野元英二氏:プロフィール

オレンジ代表/CGディレクターの井野元英二氏

 1970年生まれ。CGアニメーション制作会社「有限会社オレンジ」代表。マンガ家アシスタント、イラストレーターを経てCGの世界へ。ゲームムービーなどを手がけた後、TVアニメ『ゾイド -ZOIDS-』(1999年)への参加を皮切りに『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002年)をはじめ多数のアニメCGパートを担当。2005年にオレンジを設立。同社CGパートの代表作として『創聖のアクエリオン』(2005年)、『マクロスF』(2008年)、『コードギアス 亡国のアキト』(2012年)、『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』(2013年)などがある。手描きの作画と違和感なく共存するCG表現に定評があるが、初元請け作品のTVアニメ『宝石の国』(2017年)ではフルCGアニメに挑戦、大好評を得た。現在もCGディレクターとして第一線で活躍中。

TVアニメ『宝石の国』ストーリー

 宝石たちの中で最年少のフォスフォフィライトは、硬度三半とひときわ脆く、靭性も弱くて戦闘に向かない。また、他の仕事の適性もない。そのくせ口だけは一丁前という、まさに正真正銘の落ちこぼれだった。そんなフォスに、三百歳を目前にしてやっと初めての仕事が与えられる。それは、博物誌編纂という仕事。地味な仕事に不満なフォスだったが、彼はその目で世界を見、様々なことを経験する中で、しだいに大きなうねりに飲み込まれてゆく。そしてついに、彼は望まぬかたちで、欲しかった“強さ”を手にするのだが──。

© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

スタッフ
原作:市川春子「宝石の国」(講談社『アフタヌーン』連載)、監督:京極尚彦、シリーズ構成:大野敏哉、キャラクターデザイン:西田亜沙子、CGチーフディレクター:井野元英二、コンセプトアート:西川洋一、色彩設計:三笠 修、撮影監督:藤田賢治、編集:今井大介、音楽:藤澤慶昌、音響監督:長崎行男、制作:オレンジ

キャスト
黒沢ともよ/小松未可子/茅野愛衣/佐倉綾音/田村睦心/早見沙織/内山夕実/高垣彩陽/内田真礼/伊藤かな恵/小澤亜李/種﨑敦美/茜屋日海夏/広橋涼/皆川純子/能登麻美子/釘宮理恵/中田譲治/生天目仁美/桑島法子/原田彩楓/上田麗奈/伊瀬茉莉也/朴璐美/M・A・O/斎藤千和/三瓶由布子

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© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

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宝石たちの服はすべて●だった!
髪・草・波……質感の表現はCGの得意分野

―― 前編では、視聴者が見慣れないCGをいかに違和感なく見せるかというお話が中心でしたが、後編はCGならではの長所を活かした表現についてお伺いできればと思います。『宝石の国』では、フォスフォフィライトたちの宝石らしさが印象的で、これまでのアニメにはない新しさだと思いました。

井野元 そのあたりがCGならではの領域になったと思います。たとえば髪の毛も、透明感を出したり、周りの風景によって見え方が変わったり、あとは落ち影、専門用語でコースティクスと言いますが、宝石の髪の毛を光が通過して肩に落ちるゆらゆらですね。そういった質感を宝石ごとに作りました。髪の毛の質感は非常にこだわったところです。

―― 砕けるときに「顔が割れる」という表現も驚きました。けれども、割れた断面がキラキラして、いかにも宝石が砕けている様子に見えるので、嫌な印象にならないですね。

井野元 宝石なので、砕けるときも美しく砕けたほうがいいかなと。割れたときの断面の質感も、京極(尚彦)監督も含めてこだわりがあります。割れた瞬間から作画に切り替わるときもあるのですが、作画の断面をそのまま出すのではなくて、撮影班で処理を加えてもらったり、CG素材を1枚1枚かけていくなどして、宝石の断面らしく作っています。

―― 作画では難しい質感の表現をCGで補うことができるのですね。

井野元 そうですね。CGの動きって、工夫を凝らして細かく調整してやると、とても自然に見えるんです。CGも、見せる物によっては、服のシワや顔の影表現など、作画になかなか追いつけない領域があるんですけれども。

 逆に、髪の毛の質感などCGならではの領域もあると思います。先にお話ししたキャラクターの動きの芝居とか、背景に関しても草原の草を揺らしたり、海の波打ち際を表現することができました。これをもし作画や美術でやるとすごく大変なんです。草を一本一本揺らすことで、風の空気感を感じられるようになったと思います。

 あとは、これは本当に気づく人少ないと思うんですけれど――じつは宝石たちがいるあの世界は、すべて自然物で構成されているので、たとえばビニール素材などはないわけです。ですから、宝石たちが着ている服の素材は、麻でできているんですね。その麻の感じをどう見せようかなと考えて、アップのカットに入れてみました。よくよく見ると、宝石たちの服に、麻の模様が入っています

―― そこは気がつきませんでした!

井野元 TV放送時には解像度が落ちているから当然わからないです。作っている私たちも、一見ではほとんどわからない。けれど、Blu-rayを買ってくださった方で……気づいた人がいらっしゃったんですよ。(作り込んで)よかったなぁと思いました(笑)

よく見ると服に麻の模様が入っている © 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

―― Blu-rayで見るとさらにこだわりがわかるのですね。なぜ、そこまで凝って作られたのでしょうか?

井野元 CGでしかやれないことを足すことによって、トータル的に、作画と遜色ない魅力を出して、フルCGってじつはこんなにいいものなんだよ、とオレンジとして提示できたとしたらいいなという思いがありました。

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