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「WWDC 2008」総括(その1)

林信行が語る「iPhone 3Gに触ってみた」

2008年06月18日 11時00分更新

文● トレンド編集部、語り●林信行

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企業向け対応で見せた、アップルの本気


 ちょっと、質問の内容からずれてしまったので話を戻しましょう。米国では199ドルで発売されるというiPhoneですが、ドイツなど欧州では1ユーロで発売する国もあるようです。これって日本で言えば「100円ケータイ」ですよね。

 だから、買おうと思えば女子高生だってお小遣いで買えてしまう。今度の価格低下で、iPhoneは一気に顧客層を広げると思うんですよ。


── 基調講演では、企業向けにもiPhoneをアピールしていましたよね。

 ええ。大手企業でも、これまでは情報システムのVPNにiPhoneが対応していなかったり、セキュリティーポリシーが合わなかったりで、iPhoneが使えずにBlackberryにしていたところが、今度からはiPhoneで同じことができるようになる。

 しかも、「FORTUNE 500」に含まれる135社ほどがiPhone 2.0をテスト利用していて、絶賛しているというのもスゴい。最初はiPhoneの企業対応はもっと消極的だと思っていました。会社でiPhoneを使いたいけど、VPNなどで関係でつなぐことができなかった人がとりあえずつながるようになる──。その程度だと見ていましたが、まさかアップルがあそこまで本腰をいれてくるとは思っていませんでした。

FORTUNE 500は、雑誌FOTUNEが行なっている米企業500社番付のこと。7月初めにリリース予定のiPhone 2.0では、Microsoft Exchangeをサポートし、会社のメールやカレンダー情報などをiPhoneに自動送信してくれるようになる

 もっとも、iPhoneが企業ユースで広まるのは、あくまでも米国での話で、日本はそのあたりが、SIer(システムインテグレーター)に外注した古くさくて、柔軟性がなくメンテナンスコストばかりが高くつく古いシステムで縛られているので、なかなか企業ユーザーがiPhoneに移行するというのは難しいかもしれません。

 先日、ある日本のエンタープライズ向けソリューション企業の創立者、いわゆる業界の重鎮の方に話を聞きましたが、やはり日本では社長の人に直接話さないと、なかなか仕組みを変えていくことができないそうです。個人的にはクールなiPhoneが、日本の大企業の社長さんの「おめがね」にかなって、そこを中心に、日本の企業情報システムにも、一石を投じてくれたらいいな、などと考えています。



まだまだユーザーの裾野が広がる?


── 基調講演では、ゲームも数多く紹介していました。ゲーム好きも取り込めるかもしれません。

 そうですね。何らかのキラーアプリケーションの登場によって、これまでまったく期待していなかったユーザー層も増えるかもしれません。

 GPSのトラッキング機能に惹かれる人も多いだろうし、カートリッジ不要で携帯型ゲーム機より圧倒的に安い価格で本格的ゲームが楽しめることなども、新しい顧客層の掘り起こしに利いてくるんじゃないでしょうか。例えばセガのスーパーモンキーボールなんかも、ニンテンドーDS用は5000円しますが、iPhone用は9.99ドル。価格がまったく違います。

 実は個人的にもうひとつ期待しているのが、ペアレンタルコントロールの機能。これまでのアップルがそうだっただけに、日本市場にはちゃんと対応していないんじゃないかという懸念もありますが、逆にもしちゃんとやってくれたら、これもキラー機能になるでしょう。今、日本は子供と有害コンテンツに関する議論が活発ですし。


── ゲームというと、外部コントローラーの需要も考えられますが、iPhone 3Gはハードを拡張できますか?

 それは、まだできないみたいです。


※その2に続く


筆者紹介──林信行


 フリーランスITジャーナリスト。「iPhoneショック」(日経BP刊)の筆者。大学や企業で講演をしたり、製品/技術開発のブレインストーミングに参加することも多く、製品コンサルタントとしての顔も持つ。ジャーナリストとしては、デジタル技術によって変わる人々のライフスタイルやワークスタイルに大きな関心を持つ。ハード、ソフト、ウェブの技術だけでなく、アートやデザイン、コンシューマーやIT系企業の文化についても取材/執筆活動をしている。「MACPOWER」「MacPeople」元アドバイザー。近著は「スティーブ・ジョブズ ー偉大なるクリエイティブディレクターの軌跡」(アスキー刊)、「アップルの法則」(青春出版社)、「アップルとグーグル」(インプレスR&D社)など。自身のブログは「nobilog2」。


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