「iPodの役割が変わりつつある」
── 2、3年先には、どういった変化が起こるでしょうか?
林 今はすっかり持ち直しましたが、今年に入ってから一時、アップルの株価が落ち込んでいましたよね。これは前の四半期の決算で、ずっと右肩上がりだったiPodの売り上げがついに横ばいになったのが原因です(関連記事)。
これについて聞かれたとき、アップルのCFOが、「iPodの役割が変わりつつある」と言いました。「最初は音楽再生だけだったiPodが、やがて動画にも対応した。今では、さらに次の変化としてiPod touchやiPhoneをきっかけに新しい無線LANの機器になろうとしている」と語っていたのです。
無線LANといえば、元々、アップルが初代iBookで、ドラフト段階のIEEE 802.11bをいち早く採用し、世の中に広めて今に至ります。今、「無線LAN革命の第2弾」と言えるようなな出来事が起こりつつあり、アップルはかなり中心に近い位置にいると思います。
── と言われますと?
林 アップルが米国のスターバックスとコラボレーションをしているのを知っていますか? 米国のスターバックスに入って、iPhoneの電源を入れると、自動的に無線LANに接続して、「今、この店で流れている曲」が表示されます。最近、再生した曲などの一覧も現れて、曲も購入できる。売り上げはアップルとスターバックスで折半しています。
こうした例は、これはこれから来る「大波」のほんの前触れに過ぎません。
アップルは例えば人々がレジの行列に並ぶ代わりに、お店の無線LAN経由でメニューを選んで発注する、といった新しい販売方法の特許も押さえています。
これから生活のいたる場所に無線LANが敷設され、至る製品に無線LAN技術が入ってくることで、われわれのライフスタイルそのものが一変してしまいそうな気配が漂い始めています。やろうと思えば、ニンテンドーDSの任天堂や、PSPを始めとする多くの家電製品を持つソニーなんかも、そうした革命の騎手になれるはずですが、いかんせん動きが鈍すぎる。
今のままだと、次の大きな革命でもアップルが先導的立場に立ってしまいそうです。私の直感が正しければ、アップルが次に巻き起こそうとしている革命は、人々の暮らしにかなり巨大な変化をもたらします。
「この波に早期から付いていかないと、日本のメーカーは本当に危ないんじゃないか」と心配でなりません。最近、私は執筆活動よりも講演に力を入れていますが、それも、まさに「今こそ」が最も重要な時期だと感じているからです。