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池田信夫の「サイバーリバタリアン」第13回

「アナログ」という字幕を出す前に

2008年04月22日 12時00分更新

文● 池田信夫(経済学者)

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廃止すべきは「B-CAS」と「コピーワンス」


B-CAS
8日に発表されたいくつかの地デジ対応テレビキャプチャーカードでも、B-CAS用スロットが用意されている

 福田内閣の方針は「消費者中心の行政」だそうだから、このような業者一辺倒の放送行政は抜本的に見直すべきだ。

 政策の優先順位は明確である。何よりも重要なのは、2011年にテレビが見られなくなる視聴者をひとりでも減らすことだ。移行用に「5000円チューナー」を用意しろという話もあるようだが、B-CASのハードウェアと「審査料」だけで3000円近くかかる状態では、そんなものは作れっこない。

 最大の障害となっているコピーワンスも、6月から「ダビング10」に移行する予定だが、孫コピーが作れない不便さは同じだ(関連記事)。今のアナログ放送なら、パソコンにキャプチャーしたデータはデジタルで編集もミキシングも自由だから、ビデオマニアはアナログ放送を使い続けるだろう。何よりおかしいのは、無料放送に必要のない限定受信システムを、法的根拠もなしにB-CASという私企業がすべてのテレビに事実上、義務付けていることだ。



NHKはどう説明するのか?


 特にNHKについては、放送法第9条の第9項に「協会は、放送受信用機器若しくはその真空管又は部品を認定し、(中略)無線用機器の製造業者、販売業者及び修理業者の行う業務を規律し、又はこれに干渉するような行為をしてはならない」と規定されている。NHKが「あまねく受信」されるべき放送を暗号化し、子会社でB-CASという「放送受信用機器」を認定して受信に「干渉」しているのは違法ではないか。

 この問題はNHKも気づいており、BSでは「BS設置のご連絡をお願いしております」という嫌がらせの字幕が出るが、地上波では出ない。昨年、橋本元一元会長が「地デジでも字幕を出す方針だ」と記者会見で発言したことがあるが、撤回された。これはNHKの否定している有料放送=民営化につながるからだ。それなら、なぜBSには字幕が出るのか。

 少なくとも公共放送であるNHKは、私的な有料放送システムであるB-CASをやめて、すべての視聴者に見えるように放送すべきではないか。NHK経営陣は、視聴者に論理的に説明すべきだ。

 地デジは、総務省の進めている情報通信法(仮称)のようなレイヤー別構造と整合性がなく、通信/放送業界全体をIP(インターネット・プロトコル)で再編成する通過点に過ぎない。総務省は、アナログ放送の視聴者に嫌がらせする姑息な政策よりも、このコラムの第10回で提案したような抜本的な対策でデジタルに一挙に移行し、「地デジ後」の電波政策を考えるべきだ。


筆者紹介──池田信夫

池田氏

1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「過剰と破壊の経済学」(アスキー)、「情報技術と組織のアーキテクチャ」(NTT出版)、「電波利権」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。


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