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ノーク伊嶋のIT商材品評会 第2回

企業ITのワンストップサービスとして体系化、パートナー販売を可能に

中堅・中小企業需要を狙う富士通マーケティング「AZSERVICE」

2013年09月18日 08時00分更新

文● 伊嶋謙二(ノークリサーチ シニアアナリスト)

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(2)-1 AZCLOUD:AZCLOUD IaaS(仮想プライベートクラウドサービス)
 「AZCLOUD IaaS」は、初期環境構築、閉域VPN環境、運用サポートまでをセット化して提供する仮想プライベートクラウドサービスである。ニフティクラウドの基盤を利用し、回線使用料込みの月額料金で提供することで利用しやすくしたIaaSである。

(2)-2 AZCLOUD:BSTS(クラウド型セキュリティ対策)
 AZCLOUDサービスの1つに位置づけられる「BSTS(ビステス)」は、クラウド型のウイルス対策サービスである。シマンテック「Symantec Endpoint Protection」の管理用サーバをクラウドで提供し、ユーザー企業はクライアントモジュールだけをインストールすればよい。1クライアントあたり月額500円で利用できる。また、万が一大規模なウイルス感染などが発生した場合は、FJMの専任技術者がオンサイトでウイルス駆除を行う有償サービスも用意されている。

(3)AZSUPPORT:IT用心棒(運用管理サービス)
 AZSUPPORTでは、IT運用サポートサービスの「IT用心棒」が提供されている。IT用心棒は、1)サービスデスクの「窓(まど)」、2)システム監視の「見(みる)」、3)リモートとオンサイト併用の『助(たすける)』、4)運用代行「代(かわる)」と、5)これらを組み合わせたお任せパック「型(かた)」で構成される。

 特に、問い合わせ窓口業務を代行するサービスデスクの「窓」が好調だ。従来は、企業内のエンドユーザーの質問は情報システム担当がとりまとめ、メーカーに質問していた。このサービスを利用することで、問い合わせに対応する情報システム担当の負担がなくなる。

AZSUPPORT IT用心棒。ユーザー企業ごとのIT環境にマッチしたIT運用のサポートサービス。サポート窓口を一元化し、管理者負荷を削減する

(4)AZNETWORK(セキュアなWAN回線)
 AZNETWORKは、IP-VPN方式で安全かつ低コストのネットワークサービスである。従来SMB向けに提供はしていたが、AZSERVICEのメニューとしてパートナーが仕切りで販売できるようにした。

(5)AZOFFICE(コンストラクションサービス)
 AZOFFICEは、売れ筋のハードウェア/ソフトウェアと、免許が必要となる設置工事、顧客の環境や運用を考慮した設定作業をパック化したコンストラクションサービスである。サーバラックの免震装置、ICカードや手のひら静脈による入退出管理、監視カメラシステムなどの導入工事や設定作業を提供している。

中堅・中小顧客のストックビジネス化を狙う

 以上のように、AZSERVICEは、中堅・中小企業からの要求にワンストップで応えられるサービスが最大の特徴だ。すべてのサービスは仕切り販売が可能であり、小口案件ではあってもパートナーにとっては重要なユーザーのストックとなる。

 AZSERVICEは、FJMパートナーの約400社が販売を行うことができる。ただし公表はされていないものの、顧客実績としてはまだ数百社と思われ、それも年商300億円以上の企業に対するFJMの直販が中心となっている。

 同社としては、パートナーを通じて年商300億円以下の規模の企業への販売を期待して投入した商品だけに、そういった意味ではまだ十分に実績が上がっているとは言えない状態だ。市場投入から3年が経過し、ようやく今回AZSERVICEとして体系化がなされ、再スタートを切ったところと言えるだろう。

 前回「N-town」の記事でも述べたが、クラウドビジネスは一気に大きな実績として立ち上がる性格のものではない。そのため、パートナーへの継続的な支援活動やユーザー企業への魅力的なサービス提供を継続していくことが肝要である。FJMが得意とする中堅企業領域のビジネスを維持しながら、より小規模な企業へストックビジネスとしてクラウドサービスを提案することが求められるからだ。

 チャネルビジネス成功のための王道は、今も昔も地道な間接販売への支援活動と、ユーザー企業への提案サポートをたゆまず行うことに変わりない。パートナーの量と質、商材の充足度、サポート拠点の充実、なにより全社をあげての推進力が、同社のこのサービス成功のカギを握る。

筆者紹介:伊嶋 謙二(いしま けんじ)

ノークリサーチ創業者兼CEO。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の調査・分析を得意としている。最近では経済産業省やIPA、ITCAなどの公的な活動にも積極的に委員やアドバイザーとして参加している。


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