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ノーク伊嶋のIT商材品評会 第6回

法人営業の強さと流通力で遅れを取り戻す

ソフトバンクテレコムの「かんたんオフィス」はなにがかんたん?

2014年04月08日 06時00分更新

文● 伊嶋謙二(ノークリサーチ シニアアナリスト)

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最近は通信キャリアの中小企業向けのITサービス(クラウドサービスも含む)を紹介しているが、今回はソフトバンクテレコムの「かんたんオフィス」だ。大手キャリアの中では後発だが、追加営業に徹するほか、ディストリビューターとしての強みも活かしている。

ソフトバンクテレコムの目指す中堅・中小企業へのゴールは?

 今回取り上げる「かんたんオフィス」は、ソフトバンクグループの中の、法人向け事業を担当するするソフトバンクテレコムが提供するサービスである。前回紹介した「まとめてオフィス」だったり、「かんたんオフィス」だったり(しかも両方とも大手キャリアが始めたサービス)、内容も提案企業も混同してしまい、違いが分からない読者も多いかもしれない。筆者も未だに違いを即答できないありさまだが、特段気にすることはことではない。なぜなら中期的に見れば、中堅・中小企業にとって、ごく当たり前のワンストップサービスとして根付くことを予感させるからだ。

 「かんたんオフィス」のサービスインは2013年11月1日。KDDI、NTT東日本・西日本、NTTコミュニケーションズなどに後塵を拝し、巻き返しを図っているというのが本音だろう。

 前提として、ソフトバンクグループについて簡単に整理してみると、以下の3社が中堅中小企業のB2Bビジネスに関連しているグループ会社になる。

  • ソフトバンクBB※(IT関連製品のディストリビューター)
  • ソフトバンクテレコム(法人向けの固定・データ通信サービス)
  • ソフトバンクモバイル(移動体通信サービス)
※2014年4月1日から社名がソフトバンクコマース&サービスに変更

 上記の3社は微妙に中堅・中小企業向けのビジネスに関連しているが、「かんたんオフィス」はどちらかといえば、情報システムが存在する中小企業より少し規模の大きな企業がターゲットだ。しかも既存のソフトバンクとのサービス契約のある企業が対象となっている。

 従来、代理店が対応していた企業規模の小さな企業へ関係を深めることを目的に、ソフトバンクテレコムを事業主体として「かんたんオフィス」はスタートしている。サービスを実施するにあたっては、幅広い商材を扱う目的でソフトバンクBB、B2Bの通信事業を専門に行なうソフトバンクテレコムが、より既存顧客との関係を強化する目的でからんでいる。

 ソフトバンクの持つスケールメリット感は、以前紹介したNTTコミュニケーションズやKDDIまとめてオフィスと比較してもまったく引けを取らない。後述するとおり、物販ビジネスに関しては、ソフトバンクグループの方が、むしろ他社に比べて優位性を持っており、ディストリビューターとしてのスケールをいかんなく発揮している。

「かんたんオフィス」は「事業の立ち上げもかんたんに」が特徴

 さて、「かんたんオフィス」と前回のKDDIまとめてオフィスと何が違うのかを説明しよう。「かんたんオフィス」は「究極の追加営業のためのビジネス」。つまり今までの商流に沿って付加する営業提案となっている。販売するほうも主力に提案する事項ではないので、新規に投資するというようなリスクはない。

 同社にとっては従来の営業先にプラスワンを提供することで、売上を高めるられるいわば便乗商法ともいえる。こんな風に書いてしまえば身も蓋もないが、そこに中堅・中小企業にとって少なからぬメリットや気付きが得られる仕組みであることがキモだ。つまりはソフトバンクテレコムにとっても売上が増して、顧客との関係が強化される。ユーザー企業にとっても、便利で役立つ製品やサービスが付加される。両者にメリットのある“ご同慶の至りビジネス”という一石二鳥の戦術であることが特徴だ。

「かんたんオフィス」のWebページ

 同社のユーザー企業とのもっとも強い結びつきは回線による契約である。固定電話、携帯電話に限らず回線による法人契約だ。ソフトバンクグループでは、それぞれ扱う商材が違っているために、同じグループ企業でも、ユーザーが欲しい商材について、別のグループ企業の商材を提供するためにはいろんな段階を踏む必要があった。

 たとえばソフトバンクテレコムの営業マンが、ソフトバンクBBの商材を扱うには、他の商材と同様に見積書の作成、稟議書のやりとりなどが必要で、時間がかかった。そこで、その作業を簡便化し、ユーザーに提供できるようにすべく、ソフトバンクテレコムのカスタマーサービス本部内に「かんたんオフィス」のサポートセンターを設置。営業マンが直接注文できるようにした。

 また、エンドユーザーにも事務処理の煩わしさの解消につながるため同様に受けが良いという。つまり、「かんたんオフィス」によってソフトバンクテレコムだけの請求処理で一括請求をできるようにし、ユーザーの発注部門の作業の簡素化を実現した。同時に一括発注も可能としたところも特徴だ。電話回線はA販売店、文具はB販売店、IT商品はC販売店などバラバラな発注先では、企業担当者の作業も煩雑だが、「かんたんオフィス」ではワンストップでオフィスに必要なものがなんでも発注できる点もアピールできる。

 このソフトバンクテレコムの営業システムの見直しによるソフトバンクBB製品の売り上げ強化、さらにはユーザー企業の受発注業務の一元化、効率化を目指して同サービスを提案することを始めた。通信回線のみの契約では、単なるコスト競争にもなり、つねに解約のリスクを抱えてしまう。そこで、 回線だけでなく、他の商材も包括すること、つまりワンストップサービスでの囲い込みでユーザー企業との関係性を強くすることが必要と考えたからだ。

 つまり「かんたんオフィス」のかんたんの意味は、売るほうも買うほうも双方の立場で役立つ、効果が出ることがかんたんに得られるという思いに落ち着くようだ。

(次ページ、「4000社と40万点」がキーワード)


 

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