「バッテリー交換」の信頼性が魅力
ディスプレー解像度の選択には疑問も
特別な機構という点で、ヒンジと同様に「変わっているな」と思うのが、バッテリーの構造だ。Ultrabookではバッテリーが取り外しできない製品が多いが、AX2はしっかり外せる。しかも、「外しても動き続ける」ことを前提とした設計がなされている。容量の小さなサブバッテリーを最初から内蔵し(こちらは取り外せない)、別途メインバッテリーを交換できる形態としたのだ。
メインバッテリーで定格容量4100mAh、サブバッテリーで同2050mAh(どちらも7.2V)となっており、公称動作時間は約9時間(JEITA1.0測定法による)である。今回もバッテリーテストツール「BBench」によるテストを行ったが、この場合、最長で6時間半程度動作した。テスト時には、メインとサブどちらのバッテリーも放電されるまで動作させている。
BBenchによるバッテリー駆動時間テスト | |
---|---|
パナソニック推奨 | 省電力 |
約4時間35分 | 約6時間33分 |
メインバッテリーが切れても、サブバッテリーが残っている間はそのまま動作するため、もうひとつバッテリーを用意しておけば、作業を中断することなく動作時間を延ばせる。この点は「どうせ交換できるようにするなら」という発想だろう。今回貸し出された機材には付属していなかったが、店頭モデルの「CF-AX2QEQBR」「CF-AX2QERBR」にはメインバッテリーが2つと、そのバッテリーを充電するためのバッテリーチャージャーが付属する。これを使えば、公称値で約16時間の動作になる。バッテリーチャージャーは1.5A以上出力するUSB端子でも充電できるようになっていて、より充電方法の幅が広くなっているのがありがたい。
バッテリーの工夫は「今時のノートパソコンとしてのあり方」を考えた作り込みだろう。同様に、タッチ世代の作り込みとしてうれしいのは、各種設定を行なうためのユーティリティー「Dashboard for Panasonic PC」が、タッチでの操作を前提に刷新されていることだ。ボタンを大きめにし、指でも誤操作なく使えるようになっている。
単にボタンが大きくなっているだけでなく、「これを使えばおおむねOK」というシンプルさがうれしい。Windows 8になり、設定関連情報を呼び出すのが多少面倒になっている。特に、新OSの勘所をわからない人には辛い点だろう。そこをユーティリティーでカバーするのは望まれる方向性である。
ハードウエア、そしてソフトも含めた作り込みのある「手のかかった製品」として、Let'snote AX2はとてもよくできている。現状この製品は日本でのみ発売されているわけだが、こういうものこそ世界に打って出て、「手のかかった製品の良さ」を知らしめるべきだと思う。Windows 8搭載かつタッチ対応のモバイルノートで、かつクラムシェル状態の使い勝手を最優先にするなら、まず最初に検討すべき製品だ。
他方で筆者として残念に感じるのは、いまだにディスプレー解像度が1366×768ドットにとどまっている点だ。OSが変わり、Windows 8スタイルUIでもデスクトップ画面でも、解像度への依存度は減っている。タブレットやMacなどで多くの人が高解像度の美しさを知り始めているのだから、そろそろWindows機も次のレベルへ進んでほしい。そもそも作業領域としても、1920×1080ドット程度はあった方がプラスである。
ある程度安さが求められる店頭モデルではしょうがないが、直販サイトで買えるカスタマイズモデルでは、高解像度モデルを用意しておくべきではないかと感じる。特にAX2は、最も安価なモデルでも15万円台、ハイエンドモデルでは25万円を大きく超える。だからこそ余計に、高解像度パネルという選択肢があっても良かったのでは、と思うのだ。
- お勧めする人
- ・クラムシェルでもタッチが欲しい人
- ・バッテリーでバリバリ使えるWindows 8機を求めている人
レッツノートAX プレミアムエディションの主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i7-3667U(2GHz) |
メモリー | 8GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 11.6型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | SSD 256GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n、WiMAX、Bluetooth 4.0、LTE(Xi) |
インターフェース | USB 3.0×2、HDMI出力、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-TXなど |
サイズ | 幅288×奥行き194×高さ18mm |
質量 | 約1.155kg |
バッテリー駆動時間 | 約9時間 |
OS | Windows 8 Pro 64bit |
価格 | 27万1650円から |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)、「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)、「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)。 最新刊は「ソニーとアップル 2大ブランドの次なるステージ」(朝日新聞出版)。
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