サイト制作や運営を外注に出すも失敗
もうひとつ、佐藤さんにとって大きな変化が起きた。サイト制作や更新を外注したことだ。
多忙のため自力でのサイト制作に限界を感じて楽天市場から撤退したのが2004年。以後、3年間は独自ドメインの本店だけに力を注いだが、2007年に入って転機が訪れた。Yahoo! JAPANの検索エンジンのシステム変更により、それまでのキーワードでは検索結果が上位に表示されない事態が起きたのだ。知人のコンサルタントの力を借りて事なきを得たが、この教訓をきっかけに、社内から「万が一のためにも、楽天市場と2店舗体制で販売していくべきだ」という声が相次いだ。
再出店にあたり、佐藤さんは、迷うことなくサイト制作や運営を外注の制作会社に依頼した。多忙になった2004年頃から、「サイト制作はその道のプロに任せたい」という思いをずっと抱いてきた。楽天市場への再出店はそれを実現する良い機会だ。そこで、ネットショップを多数手掛けている会社にサイト制作を依頼。さらに、サイト更新や、メルマガ執筆などもお願いすることにしたのだ。
これでやっと、商品の企画デザインをする、イベント計画を立てるなど、自分にしかできない仕事に専念できる。そう思ったのだが——。
「うまくいきませんでした。サイトのデザインそのものは良かったのでしたが、問題になったのが、更新作業。『今すぐ、この一文を変えてほしい』というのが通用しない。ちょっとした変更でも数日要する。私自身がサイト制作ができるので、余計に、『こんなこと数分もしないでできるのに』という不満がどうしても募ってしまったんです」
ネットショップにとって、こうしたタイムラグが商機を逃すことは少なくない。キャッチコピーを変えた、書体を見やすくした、写真を1点加えたなど、ほんのちょっとの工夫が売り上げを左右することは多いにあるからだ。
結局、制作会社とは3年ほど委託したのち、契約を解除。再び、佐藤さん自らが、本店、楽天の両サイトを自力で運営することになった。
「他人に任せられない。つい、自分でやりたくなる。それが、私の最大のウィークポイントなのは重々承知しています。でも、外注に出したばかりに、細かな要望に応えてもらえないことに納得できないのも正直な気持ち。しばらくは自力でやっていこうという心境です」
外注に出すときは、何をどこまでやってもらうのか、お互いに交渉し、譲歩し合うなかで線引きを決めていくべきだ。このとき大切なのが、外注に任せたらそれっきりにせず、あくまでも店主が舵取りをするというスタンスを貫くこと。サイト制作や運営について少しでも疑問なら相手に聞いてみる、場合によっては勉強するなどして理解を深め、店主主導でお店を作り上げなければならない。
ただし、楽天市場に再出店したことは、佐藤さんにとって大きなメリットがあった。本店との“売れ方の違い”が分かるようになってきたのだ。(続く)