政治家がブログやツイッターに反応する
私がブログで「事業仕分けは人民裁判だ」と批判したら、民主党から「誤解があるようなので見学してほしい」と連絡があった。楽天の三木谷浩史社長が、成長戦略策定会議に呼ばれた感想をTwitter上で「メインの人が居眠りする始末」と批判すると、原口総務相が「三木谷さん ごめんなさいね!」と謝罪した。党組織や利益団体などの安定した基盤の少ない民主党にとっては、ウェブの影響力が大きいのだ。
菅副総理が居眠りしたことでもわかるように、これまでのネットユーザーは投票率も低く、政治家が関心をもたない有権者だった。しかし世論調査によれば、こうした無党派層の政治的関心は強く、知識も多い。彼らは政治に関心があるがゆえに、政策で動かない自民党政治に絶望し、投票しなかったのだ。そういう人々が受動的なテレビや新聞ではなく、ウェブという能動的なメディアで発言することは民主主義を変える可能性がある。
ビジネスとしても、日本のブログの圧倒的多数は匿名の日記で、友人以外はほとんど読まない。内容も他人の悪口などが多くて質が低く、大手のナショナルスポンサーがつかないため、広告媒体としては採算がとりにくい。これに対してアメリカのウェブサイトでは、複数のスタッフが取材して一次情報を報道する体制をとっており、黒字の出ているサイトも多い。
芸能人のゴシップが主婦の娯楽だとすれば、床屋政談は男の娯楽である。ワイドショーは世の中に何の影響も及ぼさないが、政治経済を論じるサイトは政治を変える可能性がある。特に鳩山内閣のようにアマチュア的な政治家の多い政権にとっては、専門家が彼らを教育することも重要だ。アゴラでは、専門家の投稿を歓迎している。
筆者紹介──池田信夫
1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に、「希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学」(ダイヤモンド社)、「なぜ世界は不況に陥ったのか」(池尾和人氏との共著、日経BP社)、「ハイエク 知識社会の自由主義」(PHP新書)、「ウェブは資本主義を超える」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。
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