Twitterを「割れ窓」にするな
このコラムで何度も書いてきたように、日本のウェブは2ちゃんねるやはてなのような匿名サイトが主流になり、ブログもほとんどが匿名で、記事の質が非常に悪い。これは今後、日本がインターネット時代に適応する上で大きな障害になる。2ちゃんねるのように悪口で埋まり、まともなメッセージを書く者がほとんどいない状態になると、そこから抜け出すことは不可能だ。
これを防ぐには実名を義務づければよいが、そういうサイトにはあまりユーザーが集まらないので、採算がとれない。韓国のように法律で実名を義務づける方法もあるが、これも2ちゃんねるのようにサーバを海外に立てればいくらでも抜け道がある。技術的にフィルタリングすることも困難で、結局ユーザーの文化によるしかない。
このように悪口が悪口を呼ぶ現象を、犯罪社会学で割れ窓と呼ぶ。たとえば観光地に落書きがまったくなければ誰も落書きしないが、落書きが増えると一つぐらい増えても目立たないので、落書きが加速度的に増える。こういう場合、最初の小さな割れ目をふさぐことが大事だ。
逆に欧米では、Facebookのように実名ばかりか経歴も顔写真も出すのが当たり前だ。それを共通IDとして使うシステムも普及しているので、実名で責任をもって発言するのが当たり前で、匿名のメッセージは相手にされない。世界的にみるとこっちが標準で、中国なども実名が多い(これは検閲の関係もあるだろうが)。
今のところ、Twitterは日本のウェブベースのメディアとして初めて実名が標準になりつつあるが、まだユーザー数が少ないので、微妙な均衡を保っている状態だ。規模が大きくなると、2ちゃんねる化してしまう可能性もある。この実名の文化を守り、割れ窓をふさぐことができるかどうかは、日本がインターネット時代に生き残る上で小さくない問題である。
筆者紹介──池田信夫
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1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「ハイエク 知識社会の自由主義 」(PHP新書)、「情報技術と組織のアーキテクチャ 」(NTT出版)、「電波利権 」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える 」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。
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