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好調なcybozu.comは年内にもSalesforceを抜く?

IT部門飛び越す事例も!現場発ITの切り札「kintone」が進化

2013年07月17日 07時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 サイボウズはビジネスアプリ基盤「kintone(キントーン)」を7月14日にアップデートし、企業間コラボレーション機能「ゲストスペース」、カスタマイズ開発機能「JavaScript読み込み」の提供を開始。発表会では、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏が、大企業でも使われるようになってきたkintoneの最新事例を披露した。

月間200~300社ペースで有料契約者数が増加

 kintoneは、cybozu.comで展開されているビジネス向けクラウドサービス。WebのGUI上からユーザーに最適化された業務アプリケーションを簡単に構築できることから、「ファストシステム」を謳う。cybozu.comで提供されている「サイボウズOffice」「Garoon」「メールワイズ」のクラウド版と異なり、クラウド専用サービスとして提供されているのも特徴となる。

 新バージョンに関する記者説明会で登壇したサイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏は、まずcybozu.comのクラウド基盤について説明した。

サイボウズ代表取締役社長 青野慶久氏

 AWSをはじめとした北米系のクラウドに対し、cybozu.comのインフラは日本人が開発・運用を行なっており、データセンターも東日本・西日本に分散しているという。また、24時間365日での有人監視を行なっているほか、サブドメイン空間も顧客ごとに用意。「データも4重に保管されているので、安全。最近はユーザー認証の心配も増えているが、cybozu.comでは二要素認証を実現している」(青野氏)とのことで、強固なインフラを構築していると説明した。有料契約者数も月間200~300社ペースで増加しており、cybozu.comで4500社を突破し、kintoneだけでも700社に達したという。青野氏は「クラウドではSalesforce一人勝ちと言われているが、この分だと年内には追いつく」とアピールした。

大企業にも受け入れられつつあるkintone

 引き続き、青野氏はkintoneについて説明した。データベースとワークフロー、コミュニケーションという3つの機能を統合したkintoneは、一般的には「業務開発プラットフォーム」と呼ばれているが、青野氏曰く「チームワーク・プラットフォーム」。これは業務データベースの周りには、必ず各部門でのやりとりが発生し、コミュニケーションが重要になるからだという。青野氏は、2011年にサービスをスタートして1年半が経過し、kintoneが3つの方向に拡張し始めていると述べる。

 1つめの特徴は、大企業での導入が増えているという点だ。現状では全社規模というより、部門単位でのテスト導入というステータスが多いが、確実に引き合いは増えている。ITプロジェクトの予実管理を実現した航空会社、高速回線への契約移行案件を管理した携帯電話キャリア、新規出展や退店の管理を実現したファーストフードチェーンなどなど。事例に挙げられた羽田空港では、FAXでやっていた館内放送の依頼管理をkintoneで行なうことにした結果、現場での顧客の案内や迷子への対応がスピーディになったという。こうした大企業での事例について、青野氏は、「IT部門を飛び越してくる。自分たちでなんとかしようと考えているユーザー部門からの引き合いが多い」と説明する。

大企業でのkintone事例

 2つめの特徴は、kintoneのコミュニケーション機能を活かした社外との活用事例だ。メールと添付資料というコミュニケーションでは難しかった外部とのやりとりを、kintoneで効率的に行なうというものだ。発表会では、介護会社が家族にステータスを知らせたり、建設会社が自治体や建設業協会と情報共有したり、メディア企業が外部のライターとプロジェクトを共有したりといった事例が披露。また、関連会社や取引先などに公開するための「ゲストスペース」が新機能として紹介された。

外部とのやりとりを容易にする新機能の「ゲストスペース」

 3つめはカスタマイズが増えている点だ。ノンプログラミングを謳い、ドラッグ&ドロップでのアプリケーション設計を謳うkintoneだが、他のアプリケーションやセンサー、バーコードなどと連携させた利用も増えているという。ERPのWeb化や基幹データを取り込んだ予実管理、CTIシステムからの見込み客の取り込み、地図の表示とマッピング、フロントエンドツールとしてのExcelの活用などの事例がすでにあるとのこと。また、納期は最大の2~3ヶ月で、1ヶ月未満の案件が多いのが最近の傾向だ。

外部とのやりとりを容易にする新機能の「ゲストスペース」

 サイボウズでは、こうしたカスタマイズ案件に応えるべく、APIドキュメントやサンプル、SDKなどを公開するデベロッパーサイトをオープンしたほか、JavaScriptによるカスタマイズに正式対応した。青野氏は、開発支援体制の拡充により、社会変化が起こると力説する。「SI・受託開発業界では、今までのような人月単位ではなく、日数や時間単位という超短納期が求められるようになる。業務用のパッケージソフトも、Googleのアプリマーケットのようなオンライン販売に移行する」(青野氏)と説明した。

 kintoneが登場してすでに1年半経つが、ライバルになるような製品はあまり目につかない。これについて青野氏は、「やはり一番の競合はメールとExcelで、あと案件管理ではSalsforceとか。オラクルがコンペになることもある」と語った。

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