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ほぼ実録?広告部はkintoneで生まれ変わった! 第1回

売り上げを上げるにはやっぱり情報共有が必要

なぜ数字があがらない?B2Bチームは課題だらけ!

2013年10月02日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「なんでこんな数字しかとれないんだ!」普段は笑顔のモウリ部長の叱責が飛ぶ。ここはAMWの広告部会議。コンシューマー系広告に続く柱として期待されたビジネス系広告専門の通称B2B(B2B:Business to Business)チームができて、すでに3ヶ月が経つが、実績は上がらない。「いったいなにが悪いんだ?」 B2Bチームマネージャーのイシダが手を伸ばしたのが、サイボウズの「kintone」。これはB2Bチームがkintoneを使って、生まれ変わるまでの汗と涙のストーリーである。

登場人物

 

オオタニ TECH.AMW.jpの編集長。編集部の売り上げに直結するB2Bチームの営業効率を上げるため、イシダにサイボウズ「kintone」の導入を提案する。座右の銘は「なせばなる。なさねばならぬ何事も」。歴史小説が好き。








 

イシダ 第1広告営業部主任。部長モウリの命を受け、法人向け広告売り上げアップを目指すB2Bチームの数字を上げるべく、日夜奮闘する。座右の銘は「禍福はあざなえる縄のごとし」。ビジネス書が好き。








 

あーみん ある時はアルバイト、ある時は営業マン。オオタニが困ったときにいつの間にか現れ、ヒントをくれる女子。実はkintoneの中の人。なぜかカラーで、見た目の厳しいモノクロビジュアルばかりの現場を潤してくれる。ドーナツが好き。


edge

コンシューマ市場を主戦場にしてきたAMW(仮名)の広告営業部が法人向けの広告案件を新たに獲得すべく、4月に結成されたB2Bチーム。このB2Bチームの案件獲得を目指しているのだが、なかなか数字に結びつかず、困っている。その原因を調べてみると、さまざまな問題が浮き彫りになってきた。

*本記事の内容はあくまでフィクションで、登場人物や会社名などは実際のものではありません。本当です。

法人向け広告を伸ばせ!B2Bチーム

 ここは都内にある中堅出版社AMW。ライトノベルやゲーム雑誌、IT関連出版などを中心に売り上げを伸ばしており、近年はWebビジネスや電子書籍にもチャレンジしている。

都内にある中堅出版社AMW

 さて、AMWの広告営業部が2013年度の方針として打ち出しているのが、「デジタル&B2B」というキーワードである。長らく同社ではコンシューマー系の紙媒体を中心にした広告営業を主体に行なってきたが、雑誌の部数自体やコンシューマー系広告の市場自体が減少傾向を見せているのが現状だ。そのため、成長の見込まれるインターネット広告や他社に比べて未開拓な法人向け商材(B2B:Business to Business)のマーケットをより拡大させようというのが、「デジタル&B2B」の意図である。幸いにも、IT系Web媒体である「TECH.AMW.jp」も、広告面で緩やかな成長を遂げており、1件あたりの金額の大きいB2B案件には伸びしろがあると判断されている。

 こうした背景があり、広告営業部内で4月に結成されたのが、法人向けのIT商材を中心に扱う「B2Bチーム」である。主任のイシダを中心にウキタ、コニシ、コバヤカワ、アンコクジなど、第1広告営業部の5人で構成。PCやサーバーなどのハードウェア、業務向けソフトウェア、セキュリティ系の製品・サービス、そして今流行のクラウド、ビッグデータまで、今までAMWでは実績がなかったこれらの広告の売り上げを拡大し、コンシューマー中心・紙中心の営業とは別の収益軸を作ろうというプロジェクトだ。

 さて、旧知のイシダからTECH.AMW.jpのオオタニに、B2Bチームのカイゼンに協力してもらいたいというメールが来たのは、5月下旬。もともとオオタニとイシダはTECH.AMW.jpの売り上げ増大プロジェクトを2年前から進めており、媒体設計や営業施策、組織作りまで幅広く相談してきた仲。さっそくイシダと社内でミーティングすると、B2Bチームにいろいろな問題が生じていることがわかった。

オオタニ:なんだか苦戦しているらしいね。

イシダ:B2Bチームができて2ヶ月だけど、なかなか成果が上がらないで困っているよ。この間の広告営業会議では、いつもは温厚なモウリ部長からも、「なんでこんな数字しかとれないんだ!」って言われて、けっこうへこんだ。

オオタニ:B2Bの広告営業はうちの編集部にとっても生命線なので、ワシができるところはなんでもやるぜ。7月からはベテランの新人も入ってくるし、先日は特集計画も出したし、あとはタイアップが確実にとれればいいからさあ。いったい何が問題なの?

プロジェクトの課題は山積みだあああああ!

イシダ:課題は山積みだ! まずB2B自体に実績がないので、そもそも営業先がわからない。クライアントに行けないから、代理店への営業に偏る。情報は集まるけど、お金につながる話にならない。あとIT業界や製品、サービスの知識がないので、営業トーク自体が難しいというの問題。まあ、これは各自の問題なんだけど。

オオタニ:なるほどアタックと情報が少ないわけね。まあ、確かにB2Bチームの面々を見ると、どちらかというと“ゆっくり確実に”型が多いからなあ。鉄砲玉のような飛び込み営業できる人は、サナダ君くらいしかいないね。

イシダ:あとはコミュニケーションと見える化かな。結局、アタック回数とか、営業内容とか知るのにタイムラグが出てきて、相談しようと思うと、外出しているとかタイミングあわなくて。定期ミーティングで話すと、結局企画書の提出が他社の後手に回っちゃうとか。各人がなにやっているのか、正直全然見えない。こうなると、予算は立てるんだけど、実現可能性が見えない。これじゃあ、ビジネス書で書かれている“絵に描いたようなダメな営業部”じゃん。

オオタニ:そうだねえ。要は情報管理と共有がきちんとできてないってことだね。で、チーム内のやりとりってなにでやってるの? 営業部ってサイボウズOfficeとか使ってるんだっけ?

イシダ:いや。もっぱらExcelファイルの日報やリストをメールで送っているよ。

今さらメールにExcelファイルの添付はないだろ!

オオタニ:なんでやねん(笑)。各自がちゃんと読んでいるかもわからないし、そもそも大量のメールに埋もれるんじゃね。

イシダ:その通り。だから、オオタニ呼んだんだろ。オオタニのところの売り上げにも関わるんだから、おねがい!

オオタニ:わかった。わかった。来週までになんか考えてくるので、イシダがなにをどうしたいのか、もう少し詳しく教えてくれ。

 こうしてオオタニはB2Bチームのカイゼンプロジェクトに組み込まれることになった。

浮き上がってきた営業管理の4つの課題とは?

 さて、オオタニは先日のイシダとのミーティングで得られた課題とその解決方法を整理してみた。その内容はおもに以下の4つだ。

(1)そもそも営業先がわからない
法人向け広告の実績が少ないので、クライアントリストが整備されていない。とはいえ、日々ニュースや発表会の記事を書いている編集部のコネを使えば、広告宣伝担当者と会うことくらいはできるはず。イベントで名刺交換すれば、アポイントだって取れるだろう。まずは着実にクライアントリストを育てていくのがよい。

(2)営業トークできるような情報が不足
IT業界や製品、サービスに関する情報が不足している。とはいえ、業界動向は雑誌やWeb媒体、業界紙で補えばよいし、コンシューマ系の実績はあるので、コンピューター自体をまるきり知らないわけではない。あとは、編集のオオタニが定期的に情報を提供する体制を作ればよい。

(3)アタック内容や案件をきちんと見える化できてない
おもにイシダからの要望。B2Bチームの各メンバーが何をやっているのかが見えない。いつ、誰が、どこで、どのような商談を進めてきたのか、誰も知らない。誰も知らないから、管理ができないし、レポートできない。うまくいきそうな案件が【日報】というサブジェクトのメールでたまに流れるだけ。これら案件や商談をきちんと管理し、共有する仕組みが必須だ。

(4)数値目標が見えない
年間や月間の予算はあるのだが、それを達成するため、各担当が提案しなければならない提案数や金額の目標が見えない。提案数がある程度なければ、そもそも予算の達成自体が可能なのかがわからない。現状、こうした数値目標がどんぶり勘定で、月末の予算達成状況に応じて、数字を後から調整している。B2Bチーム、各担当の数値目標が可能な限りリアルタイムに見える必要がある。

 課題を書き出してみると、鍵になるのは情報共有であることがわかる。広告営業の各担当、リーダーのイシダ、そして編集部のオオタニはそれぞれKPIも、持っている情報も異なる。しかし、共通の目標は「法人向け商材の売り上げを上げる」ことだ。であれば、この共通目標のために情報を持ち寄って、効率的に利用すれば、確実に案件に結びつくはず。オオタニはそんなことを漠然と考えた。

鍵はやっぱり情報共有か……

 問題は、こうした共通目標を実現するための情報共有ツールだ。こうした課題を解決するのに「ツール」から入るのは、あまりよくないが、普段から記者としてIT関係の記事を書いているオオタニは発表会で新製品を見るたび、「うちでこんなツールを使ったら、あんなことができるのに……」と、つい考えてしまう。特に最近はクラウドアプリケーションの進化が著しい。数百万円、数千万円でシステムを構築して利用していたビジネスアプリケーションを、月額課金ですぐに使えてしまう。まったく恐ろしい時代だ。

 「果たして、どんなツールを使えばいいだろう」とオオタニが編集部で頭を悩ませていると、「お盆に実家の中津川※に帰ってきたので、おみやげ買ってきました~。オオタニさんもどうぞ!」とアルバイトのあーみんが「栗きんとん」を差し出す。

あーみんに差し出された栗きんとん(中津川の名店「松月堂」の栗きんとんを使用)。ん?

オオタニ:「栗きんとん」か。ん? くり・きんとん、キントン、キントーン……。こっ、これか!

今週のあーみんの一言

 

案件管理や日報管理、予算管理…。営業部門にとっては重要な情報のはずなのに、うまく共有されていなかったり、資料の山に埋もれて見落としてしまったりすることがありますよね。もったいない! 次回からさっそく「kintone」を使った解決策をご紹介していきますよ。どうぞお楽しみに♪


※岐阜県中津川市。栗きんとん発祥の地として知られ、市内には栗きんとんを製造する和菓子屋がいくつもある。

(提供:サイボウズ)

※本連載ではビジュアル作成に「漫画カメラ」(スーパーソフトウェア)を採用しております。

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