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業務を変えるkintoneユーザー事例 第189回

もう「お金の無駄だ」なんて言わせない

闇鍋ファイルサーバーをkintoneで解消! 弁当アプリから始めて年6000時間の時短でどうだ

2023年07月25日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 2023年6月7日、kintone hive nagoya vol.7が開催された。会場はZepp名古屋で、参加者は約500人と2階席まで埋まる活況ぶりだった。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、優勝した企業は「kintone AWARD」に進出する。

 今回は3番手、三重電子計算センター(7月よりミエデンに社名変更)の山田駿氏による「ゆるくつながり、壁を壊せるチームへ」というテーマでのプレゼンの様子を紹介する。

闇鍋ファイルサーバーをkintoneで解消! 弁当アプリから始めて年6000時間の時短でどうだ

三重電子計算センター 山田駿氏

入社した山田氏を待っていたのはカオスな現場

 三重電子計算センターは1967年創業で、今年56年目のIT企業。社員数は約300名で、主に自治体向けのシステム導入やデータセンターといった事業を行なっている。山田氏は2020年に入社し、営業部に配属された。どんな社会人生活が待っているのか期待してドアを開けると、待っていたのはカオスな現場だったという。

 「A市様」「A市様最新」「A市様最新(1)」「【最新】A市様」といった同じようなファイルがいくつもある「闇鍋ファイルサーバー」となっており、欲しい情報がまったく探せなかった。また、大事な情報は先輩の脳内にあるといった状況で、ノウハウが共有されない職場になっていたのだ。

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情報共有がされておらず、現場はカオス状態になっていた

 そんな中、2021年にkintoneを5ライセンスだけスモールスタートすることになり、山田氏がテストユーザーとしてアプリの作成を担当することになった。そこで、山田氏は情報の属人化を防ぎ、整理をするというテーマで2つのアプリを作った。

 「案件情報」アプリで顧客ごとに案件情報を集約し、さらに案件ごとに紐づく日々の営業活動も「活動情報」アプリに記録できるようにした。闇鍋ファイルサーバーや先輩の脳内に頼らなくてもよくなり、これが評価されて、2022年には全社員にkintoneライセンスを付与し、活用していくことになった。

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カオスを解消すべく2つのkintoneアプリを開発した

kintone導入はスモールスタートで成功。しかしまた大きな壁が……

 同時に、山田氏も情報システム部門kintone担当へ異動することとなった。その部署の上司が作った「ゆるくつながりながら、いらない壁を壊していく、そんなチームを作ろう」とテーマに共感した山田氏は、意気込んで取り組んだという。

 しかし、「現状維持」という大きな壁が立ちはだかった。社内システムは20年以上使っているとても古いレガシーシステムで、なんといまだに平成表記。今年の日付も「平成35年」と表示され、誰もメンテナンスできないという状況だった。

「もう1つが超アナログな運用です。データセンターへの入管の手続きは、まず紙に印刷、そして上司の押印をもらい、最後に社内便で郵送します。社内からデータセンターへちょっと作業しに行くための入館申請に1日から2日かかるのが課題でした」(山田氏)

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誰もメンテナンスできない平成システムが稼働中

闇鍋ファイルサーバーをkintoneで解消! 弁当アプリから始めて年6000時間の時短でどうだ

データセンターに入館する手続きだけで1~2日かかっていた

 さらに、社内からの反発もあった。「何これ? 営業のアプリしかないやん」「こんなもんに金使うんじゃないよ」「ミスが怖いからちょっと使うのはやめときますわ」といった声が社内で溢れ返ったという。

「私は、ITの会社なのにIT使いこなせてないやん、と挫折しました。上司に全然浸透しません、全然壁壊せません、どうしたらいいんですかと相談したところ、1つの提案をしてくれました」(山田氏)

 それが、お弁当注文アプリだった。ランチの際、会社の周辺の飲食店に出前の注文を取るシステムがあるのだが、これも平成35年システムの仲間のようなソフトが使われていた。古いブラウザでしか動作せず、動きも遅いといった課題があったのだ。

 そこで、kintoneでメニューアプリを作成し、アプリアクションボタンで注文アプリにジャンプするようにした。すると、合計金額を表示したいとか、マニュアルがないのか、などいろいろとフィードバックが寄せられるようになった。さらには利用者が弁当の写真をアップロードしたり、食べた感想などを描いてくれるようになり、皆がゆるくつながることができる場所になったという。

皆が使う弁当アプリをkintone化して浸透にチャレンジした

kintoneの本格運用で経費を年300万円削減 時短にも成功

 お弁当アプリをきっかけに、社内でkintoneにチャレンジするユーザーが増加していった。山田氏はとても喜んだものの、同時に社内からkintoneに関する質問の電話も増えた。電話が殺到し、山田氏あての電話つながりにくい時期もあったそう。

「夜、電話の対応が終わって考えました。皆さんどうしてそんなに問い合わせをしてくるんだろう。そうか、みんなモヤモヤを解決したいだけなんだ、モヤモヤを誰かにぶつけていきたいだけなんだ、と」(山田氏)

 そこで、モヤモヤを共有する場で受け止める施策を打った。まず、kintoneアプリストアのサンプルアプリ「質問受付」アプリをほぼそのまま利用し、質問を受け付けた。また、交流ワークショップも開催し、日々のモヤモヤをぶつけてもらう場所を作っていった。

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アプリやワークショップなど、kintoneのモヤモヤをぶつける場所を作った

 すると「うちの会社、アナログ運用多くない?」とか「紙運用ちょっとしんどくない?」といった声が大きくなってきた。山田氏は、みんなも考えてることは一緒なんだな、と感じたという。

 そんな中、課題の一つだった「入館申請」アプリが作成された。なんと、山田氏ではなく、ワークショップに参加した若手が作ってくれたそう。シンプルなアプリではあるが、1~2日かかっていた運用が、5分で完了するようになった。

 さらに、来客用の入館申請も改善することになった。従来はFAXで受け取っていた申請もkintone化したのだ。kintoneライセンスを付与するわけにはいかないので、トヨクモのフォームブリッジを使って、申請してもらうようにした。

「味を占めた私は、社内の申請書を全部kintoneに集約しようと、大きなプロジェクトを打ち出しました。総務課さんや人事課さん、経理課さんなど、さまざまなメンバーを集めて、社内に散らばっている申請の紙や元々使っていたワークフローのシステムをバシバシと切っていって、最終的に古いワークフロシステム廃止をして300万円の経費削減達成しました」(山田氏)

 手間のかかる申請・承認業務をkintone化したことで、年間6000時間も削減することに成功。さらには、社内のマインドも変化した。「とにかくkintoneでチャレンジしてみたい、という前向きな声が私の元に届くようになりました」と山田氏。もう「お金の無駄だ」などという声は聞こえなくなったという。

闇鍋ファイルサーバーをkintoneで解消! 弁当アプリから始めて年6000時間の時短でどうだ

年300万円の経費削減と年6000時間もの業務改善を実現

 山田氏がkintoneアソシエイト資格を取得すると、「じゃあ私も取ってみようかな」とか「僕はJavaScriptを学んでみようかな」と勉強する人が出たり、新しいものを作ってみようかな、という声が出てくるようになった。

「今後の目標は、全社員業務改善人財化計画です。ここ2~3年で、新入社員に使ってもらい、逆にマネジメント層にはkintoneをどう使うか、という視点を身に付けてってもらおうと思っています。新入社員研修は、今年から人事科さんの全面協力のもと実施しています。最終的には全社的なコンテストを行なって、とにかく楽しく緩くつながりながら壁を壊していくチームに作っていきたいと思っています」と山田氏は締めた。

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