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日本のITを変えるクラウド世代のベンチャーたち ― 第5回

“全自動”を売りにレガシー業務ソフトの市場に切り込む

仕訳が楽しくなるクラウド型会計ソフト「Freee」って知ってる?

2013年07月01日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「Freee(フリー)」は“全自動”を謳うクラウド型の会計ソフト。今年の3月リリース後、SNSで火がつき、高い人気を得ているという。開発元であるCFOの代表取締役の佐々木大輔氏に話を聞いた。

ユーザーは登録された情報を承認するだけ

 会計ソフトといえば、業務ソフトの王道。パッケージソフトも含め、歴史のある製品が数多くひしめいている。こうした中、“クラウド型”“全自動”を売りに市場に切り込んだのがFreeeである。サービスは3月にリリースされたばかりだが、すでに5000件以上の事務所が登録。「便利すぎて感動している」「仕分け作業がなぜか楽しい」「青色申告ソフトの決定版だ」などの感動のツイートが続々と上がっているという。

クラウド型会計ソフト「Freee」

 “全自動”を謳う通り、Freeeの最大の特徴は、とにかく簡単なことだ。会計ソフトでもっとも高い障壁は、日々の請求や支払い、入出金の管理などを手作業で行なうこと。これに対してFreeeではクレジットカードや銀行などを登録すれば、自動的に金融機関のサイトから取り込んだデータを変換し、会計帳簿を作成してくれる。ユーザーは登録された情報を基本承認するだけだ。

銀行のサイトからデータを取り込んで変換

 開発元であるCFO 代表取締役の佐々木大輔氏は、「レシートなどはプリントアウトなので、結局データはどこかにあるはず。ですから、これを持っているWebサイトから明細を持ってきて、定期的に貯めていきます。ユーザーはほぼクリックだけで、記帳のプロセスを登録できます」(佐々木氏)。アカウントアグリゲーションと会計ソフトを組み合わせることで、一番の障壁であるデータ入力や仕訳作業を省力化。経理の処理速度は50倍高速(CFO調べ)になるという。

CFO 代表取締役 佐々木大輔氏

 また、経理や簿記の知識がなくても、簡単に使えるのもうれしい。「たとえば“貸方”“借方”のような会計用語は使っていません。ユーザーの画面では“収入”“支出”になっており、使いやすくなっています。一方、バックエンドではきちんとした複式簿記になっているので、青色申告や会社法に対応した決算書まで簡単に作れます」(佐々木氏)という。入出金の予定を入れておけば、売掛や買掛の管理が可能。面倒な消費税計算も簡単に行なえる。

難しい会計や簿記の用語を知らなくても使える

 現在のプランは、3ヶ月間データを保持できる3ユーザーまでの無料版のほか、980円/月で青色申告対応の個人事業者プラン、1980円/月で会社法準拠の決算書を作れる法人プランなどが用意されているが、2013年7月末日までは無料となっている。

わずか1%のクラウド型会計ソフトの市場を変える

 佐々木氏が、こうしたクラウド型の会計サービスを立ち上げたのは、Googleで中小企業のAdWordsのマーケティングを担当していたり、レコメンデーションエンジンの会社でCFOを務めていた過去の職歴が大きい。「優秀な人たちが面倒な会計に時間をとられていて、才能の無駄使いだと思いました。こうした手間を省力化させ、ビジネスに注力してもらったり、起業を支援したいと考えました」というのが、Freee誕生の背景。ビジネスプランを持ってシリコンバレーからも資金を調達し、AWS上にシステムを構築し、生まれたのがFreeeだ。

 冒頭にも説明した通り、会計ソフトはクラウド化が進んでいるが、決して売れているわけではない。中小企業庁の調べによると、クラウド型会計ソフトの利用率は米国に比べてはるかに低い1%にとどまる。「すぐにみんなクラウドになるかと思ったら、全然来なかった(笑)」(佐々木氏)。こうした背景について佐々木氏は、「既存のベンダーは、パッケージと同じものをクラウドで提供しようとしています。しかし、会計ソフトをクラウド化したい潜在顧客はこうした製品に満足できていません」と語る。その点、クラウドネイティブなFreeeの場合、データをクラウド上に集め、他社のクラウドやモバイルアプリと容易に連携できる。

いかにもベンチャーらしい雰囲気のCFOのオフィス

 また、会計ソフトと切っても切り離せない税理士や会計事務所との関係についても「確かに税理士の敵か?味方かはよく聞かれます。でも、記帳代行のようなサービスはたいして儲かっていないので、先を見越した税理士さんはより付加価値の高いサービスへの移行を考えています」と語る。つまり、データ入力や仕訳などの単純作業はFreeeに任せて、コンサルティングなどのサービスでより能力を発揮すべきという意見だ。

 レガシー市場にクラウドで切り込んだ新世代ベンチャーの活躍が期待される。まずはサービスの有料化が始まる今年の8月が最初の正念場だ。

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