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日本のITを変えるクラウド世代のベンチャーたち 第2回

無線LAN搭載のLED照明をPCやスマホからコントロール

クラウドでLED調光!NetLEDを開発したベンチャーの深謀

2012年02月07日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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LED照明をクラウド経由で調光・モニターできるというなんとも先進的なシステムが「NetLED(ネットエルイーディー)」である。オフィス省エネの切り札ともいえるNetLED開発の背景やビジネスモデルについて、開発元であるNetLEDの代表取締役 徳永隆也氏に話を聞いた。

無線LAN経由で調光することで大きな省エネを実現

 NetLEDで無線LANを搭載した同社のLED照明のオン・オフや調光をインターネット経由で行なうもの。制御用のシステムはすべてクラウド上に構築されており、コントロールはWebブラウザやスマートフォンのアプリを使って、どこからでも操作や管理が行なえる。

NetLED 代表取締役 徳永隆也氏

 このユニークなICT調光システムを作ったのは、大阪の電機メーカー八洲電業と東京目黒のソフトウェア会社であるプロハウスだ。もとより八洲電業はLED照明の開発を手がけていたが、「省エネに大きな効果を発揮するLEDの時代が来るのは間違いない。でも、価格面では大手や中国の会社に太刀打ちできないのはわかっていた」(徳永氏)ということでLED照明自体に付加価値が必要になったという。そのため、徳永氏が所属するプロハウスと八洲電業が、約3年前にLED照明管にワイヤレスインターフェイスを搭載し、ネットワーク経由で制御する構想を事業化。2010年には両社によりNetLED株式会社が設立され、2012年1月にようやくNetLEDシステムの発表に至ったという経緯になる。当初は近距離無線通信規格であるZigeeを用いて開発していたが、「規格がバージョンアップするたびに互換性がなくなってしまう」(徳永氏)とのことで、技術的に枯れて、コストも安い無線LANにスイッチしたとのことだ。

無線LANはUSBドングルを採用し、新規格でも取り替えられるように

 こうして開発されたNetLED照明管には、USBベースの無線LANインターフェイスとLinuxベースの制御エンジンが搭載されており、1本単位で個別にオン・オフしたり調光することが可能だ。無線LANを用いるため、部屋などに別途配線する必要がなく、電気設備の施工以降も、後付けできるというメリットがある。また、人感や照度、温・湿度などのセンサーを取り付けることで、モニタリングも可能。親機と子機が用意されており、現在はオフィス向け蛍光灯のリプレイスを前提とした40W型の照明管が用意されている。

クラウド上に制御システムを構築する理由

 だが、NetLEDの最大の特徴はこうした無線LAN対応のLED照明管ではなく、これらを制御するNetLEDシステムにある。NetLEDシステムを使うことで、単なる遠隔からのオン・オフだけではなく、時間帯にあわせて自動的に点けたり、複数のLED照明管をグループ化して、明るさを調整することが可能になるのだ。「既存の照明は特定のエリアごとでのオン・オフしかできないし、信号線を使うと、照明のグループが固定化されてしまう」(徳永氏)という弱点があるが、NetLEDはLED照明をグループ化し、スケジュールや調光のポリシーを割り当てて運用できる。これにより、「必要な明るさを、必要な場所に、必要なだけ」供給でき、単なるLED照明に比べても、最大50%の消費電力の削減を図ることが可能になるという。

iPhoneアプリからオン・オフや調光が行なえる。ポリシーはWebブラウザから設定可能

 このNetLEDの制御システム自体はインターネット上のクラウドにあり、これをWebブラウザやスマートフォンから操作するという仕組みになっている。ユーザーや管理者のコマンド自体はクラウドから屋内に設置されたゲートウェイを介して、LAN経由でLED照明に届けられる。つまり、目の前にLED照明があっても、iPhoneから直接指示を下すわけではなく、制御コマンド自体が必ずクラウドの制御システムを経由して戻ってくることになる。

NetLED制御システムのネットワーク構成

 どうして回りくどいシステム構成になっているのだろうか? これには、制御システムをユーザーごとに構築しないで済むというメリットがある。このNetLEDの課金は、LED照明管に制御システムや管理コンソールの利用料が含まれるという形での提供(一部機能はオプション)になるため、別途制御板やサーバーを設置せずに調光システムが利用できる。「もともとは月額課金を考えていたけど、照明にそれはないだろうという声が多かった。そこで、NetLED照明を購入すれば、制御システムを使えるという形にした。スマートフォン版も当分は無償提供する」(徳永氏)。

 もう1つは、他のシステムと連携しやすいという点だ。「他の人からは、iPhoneから直接リモート操作できればいいだろうと言われた。でも、私は制御システムのデータベースと連携して、APIから利用できる仕組みにこだわった」(徳永氏)とのこと。たとえば、グループウェアの会議システムと連動して、会議室のLED照明をオンオフするといったソリューションを実現できる。これを実現しようと思ったら、やはりクラウドの方が有利だ。照明をPCのように扱う、実にシステム屋らしい発想といえよう。

 一方で心配になるのが、クラウド経由の制御は応答速度の面で使い物になるのかという点だ。徳永氏は「応答速度を上げるのが、一番苦労した。1年前のデモでは、散々な結果だった」とのことだが、システム構成において発想の転換を行なったことで、応答速度は劇的に向上。実際、製品版を試してみるとレスポンスがよくて驚く。まるで直接LED照明を操作しているように、明るさを変えたり、オンオフができるのだ。

デモを見ると、とてもクラウド経由とは思えないくらいレスポンスがよい

 想定するユーザーとしては、調光や省エネの意識の高いホテルやレストランなどの業種が挙げられるが、東日本大震災以降、省エネに気を遣わない会社は少ないため、すべてのオフィスがターゲットになるという。ビジネスとしては、NetLED照明管やNetLEDシステムの販売はもちろん、照明に搭載されているNetLEDエンジンもOEM提供する。その他、前述したような業務パッケージとの連携を進めるほか、監視カメラなどを搭載する計画もあるとのこと。海外からの引き合いも多く、グローバル展開も視野に入れていく。今後、ますます期待したいところだ。

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