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日本のITを変えるクラウド世代のベンチャーたち 第4回

「岩手から世界へ!」を目指すベンチャーの挑戦

スマホもPCも!フルクラウドの端末管理「WinView」の実力

2012年08月31日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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岩手県花巻市を本拠とするアップランは、クラウド型の端末管理ソリューション「WinView」を本格展開している。資産管理やMDM(モバイルデバイス管理)などの機能を持つWinViewの差別化ポイントや会社概要を代表取締役社長 阿部博氏に聞いた。

「岩手を元気に!」を掲げるアップラン

 アップランは、商社系SIerから独立した阿部博氏が2005年に設立したIT企業。阿部氏の故郷である岩手県の産業振興を目指し、花巻市と都内に事業所を構える。阿部氏が、前職で扱っていたネットワーク系製品の導入ノウハウを活かし、花巻市合併時のネットワーク構築やWebサイトを手がけたほか、ホームページや広告の制作、販売やマーケティング支援、IT系の研修事業まで幅広く手がけている。阿部氏は、「岩手県でのITビジネスになると、ホームページの作成などがメインで、自治体や大学以外は規模が小さいんです。そのため、岩手県の企業を支援するというより、岩手産のモノを売ろうというコンセプトで地元に貢献しようとしています」とのことで、岩手以外の商圏でのビジネスにもチャレンジしている。

アップラン 代表取締役社長 阿部博氏

 こうしたさまざまなビジネスを手がける中、昨今から本腰を入れているのが、端末管理ソリューションである「WinView」である。もともとWinViewは東北の大学で生まれた機能をベースに、ソースレベルから再出発させ、さらにカスタマイズを施して機能強化したもの。その意味では、地元のモノを外に売りだそうというアップランの戦略にのっとったものといえる。

 さて、一口に端末管理といっても、機能は多彩。資産管理やアクセス制御、最近ではMDMまで包含されるようになりつつある。また、国内ではエムオーテックスやスカイなど数多くのベンダーが市場に参入しており、その数は40社とも50社とも言われている。これに対して、後発となるWinViewは「資産管理から発生した新しい形のデバイス管理&制御ツール」(阿部氏)として開発され、インベントリ収集や不正PC・USBデバイスの検出、アプリケーション管理、印刷やファイル操作、メール送信などのログ収集などの機能を9つのモジュールで提供する。先頃行なわれた「KVH東北応援アプリケーション開発コンテスト」でも、先進性と市場性を評価され、見事シルバー賞に輝いた。

クラウド化やPC&スマートデバイス管理を対応

 最大の特徴は、すべての機能がクラウド型で提供されるという点だ。「他社のクラウド版資産管理は機能をかなり絞っていますが、WinViewでは、すべての機能をクラウド経由で提供できます」(阿部氏)。こうした製品形態のため、導入モデルとしてサービスプロバイダーがWin Viewを導入し、それをエンドユーザーにサービスとして提供するという形態が想定されている。また、1サーバーで1000台が限界の既存の資産管理ツールに比べ、LinuxベースのWin Viewでは1サーバーで1万台規模までカバーでき、サービスプロバイダーの負担も小さくて済むという。

WinViewのソフトウェアライセンス管理の画面

 PCとスマートデバイスを1つの画面で管理できるのもユニーク。Windows 8登場以降、こうしたスマートデバイスとの統合管理はニーズが高まってくるだろう。阿部氏は、「たとえば、MDMでは当たり前のように用意されているリモートワイプの機能は、PCでは使えないことも多いです。WinViewでは標準でサポートしています」と語る。

 さらにクラウドでの利用で懸念されるセキュリティに関しては、LR-AKE(Leakage Resilient-Authentication and Key Exchange)という認証技術を用い、端末とユーザーの特定を安全に行なえる。LR-AKEは産業技術総合研究所(産総研)が開発した国産の認証技術で、クライアントとサーバーで認証情報(トークン)を分散管理させることで、簡単なパスワードで盗聴やフィッシングに強い安全な認証を実現できるもの。「ユーザーは簡単なパスワードを使えますし、パスワードやクライアント、サーバーのトークンのいずれかが盗まれても問題ありません。デバイス、ソフトウェアを組み合わせた強固な『2+1認証』を実現できます」(阿部氏)という。WinViewでは、LR-AKEをエージェントに組み込み、許された利用者が許された端末からのみシステム利用を許可できるようにしている。

安全性の高いLR-AKEのコンセプト

 阿部氏は、WinViewの勝算について「後発ですし、知名度の面でも厳しいのですが、今年はWindows 8も登場しますし、スマートデバイスの業務利用の機運も高まっています。クラウドを用いた端末管理製品はまた少ないので、十分勝負できると思います」と語る。今秋にはiOSへの対応や多言語対応のほか、スマートデバイス向けの機能も強化する予定だ。

 最近では国内だけではなく、アジア圏からの問い合わせもあるとのこと。クラウドというグローバルな基盤をベースに、岩手産のWinViewがどのように勝負していくのか、注目したいところだ。

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