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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第1回

「責任の取れる範囲で出ていきたい」メレ子さんの距離の取り方

2012年08月17日 12時00分更新

文● 古田雄介

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虫は「気持ち悪いを越えて観察したところに魅力がある」

―― 旅行記のユニークさとともに、虫への愛情もメレ腐のカラーに欠かせないと思います。子供の頃から虫好きだったんですか?

メレ山 住宅街だけど近くに川もあるみたいなところで育ったので、小さい頃はそれなりに虫が好きでしたね。ただ、学校に上がって虫と触れあう機会が減って、思春期の頃には遠ざかりました。ある日、「気持ち悪いじゃん」って気づいてしまったんですよ。人間からすごくかけ離れた姿をしていますし。今でも、気持ち悪いは気持ち悪い。でも、気持ち悪いを越えて観察したところに魅力があるのかなと思っています。

「新宿から30分!緑豊かな丘陵とアートと古民家が一堂に会する『生田緑地』に行ってきた」(2012年5月1日掲載)より、クロウリハムシ。シャクトリムシ、カメムシなど、記事全編にわたって虫たちを愛ある文章で紹介していく


―― 確かに、「気持ち悪い」というレッテルに捕らわれて自分で判断しなくなると先に行けなくなるけど、記号ではない個別の個体を観察するように意識すれば、新しい発見ができる気がしますね。

メレ山 そこまで立派なことを考えているわけじゃないです(笑)。けど、そうですね。たとえば、アゲハチョウの幼虫は身体に目みたいな模様がついているんです。それが顔のようで可愛く見えるんですけど、本当の顔はもっと先端のところにあって、よく見たらやっぱり気持ち悪いんです。だけど、その気持ち悪い顔の生物が、葉っぱを食べている様子を眺めていると、ふとかわいく思えたりするわけです。私は、それが本当の意味での「アゲハの幼虫は可愛い」の入り口に立ったことなのかなと思います。

顔見ナイトを告知してもらった記事にも(なぜか)虫と戯れる写真が使われている。メレ子氏自身、アゲハチョウの幼虫を飼っていた体験もある。「かわいさを擬態しているという意味で、パンダと似ていますよね」(メレ子氏)


―― 「気持ち悪い」を乗り越えたきっかけみたいなものはありますか?

メレ山 きっかけと呼べるほどの決定的な何かはなかったと思います。あえて言えば、ブログを通して「人気者になりたい」という思いが原動力だったのかもしれません。人によって、ダムだったり、仏像だったりするマニア的な趣味の対象が、私の場合はたまたま虫だった、ということで。どれも取っつきにくいけど、面白く紹介できる案内人がいれば、とても魅力的な世界なんですよね。

 もともとは虫好きの不思議ちゃんみたいなところは押し出していなかったんですけど、出してみると反応がいいから、つい頑張ってしまったところがあって。


―― プロフィール(「虫をわしづかみにする程度の…」)は、そういう計算的なところも表に出していて、あざとく見る人も取り込むような絶妙なバランス感覚ですよね。

メレ山 ありがとうございます。そういう流れの中で、私自身も虫の新たな魅力を教えてもらったというところがありますし、過程は全部出しちゃった方がいいのかなと思いまして。そういう意味で、皆さんに方向性を決めてもらったところがすごくあるんですよね。

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