スピーカーの音質は褒められないが、
マイクは音声会議に適したものを採用
ワイドディスプレー搭載により、キーボード左右に生まれたスペースにステレオスピーカーを内蔵したのは「ThinkPad T400」からだが、T420sになっても再生音質は相変わらず褒められたものではない。Conexant Systems社のHDオーディオチップを搭載しており、「Dolby Home Theater v4」対応のサラウンド効果を有効にしたとしても、音質・音量ともに音楽鑑賞には不向きである。
一方で、マイクにはノイズ/エコー低減に優れたFortemedia社の「SAM」(スモール・アレイ・マイクロフォン)が採用されている。音声録音メモや、VoIP利用を重視しての選択のようだ。
強靱さは優れるが長期使用での耐久性は?
開発時には、過激とも思える落下テストや耐衝撃試験を行なうことで知られるThinkPad。今回のT420sでも、例えばキーボードへの水こぼしに対応した水抜き穴は健在であり、キーボード内部の耐水性もより高まっているようだ。
ただし気になる点もある。パームレスト部分の樹脂カバーが薄くてふにゃふにゃで、耐久性に不安を覚えるのだ。ここ数年のThinkPadユーザー事例などを見ていても、樹脂パーツでのクラック(ひび割れ)が数件報告されている。「骨組みは堅牢でも装甲が紙」などと揶揄されるほどである。
実際に、筆者の所有する(していた)数台のThinkPad Xシリーズでも、特に衝撃や強い力を加えたわけでもないのに、樹脂部のクラックや軋み音を経験している。キートップの樹脂や刻印の削れやすさについても同様で、T420sでも改善されていないように見える。微妙な使用感さえ「変えない」というコンセプトは支持できるのだが、不安を解消してくれる改良点はほしいところだ。
試用機構成(41716GJ)の直販価格は19万9500円。しかし本稿執筆時点では、同社直販サイトの購入時選択で同等の構成を選ぶと、直販価格は27万7410円だが、キャンペーン価格で18万5010円と表示される。また、楽天のレノボ公式ショップで割引クーポンを入手したり、優待会員(Lenovo Premium Club)向けのクーポンを利用するとさらに大幅値下げとなる。とはいえ他社の同級機に比べると、やや高めの製品ではある。
1990年代後半のThinkPadには、「大人の翼」というキャッチフレーズが付けられていた。「信頼に足る翼でビジネスを飛翔する!」という意味が込められていたのかは知らないが、よくできたコピーである。目新しさを求めた斬新な製品が次々と登場する現代において、路線を大きく変えることなく進化してきたのがThinkPadだ。特にビジネスターゲットのTシリーズでは、その設計思想は揺るがない。ThinkPad T420sは良い意味でも悪い意味でもThinkPadらしさが最も現われており、好き嫌いがはっきり分かれそうな製品である。
ThinkPad T420s(4171-6GJ) の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i5-2520M(2.5GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 14.0型 1600×900ドット |
ストレージ | HDD 320GB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
無線通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 3.0 |
インターフェース | USB 3.0×1、USB 2.0×1、Powered USB 2.0×1、DisplayPort出力、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど |
サイズ | 幅343.0×奥行き230.1×高さ21.2~26.0mm |
質量 | 約1.8kg |
バッテリー駆動時間 | 約4.9時間 |
OS | Windows 7 Professional 32bit版 |
価格 | 19万9500円(直販価格) |
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
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